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シーズン2『黒き甘美と終わりなき狂宴』

連載開始します。よろしくお願いします。

 第一話『人狼少年とチョコレートによる闘争』



 この世に存在するかぎり、変わらないということはありえない。生まれながらの絶対者とて、他者と触れあえばその影響によって移ろいゆくものなのだ。

 相手との繋がりが深ければ深いほど、変化の波は激しくなっていく。

 さながら、新たな自分を見いだしていくように。


「幸せすぎて怖いな。そう思うときはないかい?」


 吸血鬼の王はうっとりとした表情で言った。

 皺ひとつない真っ白なテーブルクロスがかけられた卓のうえには、色とりどりのチョコレートが置かれている。トリュフ、オランジェット、プラリネ、フランボワーズ……カカオで作られた美しい宝石たち。かつてアルフレッドが『可能性』を示したとき、シンに与えた作品のすべてだ。


 あれから丸一年。ショコラティエとして腕をあげた今、同じレシピで同じチョコレートを作ったとしても、その仕上がりはまったくの別物となる。本日の趣旨はその『変化』を再確認するためのものだ。あるいは――過ぎ去っていった時間の流れを。


「なんで自分はこんなに不幸なのかなと思うときならあるよ。こうやって頭のおかしい吸血鬼とお茶会しているときなんてとくにな」

「確かに君はなにかと災難続きだったらしいね。厄介な呪いを食らって殺されかけ、変態趣味の貴婦人に捕まって拷問されたうえに殺されかけ。終いには正気を失った私に殺されかけたとか。前世で相当の宿業を積んでいるとしか思えないね」

「他人事みてえに言いやがるなあ、吸血鬼。お前のことだからまたなんかやらかしたとしても、どうせすぐにけろっと忘れちまうんだろうが」


 シンはチョコレートをつまむ。

 本当に幸せそうにほうばるので余計に腹が立ってくる。


「反省していれば許してくれるのかい。違うな、君はそれほど甘くはない。ならば無駄な努力はしないにかぎる。そもそも私たちの間にそういったものは必要なのだろうか? 殺し、殺されるだけの刹那的な関係だというのに」


 返事のかわりにチョコレートをつまむ。

 大切な一粒を奪われて、シンがむっとしたような顔をする。

 我ながら、惚れ惚れするような出来栄えだ。

 中に込められた『殺意』も、いっそう力強く感じられる。


「結局のところ、俺たちは宿敵同士だからな」

「そうさ。だからこそ、私は今とても幸せなのだ」


 アルフレッドはうんざりしたようにため息を吐く。

 この世に存在するかぎり、変わらないということはありえない。

 シンは幸せに。

 そのぶん、俺は不幸せに。


 すべての揉めごとが解決した今、いっそう暗澹とした気分にさせられる。

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