ダンジョンクリア……?
6月2日。この5日、毎日ペットボトルが一杯になれば自室に戻るを繰り返し、何度も何度も自室のダンジョンに潜った事で、ようやく4体を相手に体力に余裕を持って戦う事が出来るようになった。
5月中のほとんどは3体を相手にしていた。その3体との戦闘で、1対多数の戦い方に慣れて、5月31日の夜から4体の相手をするようになった。
あの黄緑色のスライムはあの1回きりで、以降見てない。この事を瑠璃にどういうことなのか相談したら、「レアモンスターだったんじゃない?」と言われた。
レアモンスター。なるほど。だからあんなに倒しにくかったのかと、言われた時は目から鱗だった。
そして今日、6月2日昼。俺は今日、4つ目以降の部屋に行こうと考えていた。
1対多数の戦い方というのは、必ずしも奴等の真ん中で戦わないとならない訳じゃない。むしろ確実に1体ずつ倒すことの方が大切だとこの5日間で学んだ。だからまずは、出来るだけ1対1の構図を作ることを意識する。
4つ目の部屋でその事を留意し、最終確認の戦いを終えた俺は、ペットボトルをリュックサックに仕舞って先の道を見据えた。
「……よし、行くか」
ペットボトルの1本をその場で開けて飲み干す。
これで準備はバッチリだ。
俺は5つ目の部屋を目指して歩き出した。
これまでの傾向通り、5つ目の部屋への道も一本道だった。
これで枝分かれしてたらどうしようかと思っていたため、俺としては嬉しい構造だ。
そうして辿り着いた部屋には、スライムが5体居た。案の定だ。しかし、その内の1体がまた黄緑色をしていた。
「うげ、アイツまた居るのかよ……」
黄緑色のスライムは1体だけだったからなんとか出来たところも大きい。
俺は途端に不安になった。本当にこのまま突撃して良いのだろうかと。
金属バットを見る。最近の相棒は何処かダンジョン内だけの話だがギラギラしているように見える。それはリュックサックも同様だが、何が起きているのかはわからない。
金属バットを見る。ただ俺に握られてる相棒が何か言う筈がない。しかし、ずっと見ているとこう言われてる気がする。
『行くゾ』
それを幻覚かもしれないけど感じ取り、腹を括ることにする。
そして、しっかりと相棒を握り、俺はスライム達目掛けて駆け出した。
最初に蹴るのはいつもの定石。1番手前のヤツを蹴り抜く。しかし今回はそうはせず、黄緑色のスライムを狙って蹴り抜いた。
厄介なヤツはあとで倒して、先に倒しやすいのから倒して数を減らす!
俺が1対多数で学んだ事だ。まずは数を減らす!
黄緑色のスライムを蹴り抜き、遠くの方へ飛ばしたところで、近くに居るスライムを1体ずつ方々に飛んでいくようにバットで打ち抜く。これを1体だけ残してスライムの数だけ繰り返し、スライム達1体1体の距離を稼ぐ。
距離を稼いだら、あとは近くに残したスライムを皮切りに、一方的に殴る斬るを続けるだけだ。
そうすること数分。普通のスライム達の殲滅が完了する。転がるペットボトルや黒く濁った石は蹴って戦闘の邪魔にならないようにしておく。
そして、今度こそボスとも言うべき黄緑色のスライムに目をやる。途中。普通のスライムを攻撃しているときに何度か突進されて、それを打っていたから回復しない程度には、ある程度ダメージは稼げてる筈。
俺と黄緑色のスライムは、まるで西部劇のガンマンのように一定距離を保って互いを見合う。
俺と黄緑色のスライムの間に静寂が訪れる。
先に動いたのは黄緑色のスライムの方だった。
スライムはポフポフと跳ねながら、俺に向け突進をしてきた。
俺はそれを、中高生の時からやっていた慣れたフォームで打ち返す。そして打たれて飛んでいくスライムを追い掛ける。
スライムは、今回も綺麗に飛んだことで壁にベチャとなり、徐々に剥がれて壁から落ちてくる。そこにタイミングを合わせて、バットを【変化】でナイフにして、グサッと一突きする。ナイフは綺麗にスライムに刺さり、そのまま重力に従い地面に落ちる。
スライムの体が、ナイフで刺されたことにより裂かれて変な形になる。
俺は落ちたスライムを踏みつけ中腰になり、あとはグサグサと倒れるまでスライムを刺した。
今回もこの戦い方が正解だったらしい。気付けばいつの間にか、目の前にはあの黄緑色をした液体の入ったペットボトルが有った。
それを確認したタイミングで後ろに寝転がり大の字で地面に寝る。
初めて4体を同時に戦った時と似た疲れを感じる。あの時と違うのは、時間にすれば今回の方が戦っていた時間が短いことから、恐らく精神的な疲れだろうということだ。
ある程度呼吸が整ったところで、リュックサックにこの部屋で出た戦利品を仕舞っていく。
ふぅー。今回も大変だった。
全部仕舞ったところで、ふとこの部屋の先が有るのか確認するために部屋中をグルグルと見渡す。しかし何処にも次へ繋がる道は無かった。
「あれ?」
グルグルと部屋の中を探索する。しかしいくら探しても次の部屋への道が見つからない。
「あれ、もしかして、攻略しちゃっ……た?」
もしそうなら、ここは本当に初心者向けのダンジョンだったということになる。
なんと優しい親切設計だろうか!
そんなことを思いながら、壁に手を付く。
何が悪かったのだろうか?いや、たまたまなのだろう。
俺は突然、謎の光に包まれた。
「なんっ……だこれ?!ちょっ、待っ」
視界が突然ホワイトアウトした。




