表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/7

第7話:伯爵令嬢の帰還と、ミニチュアたちの品評会

王都の一等地に、薔薇のアーチが美しく整えられた壮麗な屋敷がある。全大陸に名を馳せる『剛剣』の家系、アストレア伯爵令嬢カレンの生家である。


「お帰りなさいませ、カレンお嬢様!」


馬車を降りた彼女を、整列した数十人の召使いたちが最敬礼で迎える。その中央で、厳格な面持ちの老執事が深々と頭を下げた。

「お嬢様、本日の訓練もお疲れ様でございました。アストレア伯爵閣下、並びに奥様がサロンでお待ちです。本日のカレン様は、一段と……その、高揚感に満ちたお顔をされていますな」


カレンは、つい数時間前までクレーンゲームの筐体に張り付いていた「依存症」の顔を完璧に封印し、凛とした貴婦人の微笑みを浮かべた。

「ええ、ありがとう。……非常に希少な『戦利品』を手に入れたから、部屋へ運んでおいてちょうだい」


彼女の自室は、約束通り重厚なウォルナット材の家具で統一され、窓からは手入れの行き届いた私有庭園が一望できた。カレンは鞄を開け、中から二つの影を取り出す。


「……ここが、アストレア伯爵邸。解剖学的に見て、非常に贅沢な空間ですね。骨格の休養には最適だ」

ミニ・カレンは最高級のシルクのクッションの上に飛び降り、弾力を検分するように足踏みした。

「悪くないわ。これなら私の『完璧な肌』も維持できそうです」


一方で、全裸のミニ・たけしは、豪華なマントルピースの上に居座り、天井の彫刻を忌々しそうに睨んでいた。

「ふん、無駄な装飾が多いな。この天使の彫刻、大胸筋の付き方が不自然だ。作者を呼んでこい、解剖学の基礎から叩き直してやる」


「うるさいわね、全裸のくせに偉そうに!」

カレンがミニ・たけしをティーカップで伏せて閉じ込めようとしたその時、扉がノックされた。


「お姉様、入ってもいいかしら?」


入ってきたのは、カレンの妹であり、王立魔法学院の才媛であるリリアだった。彼女は部屋に置かれた二つの「人形」を見て、そのあまりの精巧さに目を見張った。……というより、生き生きと動き回るミニ・カレンと、カップの中から「離せ! 大転子が圧迫される!」と暴れるミニ・たけしの姿に、驚愕のあまり持っていた魔導書を落とした。


「……な、何ですの、その生きているような人形は!? お姉様、ついに禁忌の自動人形オートマタに手を出されたのですか!?」


「違うわよリリア。これは……その、とある天才原型師の執念が産んだ、いわば芸術の結晶よ」

「芸術……? でも、あちらの男性の方は全裸ですわよ!? しかも、なんて破廉恥なほど筋肉の筋が細かく……」


リリアは頬を染めながらも、魔法学院の才媛としての好奇心を抑えきれず、まじまじとミニ・たけしを観察し始めた。


「いい、リリア。これはアストレア家の投資なの。この『店主』は、市場に出れば国が動くほどの価値があるわ(多分)。そしてこの『私』は……私の尊厳を守るためのパートナーよ」


窓の外では、夕暮れの訓練に励む騎士たちの掛け声が響いている。

「さあ、ミニ・カレン。約束のご馳走よ。そして、あの『逆三角形』の副団長を……最高の特等席(肩の上)で検分しましょうか」


「ええ、本体。アストレア家の名誉に賭けて、最短距離での観察ルートを確保なさい」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ