第142章
すみません、しばし休載です。
やはり、2作同時は無理、無謀な試みでした・・・。
142.
おそらくは、この世界で最も食用に適しているであろうモフモフを仕留める事が出来た俺たちは、この台地での最初の一日目の狩で、食糧調達というその目的を達する事が出来た。
それに加えて、モフモフ改めてケサランパサランの毛皮は毛足も長く柔らかで電気ヒグマにも劣らず上質な手触りだし、しかも一部の人員(因みに文句を言っていたのは、確かソフィアだったはず)には不評だった俺の電撃に依る焦げ跡もない。これなら、皆に毛皮のコートを作るも良し、電気ヒグマ同様に敷くか掛けるか毛布代りに使うも良し。
これだけ広いと、どんなに皆が逃げ回ろうと、ベッド(ではないが)からは逃げられない。なんなら毛を内側に、寝袋状に縫い上げても良い。
『さぁ、何処に行こう、っていうんだい? もう何処にも逃げられないよ?』みたいな。
いいな、それっ!
取り敢えず綺麗に剥いで洗って乾かし、ソフィアの無限倉庫に仕舞い込んで貰った。
ソフィア、その毛皮が、今夜のキミの死に場所だよ?
肝心のケサランパサランの肉は、俺からすると、何と牛肉に近しい気がする。サーロインではないが、赤みのヒレという感じ。うちの肉食系女子たちにとっても期待通りにご馳走で、脂肪分が少ない辺りもソフィア向け。ただ、毛皮を剥ぎ取り、その身の絞まった肉をソフィアの無限倉庫に仕舞い込むべく塊に切り分ける段階で、草食のモフモフには四つの口と、それぞれに連なる合計四つの胃があることを知り、何か微妙に食欲が失せてしまった。身体の構造的には四面体の、どの面が草地に接している場合でも、食事を摂ることが出来た訳だ。四つの消化管は体の中心で合わさり体内で、まりも状の繊維質の発酵物を作り出す。時折、任意の口(地に接していない、どれか)から再度そのフンを放出するらしいが、硬く緑の繊維質の玉は雨に濡れ解れると良質な肥料となって、再びこの大地の青々とした下草の栄養源として還元されるのだそうな。
ひょっとしたら、この世界は魔物がいなければ、見事な循環型の生態系を作れる可能性があるのかもしれない。
「西に向かう街道まで戻って、『虚無の狼の迷宮』まで馬車で五日くらいだな。街道に戻らずとも荒地を走破する事も出来なくはないが、馬車の車輪が痛んでしまうだろう」
再びシャーリーから栗毛を取り戻し先導するアリシアが、そう、教えてくれる。馬車の車輪は勿論の事、栗毛や葦毛の蹄にも良くない。『虚無の狼の迷宮』に急ぎたい理由は幾つかあるものの、ここは無難にまずは街道に戻る事が得策だろう。
「まずは、街道まで戻ってくれ。それから西に向かうとしよう。アリシア、先導を頼むよ?」
そう言う俺をアリシアが鋭い眼光の隻眼で睨みつけ・・・、もとい本人は了解の意味で普通に見詰めたつもりなのだろうが、栗毛の手綱を操ると街道への帰路へと、その首を巡らさせた。
アリシアの背を追って、俺も馬車を引く葦毛たちを、ゆっくりと走らせ始める。葦毛たちは下草に覆われ緑の豊かな台地が恋しいのか、僅かに後ろへと振り返り、小さくいなないた。
「これは、もうすぐ雨になるかもしれまへんね。わいはええですけどね」
俺たちの向かう先を見詰め、後ろの荷台から身を乗り出したエレインがそんな事を呟いた。
おお、身を乗り出すと、頭上に巨大な塊が。
自分は良いけど、などとこれ見よがしに言うのは、悪女なりの気遣いなのだろう。『さぁ、もっと私を憎みなさい、その憎しみが私をより美しく彩るのよ』みたいな。
ないか。
多分、思った事を口に出した、だけだな。
『水の精霊』であるエレインは兎も角、足元のぬかるんだ中を馬車を進めるのは厳しいかもしれないが。
まぁ、ゆっくりであれば、大丈夫だろう。
『春雨じゃ、ぬれて行こう』春じゃないけどね。
「ご主人さま、雨が降ってきたら、火を焚くのが難しいかもしれません。早く夕食にした方が良いかもしれないです」
うん、偉いねシャーリーは。
でも、今、お昼ご飯を食べたばかりだよね?
取り敢えず、俺も後ろの荷台まで身を乗り出し、シャーリーの可愛い頭を撫でておく。
『ひゃう!?』
そうかそうか、そんなに褒められるのが嬉しいんだね?
シャーリーの隣で悪女の視線が冷たいが、その程度では俺は怯まない。
多分、睨んでるのがアリシアなら、間違いなく手を引いてるね。ツンツンの時(平常運転時)は、怖いんだよね。
だが。
アリシアは今は背を向けている。
なので、たっぷり、きっちり。ついでに、その可愛い耳も、そっと撫でておく。
ふぅ、これで夜までは、俺も我慢するからね?
真っ赤になったシャーリーが、エレインの膝の上に突っ伏した。
まぁ、俺は褒めてみた、だけだし。
気にしないでほしい、色々と。
「ねぇ、フィル・・・。もし、わたしが一旦ヘンリエッタを殺すと決めたのに、要らぬ情けを掛けた時は・・・」
荷台まで戻ると、ソフィアが俺の二の腕に額を当てて、そんな事を言ってきた。僅かに声が震えている。
「その時は、・・・わたしを殺して」
小さな、だがはっきりとした口調で、ソフィアは俺にそんな事を言った。
「分かった。その時はソフィアを殺して、・・・俺も死のう」
はっ、とした様な表情で、ソフィアが俺の腕から顔を上げた。
俺は何故、自分でも、そんな答えをしたのか、分からなかった。
だが、それが俺の本心だと、それだけは確信があった。
だから。
ソフィアを抱き寄せて、唇を奪う。
俺は一度、ソフィアを殺している。
もう一度殺せと言うなら、俺も一緒だ。
すみません、しばし休載です。
やはり、2作同時は無理、無謀な試みでした・・・。




