表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/54

4・15 人間のいない人群れの街で

4・15 人間のいない人群れの街で


 東京という街への復讐。柾木にとってそれは、東京を見つめつづけることだった。彼は東京に出てからの生活を、同じ杉並のマンションで過ごした。六畳一間の六階の部屋は、柾木にとっての監獄だった。

 彼は夜のベランダに立った。住宅街が広がっていた。星のひとつも見えない夜空。代わりに、人工の明かりがあった。遠くに、新宿の赤い灯が燃えていた。彼はその灯を、じっと見つめた。恨みと、憧れと、二つないまぜになった目を細め、彼は新宿の赤い灯を見つめた。百億光年届いた光を、人工の明かりは消し去っていた。

 赤い灯は、星と同じように瞬いた。

 柾木はその灯を、見つめつづけた。そこは人間のいない街だった。人間のいない、人まみれの街。人間性の最も醜悪なものだけを寄せ集め、土を覆って構築された街。コンクリートに覆われた土は死んでいた。馬鹿と煙は高所を目指し、醜悪な人群れは重なって住んだ。その六階に、柾木は立っていた。そこで、彼は煙草に火をつけた。人工の明かりを、じっと見ていた。

 煙は、高いところへ昇った。

 人間のいない人群れの街で、彼は一人であることを選んだ。醜悪な人群れに没入しながら、自らも積み重なる畜群と成り果てて、その中で一人であることを選んだ。そうして煙を昇らせながら、柾木はその街を見つめつづけた。見ること。やってくる無人称の視線を厭悪しながら、睨めつけてその街を見つづけること。一人の東京を、記録すること。

 それが、柾木の復讐だった。(了)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ