49.エロエルフとダークエルフのガチンコ対決!その1
先行はリュドミラから出てくれるらしかった。ステージの端からひょこっと目だけ出して観客席を窺う。男が多いのかなと思いきや、案外、老若男女ばらけているようだった。
ちょっとお年寄り多めかな。暇なんだろうな。
実際、なんの催しか分かってなくて集まってるんだろーな……。
「今からここで何が行われるのかしら?」
「なんでも美を競うコンテストですって」
「ミスコン……?」
みたいな感じのヒソヒソ話が聞こえる。
そこへ、カツーンとピンヒールの足音が響き渡った。それだけで人はシンと静まり返ってステージを見上げた。
男なんて目を見開いて、ゴクリと生唾を飲み込んでいる。
分かります。俺も初めてリュドミラ見た時にそうなっちゃったもん。
リュドミラは……全身、真っ赤なドレスを身にまとっていた。闇を切り取ったような漆黒の肌に、隠す意思があるのかと思ってしまうほど薄い、真っ赤な布地が張りついている。スカーフみたいに薄い布だ。
上半身は一枚布らしく、首の後ろから垂らされた生地が胸の上で一度、交差してわずかに乳の際どいところだけを覆って背中へ回っている。つまりこれはもう、ほぼ紐だ、紐。もちろん背中もがら空きだ。
張りのある美しいバストはブラジャーなんてなくても重力に逆らってバイインとそこに存在を主張していた。もしやこれが、秘術、重力操作なのだろうかッ!
そしてスカートは同じ赤い布が前後に一枚ずつ地面に届くほど長く垂れている。左右は腰までさらけ出していて、パンツまで丸見えだった。
って言うかパンツも赤いッ!?
ミュールって言うんだろうか。つま先と足首のところだけ細い革紐で留められている黒いピンヒールのサンダルが、高らかに足音を立てる。
リュドミラはツカツカとステージの中央まで歩いて行くと上半身を強調するように腰に手を当てて、ドヤッと胸を張った。
司会を務めている男が声高らかにリュドミラを紹介する。
「はいっ、と言うわけでエントリーナンバー1は我らがリュドミラ様です! 皆様、いかがでしょうかッ!」
エントリーナンバーもなにも、出場者は2人しかいないわけすけど。アンタも司会も審査員もこなさないといけないから大変だな。
分かっているのかいないのか、ワーッと観客たちが一斉に大きな拍手をする。
「いよっ、リュドミラ様ー!」
「今日もお美しい!」
ざわめきに交じって野太い歓声が聞こえてくる。どうやらリュドミラは固定ファンを持っているようだ。色んな意味で有名人なんだろーな。
敵もさるものだな。だてにこの街のトップに君臨(自称)しているわけではない。自分の魅力を最大限に引き出す方法を分かっていらっしゃる。
だが、所詮小娘。まだまだ甘いな。
人は童貞のまま30歳を超えると魔法使いになると言う。魔法使いどころか拗らせ過ぎて女になっちまった俺がオタク魂見せつけてやるよ!
「ほんとにその恰好でいいんですかー?」
さっきパシった男が隣で、俺の服装を危ぶむように顔を曇らせている。これでリュドミラに負けると思ってんなら、黙ってりゃいいのに。お人好しか!
1人、俺の世話を押しつけられてるくらいだから仲間内でも下っ端ーなんだろうな。
俺の頼んだ物も真剣に探して来てくれたみたいだし、悪い奴じゃないんだと思う。
モデルよろしくステージ上で色々なポーズを決めたリュドミラが、心持ち端に寄る。司会の男が俺たちが立っている上手にチラリと視線を向ける。
「そして今回、無謀にも我らがリュドミラ様に挑戦するのは、最近、このリビエールの街にやって来たばかりの冒険者のティアだー! ティアさん、どーぞ!」
司会の男がこちらに手を差し向けて俺を促してくる。観客席からは、またもやワーッとどよめきと拍手。ぜーったい意味分かってない。
俺はステージに足を踏み出しがてら、未だ心配そうな顔を見せているパシリくんを振り返った。
「まぁ、どうなるか、ちょっくらそこで見ててよ」
ニヤッと口の端を上げて、下手くそなウィンクを送っておく。奴はそれだけでポーッと頬を上気させた。
だってこいつも一応、審査員なんだろ?
チョロいぜ。
ではでは、いってきまーすッ!




