第18話 おうちの設定
さて、一息ついたところでまずはこのプライベートエリアの設定だ。
メニューを操作し、この屋敷の設定を呼び出す。
「ふむふむ。一階と二階と地下、それに庭の入場設定を個別にできるのか」
それ以外の家の敷地外は設定できないと……。まあ当然か。でも敷地外への侵入ってあるのかね。ここに来る時点で鍵をつかわなきゃこれなかったんだが……。
まあ、そこら辺は今はいいか。設定できないものはどうにもいじれないんだし。
それよしも屋敷の設定だ。ここまで細かくできるとは思いもしなかったからなぁ。適当に全部フレンドのみの設定にしておくか……。
いや、おすすめをアルブスに聞いてもいいか?
「なあ、アルブス。これからこの屋敷の入場設定をしようと思っているんだけど、何かおすすめってある?」
「そうでございますな……。応える前に主に質問なのですが、主はソロでデュラハンを討伐いたしましたな」
「いや、俺はガンツのおっちゃんとソレイユさんが戦闘しているところに横から入った形になるよ」
「はて……、パーティで倒したのであれば固有スペースになるわけは……。もしかしてそのお二人はエインヘリヤルではないのでは?」
おれはアルブスの言葉に頷く。あの二人は過去にエインヘリヤルだったが今は違うって言ってたからな。
「であれば、その場にいたエインヘリヤルは主一人。この館は主個人の所有物になります。ですので、庭はフレンドのみ一階は招かれたもののみという設定にした方がよろしいかと」
ふむ、エインヘリヤルか否かで諸々の判定がされてるのか……。特殊なドロップ品とかは全部そうなのかなぁ。
あ、設定はアルブスのおすすめ通りにしておくか。
「後は地下と二階か。地下は倉庫だったし、入れるのは俺だけにしておくか……。誰か連れて行きたいときはその都度設定をいじればいいだろう」
「それがよろしいかと」
「二階はどうしようか……。そもそもまだ行ってないしなぁ」
「後でご案内しますよ。まあ、言ってしまえば二階は主の個人的なスペースになりますな。寝室や書庫があります」
「なるほど、それなら地下と同じように俺だけで……。いや、カネティスも入れるようにしておくか」
「ふむ……。このカネティスという方はどのようなお方で?」
「まあ、妹みたいなものだよ。改めてここに案内するからその時はよろしくね」
「かしこまりました」
アルブスは胸に手をつきその頭を垂れる。かっこいいんだけどしゃれこうべなんだよなぁ。
だがアルブスはその頭を上げると、「あとは」と付け足すように言った。
「鍵をつかって作り出した扉の設定ですな」
「扉?」
驚き問いかける俺に、アルブスは「はい」と頷く。
「主がこちらに来る際に使用した扉のことでございます。その扉を出したままにするのか消すのか。出したままにするのであればその使用者権限の設定ですな。この館の入場設定と似たようなものです」
アルブスに言われ確認すると、確かに扉の使用者権限も設定できるようになっている。
え!? ということは、今宿の俺の部屋に扉が出現したままになってるって事?
ああ、でも大丈夫だ。今は俺しか使えないようになってる。
とりあえず俺がいないときは扉が消えるようにしておくか……。
でもそれだと屋敷の三人。とくにルベールが寂しいかなぁ。いや、そうか。
「なあ、アルブス。扉とか屋敷の入場制限ってエインヘリヤル相手しかできないのか?」
「基本的にはそうですな。ただ、鍵をつかって出した扉に触れることでエインヘリヤル以外の方も入場できるようになります」
なるほど……。だったらユエちゃんやおっちゃん夫妻がここに入れるように設定してもいいな。
そしたら、扉も宿の奥に設置したままにもできるし。
ただまあ、その前に庭の見栄えをなんとかしないといけないけれども……。
あ、それにいったん扉を固定すると通常の手段じゃ扉を移動できなくなるのか。鍵の持ち主はどこからでも入れるけど、それ以外は固定された扉からだけの入場って事かな?
うーん、難しいな。
ああ、しかも一度扉を固定すると動かせなくなるのか。扉を動かすには鍵の破棄が必要っと。当然鍵を破棄したらボスの倒し直して再度鍵を入手しなくちゃならない訳か~。
これはどこに扉を設置するかも含めて、おっちゃん達やフジノキにも相談しないといけないかな。
「うん、参考になった。ありがとう」
アルブスに礼を言って、屋敷の設定をいじる。そんな俺をアルブスは満足げに見つめていた。
……これで屋敷の設定が終わったとして他には……。ああこんな設定もできるのか。
俺の目の前にあるのはテスキヨ湿原の設定だ。
どうやら設定できる内容はフィールドにも及ぶらしい。こういうのが設定できるところをみるに、あのデュラハンはフィールドボスだったのだろう。
ただなぁ。俺、あいつを倒したとは言ってもおっちゃんが散々戦った後に、フォルティスとレントゥスの力を借りて倒してるからなぁ。
他の人からしたらずるしたようなものなんだよな。トライゾンもテスキヨ湿原はまだ先のマップだって言ってたし……。
『ふむ、それを理解しているだけマシであるな』
『ま、お前一人じゃぜってー無理だったからな』
俺の心を読んだようにレントゥスとフォルティスが念話で語りかけてくる。
『うるさいよ。分かってるんだからいいだろ。これは宝くじに当たったみたいのもんだって』
『とはいえ、宝くじも買わなければ当たらない。行動したのはコダマであるから、その点は褒めてもよいとは思うがね』
『…………フンッ』
なんというか、レントゥスが褒めてくれたことが意外で、ちょっと驚いてしまう。
フォルティスは、ふてくされたように鼻を鳴らしていたけども……。
まあ、それはさておいてフィールドの設定をするか。
まず設定できるのがテスキヨ湿原でPKができるかどうかの設定だな。デフォルトでは可になっているのか。このゲームが他人と争うタイプのゲームだし当然と言えば当然か。
とりあえずこれはそのままでいいだろう。そもそもこのフィールドには俺以外今のところいないだろうし。状況が変わったときに設定を変えればいいだろう。
ただこのフィールドの設定が一週間に一回しか変えられないのだけ注意しておかないといけない。まあ、この設定をコロコロ変えられたら、フィールドにいる人間はたまったものじゃないからな。そこは仕方ない。
後はボスの設定もできるみたいだ。
これは自分の選んだ人、例えば同じコミュニティの人はボスを倒さずに次のフィールドに行けるようにする設定か。
もちろんスルーできるからと言って必ずしもそうしなければいけないわけじゃないけど……。ボス素材が欲しいこともあるしな。
これは生産職にとってはありがたい設定じゃないんだろうか。一応撃破されたボスの弱体化があるとは言え、ボス戦なしで先に行けるメリットは大きいもんなぁ。
これのおかげでコミュニティへの生産職の囲い込みなんかが激化したりしてな……。
まあ、俺には関係ないことだけど。
さて、ここの設定もとりあえずはデフォルトのまま、みんな倒して先に行く設定でいいか。
後このフィールド設定できるところはっと……。
まだいくつかあるんだが黒塗りされていて見えないか。ここら辺は開拓が進めば順次解放されていくんだろう。
とにもかくにもこのフィールド設定ができるかできないか、つまりはフィールドボスをどのコミュニティが倒して鍵を手に入れるかっていうのが、これからの争いの焦点になっていくんだろう。
だからこそ、フジノキが注意してくれたように俺が鍵を持っているのがばれないようにしないとな。
絶対なんかに巻き込まれるだろうし。
さて、プライベートエリア関連で設定できるのは、今はこのくらいか。
一息つこうと思い紅茶を手に取ったところで気づいた。新しく入れなおされている。
顔を上げるとルベールが腕を組んでこちらを見下ろしていた。
「今度は普通のお茶を入れてきたわ。しっかり味わいなさい」
ルベールはが語尾を上げるようにして言ってきた。
その言葉を受けカップに口をつけるが……、さっきとは違いしっかりとした味が舌に広がる。
「うん、香りもいいしおいしいよ」
「ふん、当然ね」
俺の言葉にルベールは満足げに微笑み、その後ごそごそと包みを取り出した。
「あ、後これ。さっき言われたブランデーケーキが入ってるから。たくさんあるからみんなでわけたらいいわ。それに何日かおけばもっとしっとりするから、半分ぐらいはそうしてもいいかもね」
そういえば、ブランデーケーキって日をおけば味がなじんでおいしくなるって話だな。
なるほど、それならお言葉通り半分は残しておいてもいいな。
まあ、戻ってからおっちゃんに相談してもいいだろう。
「わかった。ありがたくいただく。戻ったらみんなにルベールのことを自慢しながらわけてあげることにするよ」
「なっ、ばっかじゃないの。何言ってるのよ」
「そうは言いつつ、ルベールは満更でもなさそうですなぁ」
「はぁ!? アルブスも何言ってるのよ」
顔をまっ赤にしてくってかかるルベールを、アルブスが適当にいなしている。
ちょっとからかおうとしていった一言が、ルベールに予想外にヒットしたようだ。
『レディをからかうのはほどほどにしたまえよ』
そんな風にレントゥスに釘を刺されたけれども……。




