敗走
6月4日。今日こそは第2階層の攻略を開始だ。
まずは準備運動でサクッと第1階層をクリアする。
慣れたものだ。1階層ぐらいなら、もう30分も掛からない。
そして辿り着いた第2階層。第2階層の通路に行く前に大きく深呼吸をする。やはり初めての階層。緊張する。
その場で深呼吸を何回かして、ジャンプしたり手足をブラブラ振って緊張をほぐす。
「よし。よぉし、行くぞ!」
自分に気合いを入れて、俺は1歩を踏み出した。
第2階層も第1階層と同様に今のところ一本道だ。1階層の洞窟と違い完全に直径3メートルほどの円状の道だ、迷う筈がない。
歩いている内に最初の部屋に辿り着く。
「アレは……もぐらか?」
中型犬ぐらいの大きさのもぐらのようなやつが居た。数は2匹。最初から2匹な辺り、階層が1つ上がったんだなと感じさせる。
もぐらのようなヤツは、ハッキリ言って可愛い。つぶらな瞳をしていて可愛く顔をクシクシと撫でている。正直攻撃することが憚れる。
しかし、攻撃するにもしないにも近付かない事には始まらない。
俺はそぉっと近付いて行くことにする。
近付けば近付くほど愛らしい見た目に毒気を抜かれる。
そんな、可愛さに毒気を抜かれている時である。突如もぐら達が2匹とも俺の方を向いた。
「……よぉ」
片手を挙げて挨拶してみる。
するともぐら達は一斉に地面へと潜り姿を隠した。
目の前からもぐら達が居なくなって、残っていた毒気も一気に抜ける。
この時の俺は、何故かもぐら達は逃げたのだと思っていた。そんなことある筈ないのに。彼等は立派なこのダンジョンのモンスターなのだ。
緊張の糸がほどけて、完全に臨戦態勢を解いた俺は、次の部屋に進もうとした。
その時だった。
突然目が回り立ち上がることが出来なくなった。
俺は地面へと倒れる。唐突に目が回ったこともそうだし、唐突に立ち上がることが出来なくなってパニック状態だ。目を白黒させてるのがわかる。
そんな状況でも関係なく体に衝撃が走る。それは毎度、地面に面してる部分からだった。
「まさ、か…」
起き上がれない。とはいえ寝返りはなんとか打てる程度には回復した俺は、なんとかゴロゴロと転がりその場から離れようとした。
その時に見ることになる。もぐらが2匹、地面から勢い良く出て来たのだ。つまり先程から俺を攻撃していたのは2匹のもぐらだったということになる。この部屋にもぐらといえば、地面に潜ったもぐら達しかいない。
顎が痛い。立てないのは恐らく、たまたま運悪く顎に突進が当たり、軽い脳震盪を起こしたのだろう。
このままでは恐らく死ぬ。
俺は転がり、急いで元来た道を戻った。
真面目に、本気と書いてガチで命の危険を感じたからだ。
この日、俺は、ダンジョン攻略で初めて敗走した。




