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華龍Story  作者: ryo
48/142

第48章

2月22日(日)~2月24日(火)は都合により掲載お休みです。代わりと言っては何ですが、書き上げたまま掲載していなかった別のシリーズ(3部作の1作目)を同日程で掲載予定です。SFがお好きな方はどうぞ。『華龍Story』の方は2月25日(水)から再開予定です、お楽しみに!

48.

明治期の画家に、黒田清輝という人がいる。

『近代洋画の父』と呼ばれ、代表作は湖を背景に佇む浴衣を着た女性(照子夫人といわれる)が団扇を手に涼をとっている姿を描いた『湖畔』。湿潤な空気感、あるいは箱根という立地、そこには油絵なのに明らかに西洋の絵画とは異なる日本の景色が描き出されている。『一口に云へば西洋人は仕上げと云ふ事に重きを置き、日本人は画題と面白味と云ふ事に重きを置いてゐる』そう語る画家が描いたのは、油絵という西洋固有の手法で描かれた日本の『様式美』の世界だった。

湖畔の夕暮れ。

流石に日も暮れて夕食も食べず、という訳にはいかず。

さりとて、飛び起きる程の活力は残っていなくて、毛布に包まり人肌の温もりを共有する三人の周囲には『もう少ししたら起きなくちゃね』という、何処かまったりとした時間が流れている。


「俺のいた世界というか国には、たとえば『しっとり』という言葉がある。しめり気を含んでいる様子を示すんだが、同時に静かで落ち着いて、それが好ましい雰囲気である事をも示す言葉でもある。他にも『はんなり』という言葉もあって、『華なり』ってのが語源らしいんだが、こちらは上品で当然華やかで明るい様子を表しているんだが、同時にその華やかさは落ち着いた好ましい物でなければならない。(と思う、俺としては)派手なだけじゃ、ダメなんだな。うまく言えないが、俺が生まれ育ったのは、そんな国だった」

普段は何故か俺の左にいるのがソフィアで、右を定位置にしているのがシャーリーなのだが今は丁度逆、俺の右にソフィア、左にシャーリーが身を寄せている。理由は簡単で、三人とも俯せだからだ。まぁ、そういう事もあるよね。


「ふーん、この世界の言葉より大分複雑というか、その短い語句の中に複数の意味を持っているのね?」

それは、様式美ってヤツだね。

もっとも、英語とかはその単語あたりの情報量の少なさを伝達速度、つまりしゃべるスピードで補っているんじゃないかな?だからペラ々々、ペラ々々としゃべるんだよね、きっと。俺の偏見かもしれないけど。


「そうだね、たとえば俺がソフィアの髪を『しっとりしてる』と言う時は、単に湿っている、ではなくて、その指に触れる感触がまるでソフィアの素肌に触れる様になめらかで吸い付いてくる様な、いつまでも触れていたくなる様な、そんな感触で、俺はその感触に溺れそうだ、という事だね」

流石にこれは言い過ぎかな?

今更ながら俺の言葉を聞くほどに赤くなっていくソフィアは、ついに顔を伏せて毛布の中に潜り込んでしまった。


「あ、あの。私は『はんなり』でしょうか!?」

やはり俯せで少し上半身を起こしたシャーリーが顔だけ俺の方に向け、その瞳を輝かせ意気込んで聞いてくる。今日のシャーリーは、俺の『今日は解いちゃダメ』宣言により特別に?ポニーテールだ。

えー、俺の中で凄まじい勢いで検索(それもシーケンシャル・サーチ、所謂虱潰しね)が実行されるが、適切な語彙が出てこない。『合法ロリ』とか『東京都条例』とか、そういう単語なら浮かぶのですが。あと『スク水』とか。『ブルマ』とかもあるが、古いね、俺も。

少なくとも、そのポニーテールに『はんなり』はないな。


「・・・」

ごめん、誰でも真実を知る事は辛いものさ。

でも、きっと『ロリ』には『ロリ』の生きる道があるよ、メイドとか。ドワーフの街の衣装屋あたりなら、特注の『ゴスロリメイド服』とか作って貰えるんじゃないかな。

当然、スカートの丈は短くてOKです。


「酷いです、ご主人さま・・・」

ソフィアに続いてシャーリーも顔を伏せると、毛布の中へと消えた。

如何やら俺が心の中で励ましたのに、伝わらなかったらしい。

でも、まだ耳の先が見えているね。頭隠して耳隠さず。

子供の頃見た、田舎の景色。

野山の夕暮れ。

きっと、古き良き世界、なのかな。

多分、元の世界に俺が帰る事はないだろう。

そして、二度と帰れぬからこそ、美しく思い出されるのだろう。


「フィルは、いつか帰ってみたい?」

いつの間にか仰向けになったソフィアが、毛布の端を持つ両手の指先と顔の上半分だけを出している。その藍色の瞳に宿るのは、若干の不安なのかもしれない。でも、同時に深い藍色の奥で金色の輝きが踊ってもいる。つまり、不安の一方で俺がソフィアを置いて帰るなどと言うはずがない、というソフィアなりの自信もある訳だ。ぴくぴくと動く可愛い耳で聞き耳を立てているシャーリーにしても、こちらも俺の答えにはそれなりに自信があるのかもしれない。それくらいには、二人とも俺の事を理解してくれているのだろう。


「いや、俺が生きるのは、この世界に決めたんだ」

毛布に潜って二人を抱きしめる。

流石に、明日はちゃんと旅に出よう。

話が進まないし。

・・・やっぱり、その決心が果たされるかは、シャーリーの造った『魔法薬』の効力しだいだが。10倍飲んだからと言って、効果が10倍の時間続く訳ではあるまい。

それに、十回分飲んでも二人の負担は半分づつ五倍の計算ではある。

問題ない。

・・・良く死なずに済んでるな、俺。


2月22日(日)~2月24日(火)は都合により掲載お休みです。代わりと言っては何ですが、書き上げたまま掲載していなかった別のシリーズ(3部作の1作目)を同日程で掲載予定です。SFがお好きな方はどうぞ。『華龍Story』の方は2月25日(水)から再開予定です、お楽しみに!

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