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幸運なのか不運なのかイマイチ分からん俺

魔物戦でアリオは数えられないくらい死んでいる。

「ほんっっっっとうにお騒がせしてすみませんでした…」


 首が取れる勢いで頭を下げた俺に、カリスは深い溜め息を吐く。本当はジャパニーズDOGEZAをしたかったところだが、やって通じるか分からなかったからやめておいた。

あの後怒涛の勢いで動き始めたドゥール達を止めてくれたのは、いつも頼りになる俺の兄だった。俺の体を素早くチェックし、いくつかに問答をした後、カリスは父上に話をすると使用人達を下がらせた。

その後はサッと風呂に入って、服を着替えた。ちなみにその時にドゥールからも怪我の有無をチェックされ、怪我がなかったことで安心したのかメイドさん達は半泣きだった。

そして今に至る。


「アリオの言い分では森に魔物が出たということだな」

「はい。証拠に魔物も回収してきています」

「回収?それは真か?」


 見せた方が早いかとストレージからあの魔物を引っ張り出す。

何もないところから出てきた魔物に、父上だけでなくカリスやドゥールも目を丸くする。俺はというと改めてその巨体を見て、なんとも禍々しいっていうか…明らかに普通の生き物の容姿ではないなと再確認していた。本当によく生きてたな俺。いや一回死んだけど。


「アリオ、そのスキルは…」

「ストレージです!コイツを倒した後に増えてました」


 驚いた様子のカリス。そして、倒したというワードに今度はドゥールが反応する。


「失礼ですが坊ちゃん。この魔物は坊ちゃんが討伐なさったのですかな?」

「あ、うん。正直言ってギリギリだったけど、スーリアと協力して討ち取ったよ」


 そうにっこり笑って見せると、何故かドゥールは真剣な表情で父上に向き直る。

あれ?なんか俺、ヤバいことやったか?


「ラグダル様、やはり坊ちゃんはシーディアの地から遠ざけた方がよろしいかと…」

「そのようだな。一刻も早く王家の目の届かぬ場所に行かせるしかないか」


 ん?んん?

何俺島流しでもされるの?

どれだ!?ボロボロで帰宅したことか!?それともストレージか!?魔物退治か!?

はたまたこの祝福のせいなのか!?!

くっ…俺はただ早々に人生というログボもないクソゲーから退場したかっただけなのに…憧れの晩年スローライフも許されないのか…!?


「アリオー?おーい。もしかしなくても勘違いしてない?」

「兄さん俺…島流し…?」

「島流しか、そうした方が安全かもしれないな…」


 マジで!?

俺そんなにヤバいことやったの!?

分かりやすく青くなった俺に、カリスは「違う違う!」と言って宥めるように頭を撫で始める。


「あのねアリオ。冒険者にはランクがあるって言ったよね?」


 こくりと頷く。確か一番下がアイアン。初心者はみんなここから始まり、魔物を倒した数や、貢献度などによってランクがブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナと上がっていく。俺は勿論アイアンだ。


「アリオが倒したこの魔物は、シルバー級の冒険者でも倒すのが難しい魔物なんだよ」

「……兄さんそれ本当?」

「この状況で流石に嘘はつかないかな…」


 確かにしつこく俺達を追いかけ回してきたし、顎の威力は俺の肩を砕くほど。

アイツは一匹だったからなんとかなったものの、もし仮に群れを成していたらと思うとゾッとする。


「それにアリオが簡単にやってのけたストレージも、それはかなり珍しいスキルなんだ。それこそ商人から冒険者、いろんな職種の人がこぞって欲しがるくらいにはね」

「ほぁ……」


 こわぁ…

え、じゃあ何?俺は初めての戦いでそんな危険生物と戦って?しかもポンと湧き出たスキルがレアスキル?

俺って運が良いのか悪いのかとことん分からないな。

マジでスーリアが無事なの奇跡だったんじゃないかこれ。俺今世で一番の徳積んだんじゃない?


「でね、これで元から目をつけられる可能性があったのが、更に…というか確定になったわけで……」

「目をつけられる?」

「お前を王家の側近に加えたいと打診があったのだ」

「へーそうなんで………え???」


 王家?

OUKE?

王家ってあの王家ですか?

それまたなんで?俺はただの死ねない人ですが??


「今日、アリオがいない間に王子達が来てね…」


 心なしか呆れたようにそう言う兄は頭を抱える。長々と居座り、つい先程帰ったという王族は、俺のことを求めてきたのだとか。そういえば、兄にしては珍しく疲労困憊の顔をしている。

もしかして俺が帰ってくる時にすれ違った馬車って、その馬車だったりする?


「しかしあの愚息…あんなにも駄々をこねておきながら、坊ちゃんが帰らないことに対し心配どころか好き勝手に言いおって……!」

「ドゥール、気持ちは分かるけどアレ一応第一王子だから…」


 アレって言った!どんな人にも優しい兄さんがアレって言いました!

これは俺の中での第一王子への期待も下がりますね!!

思い出したのかドゥールも珍しく腹を立てているし…

ニコニコしてる所しか見たことがない俺にとったら、この二人を怒らせる程の発言をした第一王子…ある種気になる。


「だがこれでアリオが狙われていることが分かった。ならば早急に我々も手を打とうと思う」

「それで俺はどうすれば…」


 今から荷物をまとめる?

でも今のところあてがあるのはスーリアの所だけだしな…

頼ったら匿ってくれそうだけど、女の子巻き込むのも申し訳ないしなー…


「一箇所に留まるのは悪手。ならば各地に拠点を作り、転々とするしかないだろうな」


 拠点を作って転々とか…

というか父上俺にそんな手間かけちゃ駄目だよ!?ことごとく優しいなこの親は!

 慣れない親からの優しさにムズムズしつつ、転々とするというところに引っ掛かりを覚える。なんだかそれってあれだよね?冒険者の日常だよね。そんな風に考えると、さっきまであった不安感がなんとなく無くなっていく。

なんならあれも今言うしかないかもしれない。


「よし、ならば父上!俺は旅に出ます!」

「確かにアリオはもう冒険者だからね。隠れるよりも、そっちの方が自然な理由になる」


 元々旅に出ようと思っていたんだし、それが少し早まっただけの話。

スーリアにも話をしてみて、大丈夫そうなら準備をして出発すればいい。


「王家には『不出来な次男は重役を担うことを恐れ、家から逃げ出した』とでもお伝え下さい。そうすれば家にも迷惑はかからない筈です!」


 俺はずっと社交もせずに引き篭もっていたし、人と関わらねばやっていけない貴族間の考えだとそれこそ不出来だ。

それにこの理由なら叩かれはすれど、兄達には同情を向けられる可能性だってある。

俺は元一般庶民だから、そんな簡単な話じゃ済まないことは分かっている。でも可能性があるならそうした方がいい。


「……分かった。下がいなくなれば、カリスを王家にという話も無くさざるを得なくなるからな。互いの身を守る為にもその方がいいかもしれん」


 わぁお。兄さんも王家に欲しがられていたんですね。

まあ、器量もいいし頭もいい。おまけに祝福も預言者だから、そりゃ喉から手が出る程欲しいよね!納得!!


「兄さんを渡さない為なら俺は何処にでも旅に出ますよ…!」

「アリオ、それじゃ俺達常に会えなくなっちゃうよ?」

「それはそれで困る…!!」

「ウソウソ。手紙でやり取りしよう?そうすればお互いの状況を知れるしね」

「はい!あ、じゃあ俺は色々準備しておきますね!」


 父上の方を見れば静かに頷かれた為、もう退出して良いのだと解釈する。

俺はストレージに魔物を仕舞い込むと、一度礼をして部屋から出た。

時が来たら俺はこの家を出て旅に出る。きっとそれはもうすぐそこの未来だ。

なんとなく寂しさを感じながらも、俺は必要な物を揃える為に部屋へと戻った。


***

アリオが退出したのを確認すると、カリスは浮かべていた笑顔をその顔から消した。

厳密に言えばその場にいた全員が、真剣な表情で先程までアリオがいた箇所を見つめていた。


「末恐ろしい力ですな…不死者というものは」

「あぁ、だからこそ王家には渡せぬ存在だ」


 少女と共にギリギリで打ち取ったとアリオは言ったが、帰ってきた時のアリオの状態を知っている三人は、その祝福を利用したのだと予想をつけていた。

…少なくとも、一度は死んでいるだろうと。


「おまけにストレージ持ちか…我が弟ながら末恐ろしいな……」

「魔物を仕舞い込むとなると、容量もなかなかのものでしょうな」


 冒険者になると嫌でも付きまとうのはその荷物の多さだ。

武器や食料、衣服。そして討伐証明の部位や、その素材。狩る動物や魔物によっては、荷物持ちを雇ったりするのも少なくはない。

それをストレージ持ちは一人で解決出来てしまうのだ。欲しいと思わない方がおかしい。


「ドゥール、魔物が出たという森に調査隊を手配しておけ」

「かしこまりました」

「あの森は数十年近く魔物は見られなかった筈ですよね…」


 比較的他よりも平和なウォールでは、その付近で魔物の影は見られなかった。

それがどうだろう。冒険者になって始めの冒険…ましてや薬草摘みで魔物に出会うなど、今まではなかったことだ。


「あぁ、他の領地でも魔物が増えたと聞く。用心に越したことはない」

「魔物の出現か…」


 カリスの頭に一瞬、魔王の再臨という言葉が過ぎる。

それは、昼間突然訪れた第一王子がうっかり口を滑らせたもので、カリスを含め家のものは思わず息を飲んだ。


(もしそうならば、俺も出来ることをしないと…)


 きっと弟はその中に巻き込まれるだろう。カリスは予想ではなく、確信を持ってそう思っていた。徐々に強くなり始めた預言者の力は、時折真実なのか妄想なのか分からない何かを彼に与えていた。


「では進展があり次第報告致します」

「うむ。カリスもアリオのことを頼んだぞ」

「はい。任せてください」


 一礼すると、カリスは部屋から退出する。自らの部屋に戻る際に見た空は、雲に覆われて鈍い色をしていた。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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