表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華龍Story  作者: ryo
69/142

第69章

今日(3/15(日))の更新はここまで、です。

次回は明日(3/16(月))となります。

69.

「匂いもしないし、油やガソリンで燃えている訳でもないな?だとしたら『火の魔法』か?」

『がそりん?』シャーリーが呟くが、そこは放っておく。小首を傾げた仕草が可愛いのだが、それを愛でるのは後にしよう。それにしても、今のところ副作用はない様なので問題はないのだが、毎日『回復薬』を飲むと言うのも如何なのだろう。ひょっとして俺はまじめな話、腹上死願望の願望達成確率を底上げしているのだろうか?うーん、あり得るな。今日からは一人づつ順番で、とか。


「エレイン、全部でなくて良いのだが、『水の魔法』で俺たちが通れる様に、炎を消せるか?」

立ちはだかる炎が『火の魔法』によって造り出されたものならば、正しくその内側は『世界樹の若木』を守る結界だ。意図せずしてこの広場に踏み込んでしまった獣に警告を与え、意図して入り込んだ者をも追い払う。その力を秘めた結界ならば、まずはその結界を切る必要がある。


「そへんでっせー。それ位どすえら出来そへんでっせー。・・・リ・シル・ツェール」

エレインが炎に向けて、両手の掌を翳す。シャーリーが『風の魔法』を放つのに似た動作だが、エレインは両の手の指を絡める様にして腕を突き出した。詠唱と共に両の掌から霧が湧き出す様に広がって、その霧はエレインの手から離れるに従って凝結し、やがて水流となって炎の壁へと押し寄せる。

バシャっと、大きなバケツで水をぶちまけたかの様に炎の壁を押し潰し消し去った。一瞬で幅3メートルぐらいに渡って、炎の結界の環が断ち切られている。


「よし、今のうちに結界の内側に入るぞ」

後ろの三人も内側に入った事を確かめる為に振り向くと、並んだ三人の後ろでまるで扉が閉じる様に再び炎の環が閉じる。俺たちが中に入り込んだのか、それとも俺たちは閉じ込められたのか。『世界樹の若木』を守る炎の環の内側も、暫くは外と同じ下草の原っぱが続く。このまま『世界樹の若木』までたどり着けるだろうか?


「『世界樹の若木』の天辺あたりで、何か炎の様な物が燃えているみたいに見えるわ」

俺の左後ろでソフィアが指さす方に目を凝らすと、確かに『世界樹の若木』の更に上方で炎が舞っている様な感じだ。炎の結界の発火と同時に『世界樹の若木』が燃えているのだろうか?まさか、『知られざる迷宮』の『鍵』と同様に、『世界樹の若木』ごと消し去るつもりなのか?だとしたら、このトラップを考えたヤツは大馬鹿者に違いない。


「いーや、あれは『火喰い鳥』でっせー。燃えよそう石炭を食する、といいまんねん」

石炭なんか食べて貰っても、ちっとも栄養がなさそうだが。否、それ以前に口の中が火傷してしまいそうだ。などと考えているうちに、『世界樹の若木』の上空を舞っていた炎がこちらの方へと群れをなして向かってくる。まるで、燃え盛る隕石が落ちてくるみたいだ。


「ソフィアとシャーリーはそれぞれ射程に捉えたら、『火喰い鳥』を叩き落とせ。エレインは可能な範囲で皆に防御支援を。くるぞ!」

上空から舞い落ちる『火喰い鳥』たちは、形態としては『氷の騎士』に似ている。燃え盛る炎が鳥の形を成し、如何やら胸の中心に『魔核』を保持している。弱点が『氷の騎士』と同じならば、厄介な事に『魔核』以外の体を構成する炎への攻撃は全く意味を為さない。


「はぁっ!」

もっとも射程が長いソフィアが、果敢に三本の矢を同時に番えて放つ。仰角を目いっぱいに上げて、体全体をまるで弓の様に反らしている。伸びあがる様な姿勢は首のキスマークを強調しているが、幸いにして本人には見えるはずがない。後でシャーリーが変な質問をしてソフィア本人に気付かれたりしない様に言い含めておいた方が良いかもしれない。そのまま視線を首から下へ落とすと、細い腰からむっちりとした形の良いおしりのラインをついつい、目で追ってしまう。因みに腰当で見えない分に於いては、自動的に俺の想像力による補完がなされている。

最初の三射が『火喰い鳥』に届くを待たず、次の三本を番えて放つのと、最初の三射が三羽の『火喰い鳥』の『魔核』を砕くのとは、ほぼ同時だった。流石ソフィア、おそろしい程の精度だ。余り悪戯するのは止めておこう。


「リ・エル・ソラート!」

シャーリーが両の手を覆う紅い手甲を揃えて突き出すと、ソフィアが二度目の三射で『魔核』を砕き損ねた『火喰い鳥』の一羽を『風の魔法』の鎌鼬で切り裂いた。実体のある『魔物』だと一体ごとに血が飛び散ってスプラッター映画の惨状を再現してくれるのだが、幸い『火喰い鳥』相手ならせいぜい割れた『魔核』が破片を空中に散らすぐらいで済むので助かる。頭上で『火喰い鳥』を迎撃しているので、なおさらだ。


「恵みの雨よ、我らを守りたまえ。・・・リ・シル・ツェール」

エレインが今度は自らの頭上に向けて、両手の掌を翳す。緑のドレスが風に靡く。見ていて綺麗だ。とても綺麗なのだが、見ていて何か変だと思わず違和感を感じたのだが、それはつまり、訛っていない。詠唱の時は古語ではあっても、訛ってはいない様だ。頭上に翳した掌から湧き出た霧は、俺たちを覆う様に広がるにつれて水の膜を形作り、接近する『火喰い鳥』に立ち塞がる。水の膜に触れて自分の体を作る炎を弱められた『火喰い鳥』たちは、次々とバランスを失って垂直に落下してくる。これに止めをさすのが俺の役目だ。

もはや垂直に落下するしかすべのない『火喰い鳥』の『魔核』を砕くのは、そう難しい訳ではないのだが。頭上に向かって剣を振るう様は、かなりみっともない気がする・・・。何か下手な踊りを踊っている様な。こちらも自分では見られないから良いが、自分で見たら恥ずかしくてやってられないかも。俺は早く終わらせたい一心で、『同田貫』を振るい続けるが、断ち切った『魔核』が10を超えた辺りで数えるのを止めた。シャーリーが砕いた『魔核』の欠片と、ソフィアの矢が刺さったままの『魔核』も周囲に無数に降り注ぎ、やがて如何やら、最後の一羽の『魔核』を切った様だ。


「終わり、かな?」

俺はそう問いつつも、『世界樹の若木』の方向から敵意に満ちた視線が途切れる事無く注がれているのを、否応なしに意識させられ続けている。分かっているのは『火喰い鳥』との戦いの終わりは、次の『魔物』との戦いの始まりとなると言う事だ。


今日(3/15(日))の更新はここまで、です。

次回は明日(3/16(月))となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ