第一話 Miss out
この章は改稿版があります。よければそちらの方をご覧ください。
この作品はマグネットでも投稿してたりします。
どちらが投稿しやすいのかなと思って両方に投稿してみたけど、前書き後書きがある分こっちの方がいいのかなぁと思ったり。
次回投稿は、三日の23時です。
気がつくと広場にいた。目の前には大きな船。そして周りには自分と似たような服装の人がたくさんいる。
同じような服装とは言っても、その格好は様々だ。2メートルは軽く超えるであろう巨体のもの、逆に腰くらいの背の高さのもの、体の一部が機械になったもの、体の一部が動物になったもの等だ。
……そう、体の一部が動物になったもの。即ちネコ耳ネコしっぽである。右前には熊耳はやしたおっさんがいるがそちらは見ない、見えない。俺に見えるのは目の前に立ってるネコ耳のお姉さんだけだ。
ネコ耳、それは至高の存在。究極の存在たるうさ耳と対をなす萌えの極致。でも、だからといって犬耳が劣っているわけではない。すなわちケモ耳はすべからく人を幸せにする人類の宝であるということだ。ただしケモ耳おっさん(ごつい)は絶許である。
……ふと思ったがケモ耳の人ってノーマル耳はどうなってるんだろうか。このゲームのケモ耳は頭の方に生えている。だとしたら気になるのは、本来ノーマル耳があるべき場所がどうなっているかだ。何もないのか、それともノーマル耳も生えているのか。とても、とても気になる。だがしかし、前に立ってるネコ耳お姉さんの髪の毛はロングであり、耳の所在を探ることができない。ならば手を出すか? 高校時代の友人、佐藤君ならそうしていたであろう。だが俺は紳士だ、そんなことはしない。直接触れるのはもっと心を通わせてからだ。何よりなぜか体を動かすことができない。ちくしょう。ならどうする? 俺にできることは何だ? そう、それは念じること。風よ! 風よ吹け!! 世の女性を悩ませる春一番のごとく、風よっ! 吹けっ!!
――その時、ひときわ大きな声が響き渡った。
「以上で私、開拓使長官クリスティン・コルネリウスの話を終わる。ここに集いし黄昏の戦士たちが、この宵闇の大陸に光をもたらすことを願う。解散!!」
壇上の女性がそう言い放つと、周りの人々が、ネコ耳姉さんも熊耳おっさんもその他大勢みんながざわざわと散っていった。
やばい、乗り遅れた。あの金髪のおねえさん、多分演説かなんかしてたんだろうが、一体何を話してたんだ? 聞いてないのはまずかったか?
もう一度話を聞こうにもおねえさんは周りの偉そうな人たちを連れだって立ち去っていく。護衛――騎士っぽい人たち――も周りを固めているから話を聞きに行けそうにない。
そうこうしている間に、たくさんいた人たちもまばらになってきた。これは完全に流れに乗り遅れたな。……さて、どうしたものか。
そう思案していると後ろから声をかけられた。
「もしかして兄さんですか?」
振り返ると意志の強そうな瞳で俺を見つめる少女がいた。背中には小さな羽。ショートボブに切りそろえられたシルバーの髪からとがった耳が見えている。たぶん暁だ。
「えっと、もしかしなくてもいとこの……」
この場でどう呼んだらいいかわからなくて言いよどむ俺に、暁は何かカードを渡してきた。
それを受け取るとシステムメッセージが流れる。
〈カネティスからキャラクターカードを受け取りました〉
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名前:カネティス・アウローラ
種族:アーラウィル
加護:ゲイルドリヴル Lv3
クラス:弓術士 1
精霊術士 1
斥候 1
―――――――――――――――――――――
「はい、いとこのカネティスです。よろしくお願いしますね、兄さん」
そう言って軽く微笑んだ。てっきり嫌われてるかと思ってたんだが、この表情から見るにどうやらそうじゃなかったみたいだ。
他の人は仏頂面にしか見えないみたいだけど、微妙に笑ってるんだよな。これは人を驚かせて喜んだ時の顔だ。
昔はよく人を驚かせていたんだよな。被害者はたいてい俺か叔父さんだったけど。
いや、そんなことよりいくつか疑問がある。
「えっと、カネティス。いくつか質問があるんだが、いいかな?」
「はい、いいですよ」
「まず一つ目はこのゲームをやるには18才未満は保護者が必要なはずだけど、それはどうしたのかって言う話。もう一つはその格好。髪型と背中の小さな羽以外はリアルと変わらないけど、大丈夫かって言うことだ」
そう聞くとカネティスはない胸を反らせて答えてきた。あ、そこもリアルと変わらないな。
「……何か不穏な空気を感じましたが、まあいいです。質問には答えましょう。まず一つ目に関してはおばあさまに相談しました。色々と協力してくれてるお礼だと言って快く引き受けてくれました。二つ目、容姿に関してですが端的に言うと時間です。おばあさまに連絡したり、キャラメイキングを悩んでりしたら容姿について設定する時間がなくなりました。まぁファンタジーっぽい世界観ですしレーテメモリア――高加速空間での体験の忘却――の件もあるし大丈夫でしょう。大体兄さんだって髪以外リアルと大して変わらないじゃないですか。人のことはいえませんよ」
む、確かに俺も美化120%されてるとはいえ、そこまで変わってるというわけじゃないし、その点は一緒か。
そんなことを考えていると、カネティスが手を差し出してきた。
「兄さんも私にキャラクターカードをください。私まだ、兄さんの名前もわからないんですよ。それにキャラクターカードを交換することでフレンド登録もされます」
「ああ、ごめんごめん。……えーと、どうやってキャラクターカードって出すんだ?」
「……メニューオープンって念じればメニュー画面が現れます。そこでキャラクターカードを選ぶか、もしくは腰の道具袋に手を入れてキャラクターカードと念じれば出てきます。……ってあれ? 腰にあるのって卵ですか? ということはエッグマスターを取ったんですね」
「ああ、そうだよ。体験ムービーで召喚師っぽいことしてたから取ってみた」
そう答えながら、カネティスの言うとおりの腰の袋――卵とは逆側――に手を入れて念じるて出てきたカードを渡した。
「…………えっと、どういうことですか? 兄さん」
カードをまじまじと見ているカネティスが、ひやりとする声でつぶやいた。心なしか気温も下がった気がする。
おかしい。何か気に触ることでもあっただろうか。特にないと思うんだが……。
「どうしたんだ、カネティス。そんな声を出して」
「どうしたんだ? じゃないです! 一体どんなクラスの取り方をしてるんですか!!」
おおう、怒っておられる。カネティスがこんな大きな声を出すなんて珍しい。だけどそれが自分の身に降りかかるとなれば、たまったもんじゃないわけだが……。
でもなんで怒ったんだろう。クラスの取り方と言われてもなぁ。確かに広く浅くになってしまったとはいえ、そこまで悪いものでもないと思うんだが。
「どうやら理解してないご様子ですね。わかりました。説明しますので、そこに座ってください」
「え!? いや、ここ地面……」
「す、わ、っ、て、く、だ、さ、い」
「……はい」
迫力に押され座った俺を前に、カネティスが腰に手を当てて説明し始めた。
その説明を簡単にまとめるとこうだ。
・クラスは戦闘、生産、補助の三つのタイプ分かれる
・取得できるスキル(技や魔法、武器の習熟度等)やアビリティ(おもにパッシブ能力)は、付いているクラスで変わる。またタイプ別に傾向もある。
・戦闘クラスLv×1+生産クラスLv×1+補助クラスLv×0.5≦加護Lvでなければならない。ただし加護の内容で変化することもある。
・補助クラスは戦闘や生産に関わらないクラスや、それらを補助するクラス。それ単体で戦闘や生産は難しい。
「以上を踏まえた上で兄さんのスキルを見てみましょう。ちなみに戦闘、生産クラスは現状すべて○○士と言う名前です」
俺のクラスは、ウェポンマスター、妖精使い、エッグマスター。……おっとなるほど、どれも○○士じゃないな。見事に全部補助クラスだ。これは結構困った事態かもしれない。となるとエルがキャラメイクの時に戸惑っていたのも、これが理由だったりしてな。
「どうやら理解したようですね。ちなみに補助ばかりだと武器防具の装備にも制限がかかる可能性があります。例えば弓術士はアビリティに弓装備(C)があるので弓系の武器が装備可能ですが、もしなければ弓を装備することはできません。アビリティ無しだと布系の防具と最初から持ってるオリゴナイフしか装備できないんです」
カネティスは少しあきれたような声で言いつつ、俺の手を取って立たせてくれた。どうやら許してくれたらしい。
「それに補助クラスだけだと、さっきの演説で言ってたギルドにも所属できない可能性もありますし」
「……ギルド?」
「……もしかして兄さん、ゲームの基本説明を読み込んでなかったばかりか、さっきの演説まで聴いてなかったんですか?」
やばい、話を聞いてなかったどころかネコ耳に思いを巡らせていた。このことがばれると正座リターンの可能性がある。足がしびれも抜けてないし、それは避けたい。
「いや、初めてのVRで少し興奮してたから聞き逃したかもしれない」
大丈夫、嘘は言ってない。初めてのケモ耳に少し興奮してしまったのは事実だし。
「……まぁいいでしょう。先ほどの演説では中央広場の戦闘系生産系ギルドがあるので、そこでそれぞれのクラスに応じた装備と講習が受けれるように、とのことです。加えて中央広場には開拓使庁舎もあるらしく、クエストの受注はそちらでしているようですよ」
いぶかしげな表情をしつつもカネティスは答えてくれた。
「なるほど。ギルドには入れないと装備がもらえない可能性があるのか。これは下手したらパーティも組めないかもしれないなぁ」
「ええ、なので私が――」
その時大きな声で呼びかけられた。
「おーーーい! そこの君ーー。たぶんしなね屋で会った彼だよねーーー」
その声に驚いて振り向くと、赤い髪の女性と緑のフードをかぶった小柄な男性がこちらに向かってきている。
「えっと、もしかして……」
「そう、もしかしなくてもお昼に会ったキツネさんだよ。よろしくね」
そう言って女性がキャラクターカードを渡してきた。
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名前:キツネ・サン
種族:ベナンダンテ
加護:ラーズグリーズ Lv3
クラス:闘士 1
方士 1
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「ちょっと待ってよ姉さん。もし人違いだったらどうするのさ」
後ろから男性が追いついてそう話しかけてるが、大丈夫だろう。見た目が明らかに木屋橋姉弟だしな。
キツネさんの名前に思うところもあるが、とりあえず二人とカードを交換することにするか。
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名前:フジノキ・ベルデ
種族:ヒューマン
加護:ランドグリーズ Lv3
クラス:見習い魔導士 1
見習い神官 1
野伏 1
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よかった。フジノキ――金長――はまともだ。名前もハンドルネームのままだし。俺もハンドルネームのままだから、確認も取れただろう。
「ほーら、大丈夫だったじゃん」キツネさんがどや顔を決める。「それにしても、なかなかに個性的なクラスの取り方してるよねー。だいじょぶ?」
「それが実は、さっきこいつに言われるまで気づいてなかった次第でして……」
二人が来た途端、俺の後ろに張り付いたカネティスを指さしながら言った。
さっきまで元気だったから人見知りも治ったと思ってたけど、どうやらそこは数年前から変わってなかったらしい。
前に出して紹介しようとしたけど抵抗するから諦めてそのまま紹介する。
「えっと、この子はカネティスっていって、昼間言ってた俺のいとこです」
「……カネティスちゃん、ね。そっかそっかふむふむ。私はキツネ。気軽にキツねーさんと呼んでね。後、後ろのは弟のフジノキ。よろしくねカネティスちゃん」
そう挨拶するキツネさんとフジノキに、カネティスは小さく「……よろしく」とつぶやいて頭を下げた。相変わらず俺の後ろにひっついているが……。
「さて挨拶も終わったことだし、これから冒険っといきたいところだけど、コダマ君はどうするつもりなの? 私たちとしてはどうせだから一緒しようかと思ってたんだけど……」
「それなんですけど、しばらくは一人で頑張ってみようかと思ってるんです。やれることがはっきりしてない自分がいたら足手まといになるでしょうし」
「ふむふむそっかー。私たちはそこら辺気にしないけどなぁ。後ろのカネティスちゃんもその点は一緒だと思うよ。……とはいえ本人が気にしてたら本末転倒だしね。私は陰から見守ることにしよう。頑張るのだ、少年!」
バシバシとキツネさんが肩をたたいてきた。
キツネさんは気にしないって言ってるけど、カネティスを放っておいてパーティを組むわけにもいかないしなぁ。カネティスも保護者を探してまで参加したゲームだ。そんな楽しみにしてたゲームで俺に付き合わせる訳にもいかんだろう。
「よーし! それじゃあ中央広場にいくとしよう。そこまでだったら一緒にいてもいいでしょ?」
キツネさんが、何か言いたげだったカネティスの手を引いて歩き出す。一言二言カネティスに向かって話しかけていたみたいだけど、それだけであのカネティスが手をつないで歩くとは……。キツネさんのコミュ力、半端ないな。
「コダマ、僕たちも行こうか」フジノキが肩をたたいてきた。「ああ見えて姉さん、引くべきところはしっかりと引くから、カネティスちゃんについては心配ないと思うよ」
「そっか、ありがとな。……これでカネティスの引っ込み思案が解消されるといいんだけどな」
「うーん、そこら辺は姉さんよりも君次第だと思うよ。それよりもコダマ、どうしてそのクラスのままいこうって思ったんだい? 転職っていう手もあると思うんだけど」
「転職か……。確かにそれも考えないではないんだけど、エル、俺のチュートリアルをしてくれたやつが“頑張ればなんとかなる”みたいなことをいってたからさ。頑張ってみようかなっと」
「そっか。コダマがそう思うんなら頑張るといいよ。でも何か困ったらすぐ連絡してよ。そのためにカードの交換したんだからね」
再度フジノキが肩をたたいてきた。せっかく誘ってくれたゲームでこんなことになったのに、気にするなっていってくれる。ほんとこいつはいいやつだよな。
「ああわかった。その時はよろしく頼むよ」
「よし、それじゃあ先に行った姉さんを追いかけよう。また大きな声で呼ばれてもかなわないからね」
エル:エルだよ。作者から「とりあえずこれで出番終わりね」と言われちゃった。
エル:なので欄外で勝手にQ&Aコーナーをやることにしたのさ。
エル:決して作者が設定厨なのに説明しきれなくて悔しかったからとかじゃないよ。
エル:コダマが気にしないことは語られないから仕方ないね。掲示板回はこの章の最後にはいるから少し先だしね。
エル:ちなみにただの補足説明だから、読み飛ばしても問題ないよ。
エル:さて、それはともかく一つ目のお便りです。「加護って何ですか? どんなものがあって、また効果はどういうものですか?」
エル:なるほど、言い質問だ。え? 何? どうして始まったばかりなのに質問があるかだって。
エル:それはね、ラジオ番組の第一回にお便りがたくさん来てるのと一緒の理由さ。つまり深く考えちゃダメってことさ。
エル:それはともかく加護なんだけど、【エイル、ゲイルドリヴル、ゴンドゥル、ヘルフィヨトゥル、アルヴィトル、フロック、エルルーン、シグルーン、ラーズグリーズ、ランドグリーズ、レギンレイヴ、シグルドリーヴァ】の12種類あるよ。
エル:ようはヴァルキリーの名前から取ってるってこと。
エル:それぞれ違った効果があって、例えばカネティスの加護【ゲイルドリブル】は遠隔武器や射撃、投擲を伴う技術にプラス補正。近接攻撃等にマイナス補正。となってる。
エル:どの加護もメリットとデメリットがあって、加護のレベルを上げるとメリットを強化したり、逆にデメリットを少なくしたりできるって寸法さ。
エル:とりあえず今回はここまで。一応次回もここでぐだぐだしゃべるつもりだよ。
エル:あっと、最後に欄外で語られたことはあくまで予定だからね。作中で観測されるまでそれが確定することはないって思ってね
エル:まぁあれだよ、設定変更の予防線だね。
エル:ながくなったけどそれじゃあね。ノシ




