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第九話 相性 

昨日はすみませんでした。

何とか復調したので頑張ります。

 ファニートラップを後にしてやって来たのは開拓使庁舎前。ここで待ち合わせをしてるんだが……。お、いたいた。


「おーい」


 三人を見つけ大きく手を振る。向こうもこちらを見つけてくれたようで、こちらに近寄ってきてくれた。


「おっはよー」


「おはようございます」


 キツネさんが手を上げて挨拶をする。それを皮切りにみんなと挨拶を交わした。


「それにしてもコダマっち、ずいぶん見た目が変わったねー。……うんうん、かっこよくなった。カネちゃんもそう思うよね」


「……いえ、いつもの兄さんです」


 キツネさんは褒めてくれたのだが、カネティスはいつもと同じだと断言する。

 ……おおう。我ながらいい感じだと思ってただけに、へこむ。


「え!? あれ? 兄さんどうしたんですか」


 がくりと肩を落とす俺を、カネティスが心配そうに見てくる。

 ……いやカネティスの一言のせいだと俺は言いたいなぁ。


「……いやぁ、どちらかというとカネちゃんのせいかなぁ」


「えっ、えっ!?」


 キツネさんの言葉に慌てるカネティス。


「うーん、でも責任の一端はコダマにあると思うんだよねぇ」


「えっ!?」


 フジノキの言葉に今度は俺が慌てる。


「ま、似たもの同士って事だね」


 そう言うと二人はさっさと庁舎の中に入っていった。

 残されたカネティスと顔を見合わせるが答えは出ない。

 お互いに首をかしげながら二人を追いかけていった。





 キツネさんの「どうせなら依頼も受けておこう」との言に同意し、いつもの受付さんの元へ。

 〔戦乙女エルルーンの冥助〕の件もあるし、できるだけ依頼を受けておきたい。

 

「これはコダマ様、今日はパーティを組んでおられるのですか? コダマ様にもそんな仲間がおられたのですね」


 相変わらずの口調の受付さん。

 ……だが俺にはわかる。あの鉄面皮の裏にほっとしたような感情が隠れている。伊達にカネティスと付き合って――ブランクはあるが――きたわけじゃあない。

 なんだかんだとソロで活動してた俺を心配してくれてたのだろう。


「まあね」


「それで、どのような依頼をお求めですか?」


「えっとそれは……」


 キツネさんをちらりと見ると、説明を引き継いでくれた。


「とりあえず遺跡10層のボスまでは倒すつもり。だからその後の敵の討伐依頼だね。適当によろしく」


「わかりました」受付さんがチラリとこちらを見る「皆様なら何とか適性レベルですね。それでは皆様に確認されている魔物の討伐依頼を受注しておきます。どのような魔物かは……」


「おっけー、大丈夫よ」


 キツネさんは親指を立てた。

 

「わかりました。それでは」


 受付さんがそう言うとすぐに、依頼及びクエストを受注した旨がシステムを通して知らされる。


「お、はっやーーい。さすがコダマっちがお薦めするだけあるね。今度から私もオネットさんに頼もーっと」


 あ、やっぱり他の人と比べても処理が早いんだな。って、うん?


「……オネットさん?」


「うん、オネットさん。ほら、名札に書いてるでしょ。……もしかして気づいてなかった?」


 キツネさんが受け付けさんの胸元を指さす。その胸には確かに名札があって、オネットと名前も書いてある。


「大丈夫ですよコダマ様。コダマ様がそういう方なのは存じております」


 そう言いながらも、受付さんの視線はザクザクと俺の頭に突き刺さる。

 怖くて顔を上げられない。


「…………兄さん、いつまでオネットさんの胸を凝視しているんですか」


 カネティスが背後からひやりとした声音で問いかけてくる。


「ち、違うんだカネティス」慌てて視線を切り離し弁解する「確かに受付さんのお胸はお手頃サイズでいい感じだけど、胸に貴賤はない。カネティスだって……」


 ――しまった! いらんことを口走ってしまった。

 カネティスの視線の温度がどんどん下がっていく。


「余計なことを言うのはこの口ですか――」


 カネティスが俺の口をつまみ、引っ張る。

 痛い痛い痛い。


「ま、まぁカネティスちゃんもそのくらいにしておいて……。結構人出もあるし、ね?」


 フジノキが間に入ってくれた。


「……わかりました」


 カネティスが不承不承頷く。

 いや、わかったんなら手を離して欲しいかなぁって……。あ、いや、すみません。


「ま、今日の所はその辺にしておいて、コダマっちへのお仕置きはご飯でもおごってもらいながら考えましょ。オネットさんもそれでいいよね」


「……わかりました。それではいくつかピックアップしておきますね」


 キツネさんの言葉に同意する受付さん。

 いや、ちょっと待って。ご飯をおごるのはともかく、その後にお仕置きも待ってるの、おかしくない?


「それじゃあ、話もまとまったところで遺跡に行こっか」


 そう言うとキツネさんは、周りに集まっていた人の間を縫うようにして出口に向かう。

 俺たちもその後を追って庁舎の出口へと向かった。

 ……いや、カネティス。痛いからそろそろ指を離して欲しいんだが……。


『自業自得であるな』


 レントゥスのそんな声が聞こえた。やめてくれ、耳まで痛くなってくる。



 ◆


 なにげに初めて来る遺跡の転送陣。それは遺跡入り口の隣にある小屋――門番さんの詰め所だと思ってた――の中にあった。

 中の転送陣を使ったときは入り口そばに出てきてたから、逆の転送陣はどこにあるんだろうと思ってたんだよな。

 ちなみに三階から出るときは、選択肢もなく一方通行で外に出された。 

 そういや、さっきこの中に入る時に衛兵さんに貢献度を支払ったんだが、何度も転送陣を使って貢献度足りるかな……。

 足りないよなぁ。さっきので半分以上減ったし。


「どったの? そんな心配そうな顔して」


 キツネさんが聞いてきた。


「いや、貢献度が足りないなぁと思いまして」


「大丈夫、大丈夫。十層までなら一回払えば今日の所は無料(ただ)だから」


 俺の不安をキツネさんは笑って吹き飛ばす。


「そんなことよりも」キツネさんが俺を指さす「入ったらすぐボス戦だから気をつけてね。あ、ちなみに六層のボスはコダマっち一人にやってもらいまーす」


「え? あ、いや。ちょっと待ってください。三階で結構ギリギリだったのに、六階を一人で戦うのは無理じゃないかと……」


 突然の言葉に俺は狼狽した。

 まさかこれがさっきのお仕置きって言うんじゃないだろうな。


「装備も一新したんだし、きっと大丈夫だよー」


 キツネさんが俺の背中をバシバシたたく。

 ……確かに防具は一新されたけど、でもそういう話ではなく……。


「まぁまぁ、取り巻きは僕ら三人で持つし、バフ――強化魔法――もかけるから大丈夫だよ。まあ実際の所、単に姉さんがコダマの戦い方を実際に見ておきたいだけだと思うよ」


「フジノキがそう言うならいいけど……」


「えー、何この信頼度の違い」


 不満顔のキツネさんだが仕方ない。キツネさんって言動が軽いから、親しみやすいけど微妙に信頼が欠けるっていうか……。


「まぁまぁ姉さん。そろそろ移動しよう」


「えーー」


 ぶつぶつ言いながらもキツネさんは転送陣を起動させた。





 視界が暗転し、気づくと大きな部屋にいた。見た感じは三階のボス部屋と変わらない。


「すぐに敵が出てくるから気をつけて」


 フジノキのその言葉に合わせるかのように敵のシルエットが浮かび上がってくる。

 ……人型の。……スケルトンか!

 って、刺突とスケルトンは相性悪いんじゃなかったのかよ。


「言いたいことはあるかも知れないけど、バフ入れるよ」


 フジノキは詠唱する。


「取り巻きは多いけど、それはこっちで片付けるから安心して。コダマっちの相手はあの一回り大きい盾持ちだけだよ。あ、FA――ファーストアタック――でターゲットとれるから、よろしくね」


「……取り巻きのヘイトはこちらで奪います」


 キツネさんの言葉にカネティスがつなげる。


「〈ホーリーウェポン〉」フジノキのバフがかかる。「ちなみに弱点は胸に浮かぶ青い炎だね。バフのかかった状態で攻撃を数発当てれば終わるけど、狙いは小さいし盾が邪魔でなかなかそれは難しいから、地道にダメージを与えた方がいいかもしれない」


「わかった」


 フジノキの言葉に小さく頷き(レントゥス)(フォルティス)を構える。

 狙いを盾持ちに定め、引き金を引いた。



 ――パシィン


 当然のごとく弾は相手の構えた盾に防がれる。さしてダメージが入っている風には見えない。

 そしてその瞬間、取り巻きを含めたすべてのスケルトンがこちらに向かってきた。


「――いきます」


 カネティスが矢継ぎ早に矢をくりだし、取り巻きのスケルトン達に一撃を与えタゲを奪っていく。

 そのまま俺から離れ敵を誘導していった。

 奥の弓持ちはフジノキに何かをされたのか、未だ弓を構えられないでいる。

 俺に向かってきているのはボスの盾持ちだけだ。


『ふむふむ、見事なものだね』


 レントゥスが関心したように言う。


『ああ、俺も負けられない』


 近づいてくる盾持ちに駆け出す。

 駆け寄る俺に対して剣を振りかぶり迎撃しようとする。


 ――〈ガンパリィ〉


 盾持ちは剣をはじかれ、大きく胸を開く。今だ――。


 ――〈レンジ〉


 胸にともる小さな炎を目指して突きを繰り出す。


 ギィン


 ――外れた。左手の盾で剣先を逸らされた。

 剣先は盾持ちの脇腹、骨と骨の間を抜けた。だがレイピアは突くだけじゃない。レントゥスには刃もついている。

 ――だったらっ

 レントゥスをひねり、切り上げようとする。


『――上だ、よけろっ』


 フォルティスの警告に、とっさに身をかがめ地面を転がる。


 ガイィン


 盾持ちの剣が地面を打ち据える。

 辛くもよけることができた。


『ゴブリンどもと違って、アンデッドは衝撃を感じづらい。気をつけな』


 フォルティスの忠告にわかったと頷きながら体勢を立て直す。


「Kakakakakaka」


 そんな俺を見て、嘲るように笑う盾持ち。


『ちょっとかんにさわるねぇ』


 確かにフォルティスの言葉通りかんに障る笑い声だ。これを相手に地道にダメージを重ねる? いやそれよりも……。


『少し賭に出たいんだが、いいかな?』


『ふむ、面白い。好きにするといい』


 それならばと、反時計回りに盾持ちの周りを回る。手は出さない。軽く挑発するようにレントゥスを前に出すが、それだけだ。


「Giii」


 いらだつように歯ぎしりをする盾持ち。スケルトンが歯ぎしりとは笑わせてくれる。


「Kaka」


 耐えられなかったか、左手の楯を大きく突きだしてきた。

 その行動に驚いたように一歩後ろに下がる。盾持ちはそれに合わせて右足を大きく踏み込み斬りかかってきた。

 馬鹿正直に横薙ぎにしてきた剣の下を、かいくぐって突きを放つ。


 ギン


 盾でもって逸らされ、剣先は骨と骨の隙間を抜ける。

 ――それでもいい。そのまま盾持ちとの間合いを詰める。

 盾持ちは慌てるがもう遅い。右手だって振り抜いて戻れやしないんだろ? 

 レントゥスを手放し相手の盾に手をかけ、フォルティスをその間にねじ込む。


「――これでっ」


 パン。パン。パン。


 続けざまに数発、引き金を引く。


「Gi、Aaa」


 盾持ちの動きは止まり、程なくして消えていった。

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