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華龍Story  作者: ryo
24/142

第24章

24.

魔物を狩る冒険者の防具に倒した魔物の革が使われるというのは、狩られる側からすればとても皮肉な事に違いない。戦争で戦う敵軍が、自国や自陣営で生産された武器で攻撃してくるのと同じ事だ。といって、敵味方双方に武器を売る死の商人と、魔物の皮を加工し防具を造るドワーフたちを同列に見るのは間違っているのだろう。ドワーフたちが魔物を材料として武器や防具を造るのは、より強靭な製品を造るという目的に適った素材であるという理由だけだ。もちろん魔物たちには、その事実を認識できる程の知性はないと考えられているのだが。

いずれにせよ、俺たちが倒した『深淵の竜の迷宮』の大トカゲの皮はドワーフたちの手で鞣され強靭な革となり、更にはドワーフたち秘伝の薬品で加工されてしなやかで強固な鎧の材料となる。採寸に呼ばれたシャーリーの体型に合せ価値ある一点物の、それも人間ではおおよそ不可能な精度で大トカゲの鞣し革製の軽鎧が作られていく。

革製の鎧は金属製の鎧に比べて当然軽量で、ソフィアが纏う様な部分的にプレートで覆ったチェインメイルアーマーよりも更に軽く作られている。体格が小柄で魔法に長けたハーフエルフで、魔法を使った支援や遠距離攻撃に期待したいシャーリーには、最適な選択と考えている。

考えていたのだが。


「だいたい、なんでわたしより露出面積が大きいのよ!」

顔を真っ赤にしてソフィアが怒っている。

これはバドだね、絶対。

このワンピース型の軽鎧、ロゴこそ入っていないけれど、俺の中ではバドガールに認定。

何か娘に怒る母親か、妹を叱る姉か。どちらにせよソフィアはお叱りモードに入っているので、俺は取りあえず二人のやり取りには触れない事を固く心に誓い窓際の椅子に退避する。

工房から届けられたくだんの軽鎧を着込んだシャーリーはベッドの上で正座中、床の上ではない辺りが手心を加えられているが、シャーリーの正面で仁王立ちするソフィアの後ろから見る立ち姿が妙に凛々しく、非常に声が掛け辛い。


「済みません、お姉さまの白のチェインメイルより、ちょっとだけセクシーにしてほしいと・・・」

昨日、二人に指輪を贈った日の午後。ドワーフの長老の工房から、シャーリーは採寸に呼ばれていた。

宿を訪れた使いの者に訊くと、ゴブリン討伐が終わり工房の若い者たちも手伝える様になったものの長老たちはいまだ工房の鍛冶場に籠り、鍛冶場の中で交代で休息を取りつつも既に3日間外に出てきてはいないのだそうだ。昼夜を分かたず槌を振るう音が響き、次々と石炭が運び込まれ鍛冶場の中はとんでもない熱気が満たしているのだという。

一方で長老の指示で軽鎧を造る別の職人たちは既に素材の加工を終え、後はシャーリーの体型に合わせて縫い合わせるだけという段階まで来ていたらしい。


「ちょっとだけ!?」

実は俺たち、俺とソフィアは、シャーリーに対し多少、やましいところがない訳でもない。あのソフィアの立ち位置というか、微妙なお叱りモードには、昨夜の行動に関する気兼ねが見て取れる。なぜそう分かるかというと、俺を叱る時のソフィアは更に、もっと、10倍くらいは怖いから、だったりする。


「えーと、『指輪のお礼』については、私もご主人様から同じ品を頂いている訳ですし、工房で寸法を測り終えて部屋に戻ってきたら部屋の扉に鍵は掛かっているし、中からは何やらお姉さまの喘ぎ声が・・・。お邪魔しては申し訳ありませんし、急いで工房に戻ってデザインの変更をお願いして参りました」

ば、ばれてますけどソフィアさん!?

元気に工房へと向かったシャーリーが部屋のドアを出るのを送り出すと同時に、ソフィアは何やら後ろ手に部屋の入口のドアに鍵を掛けた。そのまま『指輪のお礼をしたい』というソフィアに半ば無理やりベッドへと誘われた俺は、シャーリーが返ってくるまでの一刻をソフィアと慌ただしく、それでいて満たされた時間を過ごしたのだった。もちろん、シャーリーが返ってきて、揃って夕食を取り休む段になってからは仲良く三人一緒だったのだが。


「じゃあ、何で赤なのよ!」

そこか!?そこですか!?

ていうか、既に負けてますよね、ソフィアさん?

一応、身体の重要な部分は覆われている訳だし、世にいうビキニアーマーよりは現実路線だし。ソフィアの纏う様な全身タイツっぽいのは、シャーリーにはまだ早すぎるし。いや、これはシャーリーに失礼か?


「えーと、髪の毛の色に合せて貰いました!」

てへっ、とシャーリーが言ってのけた。

やるな、シャーリー、何時の間にそんなに逞しく育ったの!?

『その、体型的にはお姉さまに勝てる気もしないし、私だけ誘って頂けなかったのはちょっと不公平かなと』続けてシャーリーが小声で言い訳をしている。

既に言葉を失ったソフィアに代わって、ここは俺が何か言うべきだろうな。


「・・・一応ローブとか買いに行こうか、ローブがあった方が魔法使いっぽいし」

話を纏めたよね、俺。

そろそろお昼だしね、通りの食堂も全て店を開けているし。

ソフィアの好きそうなメニューを、探してあげないと。


「あ、出来ればローブも同じ色でお願いします!」

にこやかに自分の希望を通すシャーリー。

これで俺の左右には、紅白の美少女を置くことに決定だな。何か正月っぽいよね?今年も一年良い事があります様に、みたいな。


・・・まぁ、シャーリーがスクミズとかに仕立ててこなかっただけ、良しとしよう。

その場合は、どうせなら二人にお揃いで着せたいしね。


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