第十二話 世はロリコンと面食いと筋肉で回っている
「で、こーめー、あたしたちは何をすればいいんだ」
俺は天幕の前にりゅうび軍の全員を集めた
「今から、俺たちが明日生き残るための作戦を説明する」
俺がりゅうび達に頼んだ作戦概要はこうだ
義勇兵を一人でも多くりゅうび軍に取り込む
このまま明日の開戦を指揮官なしに敵に突っ込んだら、数で圧倒する鶏巾族に勝つのは不可能である
目標は3分の1である1000人
これだけの数がいれば、いきなり敵の押しつぶされることもない
「しかしどうすればいいのだ? 」
「それは、この指示書に書いてあるから、各自全力を尽くしてくれ」
俺は、各自に先ほどまとめた指示書を手渡す
全員が指示書を開き内容に目を通す
「これをやるのか? 」
内容を見たりゅうびが不満そうに聞き返してくる
他の者達も口には出さないが不満そうである
「ああ、多ければ多いほどいい、とにかく明日の開戦まで時間がない、皆さん頼みましたよ」
全員、気の乗らない感じではあったが動き出した
@りゅうびの場合
しかし、こーめーもふざけた作戦を言う
あたしはもう一度こーめーが書いた作戦指示書を見る
-りゅーびの美貌で、義勇兵のみんなをメロメロにしてくれ-
あたしの美貌でってどうすればいいんだ
まぁ、しかし、あたしがそれだけ魅力的だってことか
こーめーもわかっているではないか
うん、仕方なしだな
本当に仕方ないが、あたしの魅力で何とかしてやろう
ふふっ
おっ、ここが義勇兵達の天幕があるところだな
ちょうど中央に、いい感じの舞台があるではないか
指示を出すために設置されたであろう、中央の舞台にあたしは駆け寄る
自慢のピンクの髪をツインテールにしっかりと結び直し、気合をいれ、舞台の上に上がる
すぅっと、大きく息を吸い込み、あたしはお腹の底から声を出す
「皆の者、あたしの話を聞けー!!!」
そうやって叫ぶと、周囲にいた者がわらわら集まってくる
多くのものがこちらに興味を持ち集まってくる
「あたしは、この大陸の皇帝の末裔、りゅうび様だ。いまからあんたたちは、あたしの仲間だ。さぁ、一緒に鶏巾族を打倒しに行こう!!!」
突然のあたしの声に、周囲はしんと静まり返る
僅かな静寂のあと
「「「うをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
「「「りゅうび様!!!!」」」
「「「一生付いていきます!!!!」」」
「「「いっそ奴隷にしてください!!!!」」」
男たちの大合唱が起こった
中には涙を流す者もいる
あたしにかかれば、こんなもんだ
みんなあたしの魅力にメロメロだな
後に、このりゅうびの演説に参加した義勇兵A(劉好団会員ナンバー1201番)は当時のことをこう述べている
「もはや、戦うことしかない俺たちの前に、あの日天使が舞い降りたんだ」
「俺は、一撃でハートを打ち抜かれちまった」
「それからは天使様を神と崇める夢の日々さ」
@かんうの場合
くそっ、少しかわいそうだと思って、あの小僧を励ましたのは失敗だったか
私は、こーめーから渡された指示書に目を通す
-義勇兵にいる女性を篭絡してこい-
私には、りゅうび様という主がいるのだ、他の、しかもあんな年増連中の相手など反吐が出る
15を超えた女になど興味がない
いや、りゅうび様特別だ、いつまでも私の中ではりゅうび様は天使だ
指示書を見ながらそう文句を言ってると、下の方にも字が書いてあった
-追伸 そこら辺の女性を満足させられずして、りゅうびに満足されるとでも?-
ふっ、こーめーよ、劉好団隊長の私の実力を見せてやろう
しかし、よく見回してみると、女も結構いるようだな
多くは裏方や支援なんだろうが、戦士として戦うものもいるようだな
さて、私の力を見せてやろう
かんうは、性格はアレだが、それさえなければ、顔もよく、たくましく、それでいて聞き上手である
しかも、この性格のおかげで下心が全くない
結果として、多くの義勇兵の女性と、その様子を見たモテない男連中に大人気だった
@ちょうひの場合
なんでわたしだけ、小道具を渡されたんでしょうか
義勇兵の集まる天幕の近くに、こーめーくんから渡された、小さなテーブルと、それを挟むように椅子を置く
テーブルは、重りでしっかりと固定し、近くにノボリを立てる
『挑戦者募集! 私に勝てば、私を好きにしていいです。負けたら仲間になりなさい』
そこまで、準備して、わたしは改めて、こーめーくんの指示書を見る
-ちょうひさんの筋肉の見せ場です。チャンピオンになってきてください-
まったく、こーめーくんはしょうがない人ですね
ですが、日頃のトレーニングの成果をみせるいい機会ですね
さぁ、100人でも、200人でもかかってきなさい
ちょうひがノボリを立ててからというもの、すぐに男たちが集まり始めた
ちょうひは、見た目は戦場では中々お目にかかれないほどの、おっとり系の美少女だ
しかも、付くべきとこにしっかりと肉がついていて、手や足や腰はほっそりとしている
これを見て、戦場で女に飢えている男どもが放っておくわけがなかった
しかし、彼らは凄まじい悲鳴とともに、地に沈んでいくだけだった
「これで、わたしの392連勝ですねー。さ、次の人、どうぞー」
これが後の世に語られる、腕相撲徴兵であった
翌日、りゅうびの前には3000人の義勇兵が整列していた
まさか、全員を仲間に引き入れることができるなんて
しかも、ちょうどよくりゅうびを崇めるグループ、かんうさんに恋情と尊敬を送るグループ、ちょうひさんに服従する右手にやたら包帯を巻いているグループの三つに分かれた
りゅうび隊1500、かんう隊850、ちょうひ隊650で新生りゅうび軍が誕生した
俺は、旧りゅうび軍の30人のうち半分を護衛として、軍師兼りゅうび隊の副隊長として参戦する
運命の一戦が始まる




