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吉光里利の化け物殺し 第一話  作者: 由条仁史
第6章 男二人、女も二人
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 化け物を引き寄せる。

 というのも厳密には断定できないという。

 まず化け物はあの路地に現れているだけだ。それが私に関係しているのかはこの時点では断定は不可能だ。私に関係していると考えるのは早計だろう。場所と人は原理的にはまったく関係がない。

 しかし異常なのだという。

 何がか。

 ここまで化け物が他人に迷惑をかけるのは、異常だと。

 ……そう聞いた時には化け物には人に迷惑をかけてはいけないという道徳的な心があるのかと思わずにはいられなかった。あの化け物が? そんなこと考えているようには思えない。

 しかし彼に言わせればその表現が一番しっくりくるらしい。


 本来……というか今まで、化け物はあまり話題にならなかった。それは、同じ人に何度も姿を現すことはないから。ある種、飽き性だからとルートは言っていた。化け物を見ても、一回しか出ていないのなら見間違いか何かで完結してしまう。見た人はそういう風に現実を解釈しなおす。何も変わることはないのだ。


 しかし同じ人に何度も見られてしまったら、話題性のある物事になってしまう。誰かに発見されやすくなってしまう。だが、実際はそんなことはない。化け物のことが話題になることなんてない。そんな危険なものがあると知られてしまったらどれだけ大きなニュースになるだろうか。どれだけダメージを与えても死ぬことのない、たとえ死ぬことがあったとして、また生き残ってしまう化け物に。


 化け物は本来人の少ないところに現れるらしい。それも、毎回違う人のところに。

 ジャックとか、ルートとか――ルートも化け物を追っているらしい――など、自発的に化け物を追っている人は例外だそうだが。彼らは現れたところにいち早く駆けつけて、倒すことを常としているらしい。そのためにあらゆるところに見張りを立てているらしい。ジャックもそのうちの一人……能力を持った、戦闘可能な見張りらしい。

 しかしあらゆるところに見張りを立てるなんてどうするのだろう。


 だからこそのルートなのである。

 ルートはもともとヤクザの経営していたところの、御曹司と言うところらしい。このへんはあまり聞かないほうがいいと思ったので、意識して聞かないようにした。なかなかにできることじゃないが、聞きたくない話の時は案外こういうことができるようだ。とりあえずルートに関してはすごい人だということしか覚えていない。


 彼はその頭脳を用いて様々な資金源からお金と人間を集めて、化け物に関する組織を作り上げているらしい。もちろん信頼を置かなければならないため、直近のほんの数人しかいないらしいが、ほんの数人と言っても数十人単位だ。私とジャックといったたった二人とは全く比較にならない。

 ルートの経営しているその対化け物組織――『生活維持組』によって、化け物はこれまで発生しても倒されてきたらしい。ジャックもその組織に身を置いているらしい。彼は特殊能力をもち戦うことができるので、そこで生活できる代わりに化け物退治に協力するという話だ。


 そこでは化け物への対策として様々なことが講じられてきたらしい。ルートの手裏剣はそこで作られたらしい。狙ったところに投げやすいらしい。また、彼の能力、拡張生命(ライフエクスミー)にも対応した、柔軟なギミックを持った飛び道具が開発されているらしい。

 ちなみにジャックの日本刀はその組織で作られたものではなく、彼の実家にあったものらしいが。手入れなどはさせてもらっているらしいが。さすがに手入れ不要の日本刀なんてない。……となるとなぜ日本刀を使っているのかがまだ理解できない。まだいい武器があるだろうに。心の問題だろうか? よくわからない。


 話を戻そう。

 そしてその組織は私を見つけたのだ。

 化け物が、私に関しては多大な迷惑をかけているということに、組織は気づいたのだ。そして組織は、仮説を立てた。

 それが、私が、私こそが化け物を引き寄せているという説だ。


 私にとって、とても心外な仮説だった。

 何が心外なのかは自分でもわからないのだけれど。

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