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なんちゃって三国志(旧)  作者: 北神悠
1章 伝説の始まり
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第十三話 動かないりゅうび軍

 鶏巾族10万が陣取る平原に、俺たちは相対するかたちで布陣した


 こうそんさん軍5000が中央に陣取り、左翼やや後方に俺たちりゅうび軍3000、りゅうえん軍2000はさらに後方の右翼に位置する形となった


 このりゅうえん軍は、りゅうえんが先鋒の功績だけを手に入れるために送った、いわば死に部隊で、罪人や奴隷、貧民などが主な内容だ

 はっきり言って、戦力としては皆無だろう


 逆にこうそんさん軍は、俺たちの力などあてにしていないらしく、5000でやるつもりらしい


 昨日、こうそんさんに直接俺とりゅうびが会いに行ったが、後ろで見ているだけでいいと力ない笑顔でやんわりと断られた


「にしても、あれはペガサスか?」


 こうそんさん軍のペガサスに見入ってると、りゅうびが横から声をかけてきた


「ああそうだぞ、なんだこーめー、お前の口ぶりだと知ってると思ったんだが」


「いや、こうそんさんが白馬を率いていることまでは知っていたんだが……」


 まさかペガサスとは

 そのうち、龍とかも出てきそうだな


「で、こーめーあたしたちはどうやって戦うんだ? 」


「ああ、もちろん作戦は考えてある」


 まず、当初の目的である義勇兵をまとめることに関しては、俺の想像以上の成果が出た

 しかし、訓練も何もしていな部隊である

 このまま、総攻撃をすれば陣形は乱れ、夕方になるか、戦局が決まるまではあとはなし崩しに戦うだけになる


 一応、撤退の鐘は教えたが、はっきり言って、撤退の鐘を叩く時は負けた時だけだ


「最初、俺たちは何もしない」


「何もしない? それじゃあ……」


「いや、正確には俺たちは強そうにきちんと整列して、立っていればいい」


「それだけでいいのか」


「ああ、時間をかければ訓練を特にしていない俺たちでも、見てくれだけは整った部隊になることもできる」


 りゅうび達の勧誘のおかげで、全員忠誠心だけはやたら高いからな

 途中でだれたりせず、しっかりと陣形を維持してくれるだろう




 「鶏様に仇なす者たちに死を! 全軍突撃!」


 「「「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 戦いは鶏巾族の雄叫びによって始まった


 それに合わせて、こうそんさん軍が出撃する


 こうそんさん軍は、遠目で見る限り前段に歩兵、後段にペガサス兵の二段構成のようだ


 前段の歩兵で敵をいなし、ペガサス兵で後方空中から矢で攻撃をする形らしい


 統制の取れた歩兵と、通常ではありえない角度からの攻撃により、いきなり敵に飲み込まれるような事態にはならず、うまく距離を取りながら、圧倒的な数の敵を押し返していた


 しかし、左翼右翼からどんどん敵が回り込み、そのまま後ろの方へ抜けていく


 半包囲を避けるためこうそんさん軍は、じわじわと後退をはじめる


 鶏巾族軍の右翼左翼前線はついにこうそんさん軍を抜き、前に出る


 そして、そこから行動が変わった


 左翼の俺たちに相対する鶏巾族軍右翼は、俺らの方には来ないで、そのまま左に転回しこうそんさん軍の左側面を狙う


 それに対し、右翼のりゅうえん軍は、鶏巾族軍左翼に襲いかかられていた


「ん? こーめー、どうしてあたしたちの方に敵は来ないのだ」


 りゅうびが不思議そう聞いてくる


「ああ、あれはしっかりと統制が取れた軍ではないからな。人数は多いが、あれはただの集団に過ぎない」


「それだとどうなんだ」


「人間自分から死のうとは思わないだろ」


「うむ、そうだな」


「だから、楽な方を狙うのさ。今回の場合で言うなら、しっかりと陣形が組まれて、微動だにしない謎の軍よりは、側面攻撃できるこうそんさん軍、こうそんさん軍の側面を狙うよりは、全く陣形が組まれていない、見るからに弱そうなりゅうえん軍を狙ったというわけさ」


「なるほど」


「それに、この陣形は俺たちにさらに大きなメリットを2つもたらしている」


「ん、そんなメリットだ?」


「一つは、戦っていないからな、兵を損耗しない」


「うむ、そうだが、なんだか必死に戦っているこうそんさん軍に悪くはないか」


 りゅうびの疑問は最もである、こうそんさん軍はもはやほぼ三面から敵に攻められている状況である

 普通に考えれば、俺たちは敵に飲まれかけているこうそんさん軍を見殺しにしているとも言える


「まぁ、りゅうびの考えはわからなくないが、俺たちが動かないのは結果としてこうそんさん軍に対して大きな援護となっている」


「戦っていないのに、援護なのか? 」


「ああ、最初に言ったが、昨日やっとまとまったばかりの俺たちに、陣形を組んで戦うのは不可能だ。出来るのはかんうさん、ちょうひさんの武力に頼った突撃のみ。つまり、長期戦は不可能だ」


 そう、これは仕方がない事実である

 自分たちよりも多い敵に対して、突撃で短期に決着をつけるには、敵の本陣を突くしかない

 しかし、俺たちの数ではそれは難しい


「そこで、俺たちは今強そうにふるまって待機しているんだ」


「ん? それはどういうことだ」


「俺たちは、動かなければ敵は推測するしかないだろ、今この位置からだと俺たちは、相手の右翼と左翼を狙い撃ちにできる。それに、敵がこうそんさん軍の背面に回れば挟み撃ちの形だ、だから、あいつらは、こうそんさん軍を囲みきれていないんだ」


 これが、大きなメリットの二つ目だ


「しかし、このまま見ているわけにもいかないだろ」


 こうそんさん軍はまだなんとか戦線を維持しているが、どんどん追い込まれていっているのもまた事実であった


「なぁ、こーめー」


「もう少しだ、まだ早い、俺たちの狙うはこうそんさん軍が撤退する、その瞬間だ」


「くぅ」


 りゅうびが歯がゆそうに声を漏らす

 俺だって、短い付き合いではあるが、あの人柄の良いこうそんさんに死んでほしいとは思っていない


 しかし、俺たちでは、闇雲にぶつかっても最終的に全滅させられておしまいだ

 こうそんさんも助けることはできない


 今は、じっと我慢するしかない



「くそっ、やはり数が多かったか」


 こうそんさんがペガサスにまたがり、指示を飛ばしながら毒づく


 一度撤退するしかないか


 かなりの被害が出るだろうが、仕方がない


「ちょううん!」


 こうそんさんが前線で、中央をほとんど一人で支えているちょううんを呼び寄せる


 事実、もしちょううんがいなければ、前線の歩兵団は今頃壊滅していただろう


 あれほどの将が浪人をしているのはもったいない


「こうそんさん様、どうしましたか? 」


 全身返り血と、泥で汚れまくっているちょううんがやりを携えて戻ってきた


「いったん撤退し、陣形を立て直す、前線の兵たちの指揮は任せたぞ」


「はい、しかし、義勇兵は腰抜けどもばかりですね。あんなところで見ているだけとは」


「ちょううん、そんなに言ってやるんじゃない」


「しかし、やはり私は後ろの方でただ戦を眺めている軍師という連中は嫌いです。一昨日あったあの男も本当に臆病者です」


 そう言い放ち、ちょううんは再び前線へ戻っていった


 しかし、りゅうびも変わったな、あいつならたとえ一人でもただ見ていることなどしないと思っていたけど、まぁだから、僕が義勇軍を極力巻き込まないように、意地をはったんだけど


 あいつは、こんなとこで死ぬ人間じゃない


 僕と違って、戦う義務もないんだから、こんなつまらない戦で死んで欲しくない


 さて、それじゃあ、撤退するか

 生き残ったら、後ろでふんぞり返っているじじい共にいろいろ文句を言われるだろうが、こんなところで大切な部下たちの命を散らせるわけには行かない


「伝令! 一旦撤退する。撤退の鐘を鳴らせ」


 こうそんさんがそう叫ぶと、がーんがーんと大きな鐘の音がなる

 その後、こうそんさん軍は急激に後退を始める


 しかし、鶏巾族もただ黙って、後退させてくれるわけではない

 撤退するこうそんさん軍に対して、我先にと襲いかかる


 特に兵の薄い、左翼と右翼はかなり押し込まれている


 こうそんさん軍は撤退するよりも先に、壊滅寸前だった


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