表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華龍Story  作者: ryo
54/142

第54章

54.

野山に住む獣が人間の狩猟の対象となり、人間にとって貴重な食糧の一角を担う存在であるのに対し、倒した場所が『迷宮』の中であるか否かに関わらず『魔物』が食べられるのか否かという点については、この世界に於いて長年の議論の対象となっているらしい。結果から言うと、未だに明確な結論が出ていないのだそうだ。人間の体はその食した物から作られている訳で、人々は『魔物』を食べれば自分も『魔物』になるのではないか、という恐れを懐く。実際のところ、これまでも幾つかの人間が『魔物』を食べた事例が存在する。たとえば、野山で狩った珍しい獣が、後になって実は『魔物』だったと分かった場合。あるいは、『迷宮』の奥底で閉じ込められ、已まれず『魔物』の肉を食した場合。何れも食後に人間が『魔物』に変貌したという話にはなってはいないが、フィレンツェとしても『魔物』を無理に食したいとは思わない。その体を流れる血の色が人間自身や人間が食する動物とは異なる場合もあり、生理的にも受け付けがたい。また、体内に『魔核』と呼ばれる結晶体を持ち(この世界では、その『魔核』を持つか否かを持って『魔物』を他の獣と区別している)仮に体内を流れる血流の成分が、人間に於ける結石か何かの様にその結晶体を生じさせているとするならば、加熱処理するか否かに関わらず、なおさら『魔物』を食べる事がリスクとしか思えない。

ただ、ヴィヴィアンと共に現れた『氷の騎士』たちの様に、人間どころか生物に必要な一切の体組織を持たない物が『魔核』一つで活動する事から、『魔物』の体の中で『魔核』が生じるのではなく、『魔核』が『魔物』を造るのではないか、そう考えてはいる。


「この電気ヒグマの肉が食べられたら、暫くは食糧に困ら無さそうなんだがな」

この森の中の渓流に面した『知られざる迷宮』で、電気ヒグマの現れた場所より深部がどれだけ続いているかは、今のところ俺たちにも分かってはいない。ただ、おそらくこの年若いであろうこの『迷宮』で、あの電気ヒグマ以上の難敵が、奥に待ち受けているとも思えない。ソフィアの提案を受け入れ即座に再度『迷宮』に足を踏み入れても良かったのだが、日があるうちに電気ヒグマの毛皮を剥いでしまいたい、というのもあり俺たちは先に早めの夕食を取る事となった。

因みにジルとジバと葦毛たちも、一緒に早めの夕食となった。早めの夕食の理由は分かっていないのかもしれないが、一応、喜んではいる様だ。ひょっとすると、今日は一日四食になると誤解しているのかもしれないが。


「残念だけど、『魔物』の肉は食べられないわよ。でも、毛皮は防寒着や敷物に出来るし、街で売ればそれなりの値段で売れるわ。但し、爆発で毛が焦げたりしていなければだけど」

それは俺が造った『黒色火薬』を使った事への嫌味でしょうかね、ソフィアさん?

首から上を失った(電気ヒグマの首は渓流に流されて、既にどこぞに失われていた)ヒグマの毛皮だが上半身側の三分の一くらいは焦げて、その茶色の毛並が黒く縮れている。と言っても見た目は悪いが、そう防寒性が損なわれている訳でもない。

俺たちは狭い渓流の川岸で如何にか火を熾せる場所を作り、薪を囲んでというより水面に向かって三人で肩を寄せ合っている。ヒグマの肉は食べられないので、今食べているのは昼と同じ鹿肉だった。


「売るのは無理そうだが、自分たちの敷物にはなりそうだな。後は、コイツからはそれなりの大きさの『魔核』が採れたし、爪も売れるのだろう?」

そうそう、『魔核』や『魔物』の爪を売るのって、何か本格的な『冒険者』っぽいよな。異世界から来た俺からすると戦利品を売る時というのは、『ああ、俺は異世界に来て「冒険者」をしているんだなぁ』と思わず感慨にふける時間だ。実際に手にした成果が金銭に換算される訳で、実感というか満足感を得られる瞬間ではある。

熊の手は元いた世界では漢方薬とかの材料になったと思うが、シャーリーに訊いたがエルフの『魔法薬』には『魔物』を材料とする物はないのだそうだ。これも、『魔物』を食さない事と同じ理由なのかもしれない。もっとも、肝臓とかならまだしも熊の手が薬として有効かと言われると微妙な気もするが。


「そうですね、ガントレットに鍵爪として付けたり、中には鎧の膝や肩のところに付けたりしている人もいますね。どちらかというと、飾りかもしれませんけど」

ふーん、仮にうちの『合法ロリ』の紅い軽鎧に付けると、三倍速く・・・。付かないね、バドだから。色は紅くても、ノースリーブの膝上のミニだからね。何でノースリーブなんだろうね。ミニは許すけど。否、許して良いのか?


「シャーリーは別に鍵爪は付けなくても良いと思うけど、折角同じ色のローブも買って貰ったんだから、軽鎧の上から羽織った方が良いと思うのだけど?」

お、如何やらソフィアママも俺と似た様な事を考えていたらしい。色気づいてきた愛娘が、やたら短いスカートを履きたがるのが心配なんだね?分かる、分かるよ!


「・・・ご主人さま、夕食も済んだ事ですし、そろそろ『迷宮』の探索を続けた方が良いと思います。それでですね、こちらの『回復薬』と一緒に、こちらの薬も飲んでおいた方が宜しいかと」

その『回復薬』と一緒に出てきた薄い水色の薬、何か見た事がある気が。まぁ、前は10回分を一度に飲んだ訳だが、今回は確かにその十分の一くらい。その点では大丈夫そうだが、さらりとソフィアの事を売りましたね、シャーリーさん?

だとすると、先程のフォローも実は意図してやっている訳ですね。この娘、末恐ろしいかも。でもまぁ、好意はありがたく受け取っておかないとね。二種類の薬を飲み干す俺を見て、再びソフィアの可愛い顔が引きつっている。

さて。

効果の程は、さっさと『迷宮』の探索を終えて、まずはソフィアで確かめる事にしよう。でも、そのとばっちりは、シャーリーにも及ぶのだけどね。ついでに、剥いだヒグマの毛皮の敷物の肌触りも分かるだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ