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第14話 祝勝会

年を一つ重ねた記念。二作品同時更新!

ただし20時間遅れ。


本当は短編、このお話の前々々日譚位の話を投稿しようと思ってたけど、長くなったのでまた今度投稿します。お焚き上げしないとね

 扉を開けるとそこには、洋館がたたずんでいた。

 小さな頃、神戸で見た洋館に似ているだろうか。家族で旅行をした数少ない思い出だ。

 ただ、あれほど綺麗なわけではない。全体的に暗く、悪い意味で年期がある建物だ。

 その雰囲気に拍車を掛けているのが、庭を含めた周りの様相だ。

 庭の木は完全に朽ちており、周りもおどろおどろしい沼地となっている。

 ぼこり、またぼこりと泡立つ様は、どう見ても尋常な物ではない。

 まさしく、呪いの洋館と呼ぶにふさわしい物になっていた。


「確かにボスはアンデッドだったし、フィールドも湿原だったけどさ。……これは予想できないよ」


 ここにはついてきてないみんなを思い浮かべながら、自分のプライベートエリアを眺めた。






 タラント・スコーピオンを倒したところで地下遺跡を脱出し、クエストの報告のため開拓使に戻った俺たち前に広がるのは、受付に並ぶ人の群れだった。


「あちゃー。まだラッシュの時間帯じゃないのにこの有様か~」


 キツネさんが天を仰ぎ見る。


「あんなアナウンスがあったんじゃ仕方ないんじゃないかな、姉さん」

「ま、そうりゃそうだよねー。私だって気になるもん」

「それじゃあ先にご飯にしませんか? クエストの報告自体はいつでもできるんですよね」


 みんなに提案してみる。妖精のとまり樹亭も最近混み始めたからなぁ。早めに行って席を取りたいというのもある。


「そだね、そうしよっか。こっちにこれだけ人が集まってるんだったら、食事も楽にできそうだし。カネちゃんもそれで大丈夫?」


 カネティスもこくりと頷く。


「そうだね、クエストも報告だけならバラバラに行ってもいいし。新しいクエストに関しても、掲示板調べればあらましぐらいはわかるだろうし」

「よしよし、それじゃあ調べるのは我が弟に任せるとして、ご飯食べに行こう行こう。祝勝会だー」


 キツネさんが片手を上げて先導する。俺たちは笑いながら後をついていった。フジノキの笑いは苦笑になるのだったが……。




 向かったのはもちろん妖精のとまり樹亭。扉を開けると、案の定がらんとした店内だったが、ユエちゃんが満面の笑みで出迎えてくれた。


「あ、お兄ちゃんだー。おかえりーー」

「ただいま、ユエちゃん。トラヴァーさんのところのお手伝いはもう終わったの?」

「うん、おわったよ。今日もね、いっぱい、いーーーっぱいお手伝いしてきたの」


 ユエちゃんが両手を大きく広げてアピールしてきた。

 そんなユエちゃんの頭をなでてやる


「そっかそっか。えらいな」

「んふふーー」


 満足げなユエちゃんの表情につかれが吹き飛ぶ。


「ユエ、褒めてもらうのはいいけど、お出迎えしたんだったら、ちゃんとテーブルまで案内してさし上げなさい」


 奥から女将さんの声がする。見ると、苦笑しながらこちらに頭を下げていた。


「ごめんなさーい」


 しょんぼりとするユエちゃんだったが、すぐに気を取り直す。


「んと、お姉ちゃん達もおまたせしました。こちらにどうぞー」


 案内を始めるユエちゃんにキツネさんが微笑んだ。


「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ、ユエちゃん。いっつも元気いっぱいでくるくる回ってるユエちゃんが、みんな大好きなんだから」

「姉さん、さすがにその言い方はどうかと……」


 つぶやくフジノキだったが、ユエちゃんの方はいたく気に入ったらしく、くるくる回りながらこちらを案内してくれる。


「んふー」

「…………」


 そんなユエちゃんを見るカネティスの表情も、幾分ほころんでいる。

 仕方ない事とは言えぼっち気味だったからなぁ。妹分ができたみたいな感じでかわいいんだろう。


 席に着いた俺たちに、おっちゃんが声を掛けてきた。


「飯、どんなのがいい?」

「一応祝勝会だしなー。どうせなら肉がいいよね。ねー親父さん、骨付き肉。んー、漫画肉みたいなのない?」

「漫画肉っつーのはよくわからんが、骨付き肉がいいんだな。ちょうどいいのがある。ちぃとばかし待ってろ」


 キツネさんの注文を、おっちゃんは二つ返事で引き受けた。


「えっとねー。おとーさん、今日はずーっと準備してたの。すっごくおいしそうだったよー」

「こら、ユエ。余計な事言ってねーで、お前は母さんのところに行ってろ」

「はぁい」


 ユエちゃんは、やっちゃったとばかりに小さく舌を出して、奥へと入っていった。


「ふーん。わざわざ事前に準備してくれてるんだ。コダマっち、愛されてるねー」

「ホント、ありがたい限りです」


 初日からお世話になりっぱなしで、その恩を全然返せないまま、それどころか恩が膨らみ続けている。

 デュラハンの一件で少しは返せたとも思うけど、武器をもらった事を考えると、良くてトントンだろう。

 そう思い、頬をかく俺の袖口を引っ張る者がいた。カネティスだ。

 見ると少し不満げな表情をしている。


「そう言えばカネティスの家でも歓迎してもらったな。あの料理もおいしかった。あれってカネティスも用意してくれてたんだろ。改めてありがとな」


 ぽふりと頭に手をやりお礼を言うと、カネティスはその顔を少しほころばせた。


「うーん、気になってたのはそこだけじゃない気がするんだけどなぁ」

「カネちゃんが納得してるならいいんじゃ無い? それよりも調べはついたの?」

「うん、とりあえずのあらましだけはね。二人とも大丈夫?」


 フジノキの言葉に、俺とカネティスも頷く。




「………………とまあ、新しく増えたクエストはこんな感じ。詳しくは開拓使にいってからだろうけど、僕ら向けのクエストはモンスターを倒しての素材の収集と、安全の確保になるね」

「つまりはいつもと変わらないって事か」

「そうだね。報酬が多少変わるようだけどやる事は変わらないね。どちらかというとギャザクラ、採集製作メインのイベントみたいだからね」

「アタシとしては、開拓拠点を作った後にやるって言う、バトルクラス用のイベントの方が気になるね」


 フジノキの説明に、キツネさんはにんまりとして答えた。


「ほどほどにしときなよ、姉さん」


 フジノキは肩をすくめる。

 そういやキツネさんのPVは闘技場での戦闘だったっけ? 好きなんだろうな、そういうの。


「ちなみに、みんなってPvPに関してはどっち派? アタシ? アタシはもちろん大好物!」


 キツネさんは相変わらずのいい笑顔だ。よっぽど好きなんだな。


「僕はどちらでも無いかな。ま、姉さんに付き合うとするよ」


 フジノキの言葉には若干の哀愁が漂っている。俺もカネティスも一人っ子だからわからないけど、これが俗に言う、姉には逆らえないって奴なのかな。

 とは言えフジノキの事だ、何があってもそつなくこなしていくんだろう。


「……私も、好きでも嫌いでも無いです」


 一息ついてカネティスは続ける。


「ただ、得意な方だと思います。FPS系や対戦ゲームををよくやっていましたから……」

「え!? そうなの?」


 突然の告白に驚く。

 どうにもカネティスとFPSがイコールで結びつかない。若干対人恐怖症のところがあるからなぁ、この子。


「お祖母ちゃんのところのお手伝いで、テストプレイヤーをしてましたから……」

 

 お祖母ちゃんのところというと……。リエージュのゲームか。

 あそこはVR機本体のメーカーで、ソフトウェアは主にVR街の構築を手がけているんだっけな。

 ゲームもスポーツ、格闘、FPSと手広くやっていたはずだ。ロボットを操縦しての格ゲーなんて、結構面白そうだったと思う。

 ただ、意外な事にVRMMOには手を出してなかった気がするな。


「兄さんが好きそうな、ポリエートレコードのテストプレイもしてましたよ。βでも結構いい成績だったんです」


 少し誇らしげな表情のカネティス。


「ああ、そのロボット格闘物。確かに面白そうだったな。そっか、それじゃあヴァルホルサーガが終わったらそのゲームもやってみないとな」

「はい、一緒にやりましょうね」


 格ゲーだし、それだと敵同士になるんじゃ無いか? まあいっか。それにもしかしたらタッグとか組めるかもしれないし……。


「仲良くしてるところ悪いけど、コダマはどうだったっけ」


 フジノキが苦笑しながら聞いてきた。

 そうだな、俺も聞かれてるところだった。すまん。


「本格的に格闘技とかをやった経験も無いし、わからないってところが正直なところかな。まぁPvP自体に忌避感は無いから、後はVRでやってみない事にはね」

「そっか、まぁそうだよね」

「ま、今回のイベントがいい機会になればいいかなあって思ってるよ」

「よしよし、それじゃあみんなでそろって出られると嬉しいね」

「待ってよ姉さん。まだ戦闘系用のイベントがどんなのになるかわかってないんだよ」


 確かにフジノキの言うとおりだ。とは言え予想がつかない事もないんだよなぁ。だって定番だし。


「そんなの闘技大会に決まってるじゃない」


 キツネさんが軽く言い放つ。

 やっぱそうだよなぁ。


「確かにその可能性は高いけど、闘技場なんてこの街には無いでしょ。だから悩んでるんじゃない」

「そんなの、これからのイベントで作るのよ」


 フジノキの言葉に、確かに盲点だったと頷きそうになるが、キツネさんの言ももっともだ。

 結論としてはアレだ。予定が出るまでわからないって事だな。


「後はプライベートエリアに関してだね。ま、これはイベント後に開拓地で購入できるようになるから、それ待ちだね。一応イベントの貢献度高いと割引されるって話だよ」

「そのイベントって、バトルクラス用のイベントの成績も加味されないかなぁ」

「そこら辺ははじまってみないとわかんないけど、可能性はあるんじゃないかな。一応他にもプライベートエリアを手に入れる方法はあるんだけど、それって○○の鍵っていう、エリアボスの初討伐報酬が必要らしいんだよねぇ」

「どっちかっていうと、初討伐狙いたいね」

「さすがになかなか難しいんじゃ無いかなぁ」


 そういいつつも、何か考え込むフジノキ。

 何か思いついた事でもあるんだろうか。俺もフジノキの発言に何か引っかかるし。


『そういえばコダマ。首無し騎士を倒したときに、何か手に入れておらんかったかな?』

「…………それだ!」


 レントゥス(細剣)の言葉に思わず声を上げた。


「なんだい、コダマ。急に大声を出して」

「いや、鍵だよ鍵。すっかり忘れてたけど持ってたよ」


 懐から取り出したのは“テスキヨ湿原の鍵”。デュラハンの討伐報酬だ。

 後でフジノキに相談しようと思ってすっかり忘れていた品である。


「ちょっ、コダマっち! それ、すぐにしまいなさい!」


 突然のキツネさんの声に、びっくりして鍵を取り落とす――、

 ――そうとしたところで、カネティスがキャッチして渡してくれた。


 声を上げたキツネさんはというと、きょろきょろと周りを見渡し、ほっと息をついている。


「よかった、誰もいないわね」

「コダマ、不用意すぎるよ」

「…………」


 コクコクと頷くカネティス。

 おう、マジか……。


「それ、多分他の人が入手不可のユニークアイテムだと思うから、人前で出すのはまずいよ」


 フジノキの発言にはっとする。

 他のゲームでそういうアイテムを手に入れた事が無かったから気づかなかったけど、いわれてみればそうだ。

 というか考えてみたら、武器を含めて結構レアなアイテムがあるんじゃないか、俺?


「コダマっちって結構抜けてるよねぇ。キミって今、割と注目されてるよ」

「そうなんです?」

「そうだよ、それなのに鍵持ってるのがばれると、さ~らに大変な事になるよ~」


 キツネさんが脅してくる。


「いや、冗談じゃなくそうなるよ。だってコダマってどのコミュニティにも属してないよね。それなのにプライベートエリアの鍵を持ってるってわかったら、あきらかに騒動の種になるでしょ」


 うわぁ、想像するだに怖いな。ポッケないないだ。知り合い以外にはばれないようにしないと……。


「わかりました見つからないようにします。ただ、それはそれとして、せっかく鍵があるんだから、明日あたりプライベートエリアを覗きに行きません?」


「うーん、嬉しい申し出だけど私たちはパスかな」


 キツネさんはかぶりを振るう。


「そうだね。コダマってコミュニティに未所属でしょ。実は僕、魔法の兼ね合いで今仮所属してるんだよ。だから下手するとコダマがやっかいごとに巻き込まれかねないからね」

「そういうこと。プライベートエリアの仕様がはっきりして、大丈夫そうならまた誘ってちょうだいな」

「なるほど、わかりました。……カネティスはどうする?」

「……明日はお祖母ちゃんとの約束があるから難しいです。ごめんなさい」

「そっかそっか。いや、大丈夫だよ」


 残念だがそういう理由なら仕方ない、明日は一人で見物に行くとしよう。

 言ってみればテストプレイみたいなもんだ。


「盛り上がってるところ悪いが、料理ができたぞ」


 おっちゃんが料理を持ってきてくれた。

 ドンッとテーブルの真ん中におかれたそれは、まごう事無き骨付き肉。

 獣の足をそのまんま焼いて持ってきましたよ、といわんばかりの豪快な料理だ。


「こいつはシュバイネハクセっつってな。本来は豚脚をつかうんだが、ここにゃいねぇから、それっぽい魔物の脚を使った料理だ。ま。このままじゃ食えんから切り分けてやる」


 おっちゃんはそう言うと、シュバイネハクセにナイフを入れた。

 パリッと音を立てて切られる皮。もうこれだけでご飯が食べられそうだ。

 切れ間からのぞくのはぷるりとしたゼラチン質の油と、ほどよく色のついた肉。

 ……ごくり。

 誰かが喉を鳴らす音が聞こえた。


「はいはい、お肉ばっかりじゃ駄目でしょ。前菜もちゃんと食べてね」


 女将さんが出してきたのは、白アスパラのクリームスープ。加えて白アスパラにオランデソースを掛けた物と、白アスパラづくしだ。


「いいシュパーゲルが入ったからな。適当に作ってみた」

「またそんな事いって……」


 女将さんがおっちゃんの方をはたく。


「おい、飲み物運んでるんだから気をつけろ」


 そうしておっちゃんがテーブルにおいてくれたのは、ビールが三つとブドウジュースが一つ。


「今日のは、ホップ効かせた苦めの奴になってる。お嬢ちゃんにはブドウジュースだ。こいつも結構合うんだぜ」

「……」


 カネティスはぺこりと頭を下げた。


「そんじゃあまあ楽しんでくれや。今日は他に客もいねぇ。適当に盛り上がっていいぞ」


 そう言っておっちゃんは奥へと引っ込んだ。


「それじゃあまぁ、お言葉に甘えるとしますか」


 キツネさんが音頭を取る。


「オリオーネ区画の踏破を祝して――」


「「「「かんぱーい」」」」


 皆でグラスを合わせ、軽く喉を湿らせる。

 そしてまず箸を延ばすのは白アスパラだ。


 一口、口に入れると、おやと思った。

 アスパラのあのシャキッと感が無い。でも、だからこそ口の中にじんわりと広がるアスパラの風味。まさにじゅわっとした食感がオランジソースにもよく合う。

 次はスープに行くか? いや肉だ。まずは肉に行こう。


 取り分けられた肉を取る。一口――。

 口に入れた瞬間のパリッとした食感がたまらない。じゃあ中はって言うと、豚肉の凝縮したジューシーさとほろほろ加減が絶妙にマッチしている。

 脂っこさも見た目ほど強くない。やばい、これはビールがあればペロッといけそうだ。

 はたと手を止めスープを手に取る。

 今度はじんわりと広がるやさしい甘み。身体の中でガツガツと主張していた肉を、まろやかに包んでくれた。

 駄目だ。これはまた、ビールとは違う形で肉に手が伸びる。手が止まらない。

 でも、それは俺だけではなかった。気づくと四人、夢中になって食事を頬張っていた。

というわけで後半戦の開始です。


是非ともブクマや、下の☆で応援してください。

作者の活力になりまする。


あとタイトルの末尾に「―あるいは、始まりが地雷でも誰かを、世界を救えるのだろうか―」と付け加えようとしましたが、しっくりこないのでやめました。

なにかいいのありませんかねぇ。

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