39.エロエルフとオーク、パーティを組む!
動きを止めたスライムの身体は白濁したかと思うと、しばくするとドロっと溶け始めた。
地面に水たまりのような黒い染みができる。
その上にポツンと、小指の先ほどもない小さな青い石が残っていた。
これがスライムの核だ。
ちっちゃな結晶を拾い上げる。これがないと討伐の証明にならないので、昨日はスライム分の報酬はもらえなかった。勿体ないことをした。
スライムには寿命がないと言われているらしい。
ほとんどはレベル1の最弱モンスターだが、運良く長く生き延びた個体の核は大きくなり、魔法を使ってくるようになるとかなんとか。
このくらいの一番ちっちゃい核で小銅貨5枚也。薬草よりちょっとだけ高い。どちらも内職レベルだ。
イチイチ護符を使ってたら赤字もいいとこだけどな。痛いの怖いから仕方がない。
もう少しレベルアップするまでの辛抱だ。
「タロちゃん、スライムを倒したらこういう石が残るからね。それを拾ってね?」
見ているだけじゃつまらないだろうと思って仕事を割り振ると、タローは真剣な顔でコクコクと頷いた。
巾着袋を渡して腰につけてやる。
それから手を繋いで森の中を探索する。
すぐに次のスライムが見つかったので、俺はタローを下がらせて護符を取り出そうとした。
けれどタローは指示には従わず、飛び上がってきたスライムをガッシリと腕の盾で受け止めた。
「マ、ママを……いじ、めるな……!」
ダメージは食らってないようだが、タローが攻撃されたのを見て、精霊さんたちがザワッと顔色を変える。
あれ? もしかして俺じゃなくて、同行者が攻撃されてもいけるんですかね?
『ウィンドカッター!』
即座に魔法を繰り出すと、精霊さんたちは張り切って風の刃をスライムへとぶつけてくれた。
すぐにスライムがキュウと動きを止める。
「タローちゃん、大丈夫っ!?」
俺は慌ててタローへと駆け寄った。盾に当たっただけなので、攻撃はタローまでは通らなかったようだ。
それでも衝撃で骨が折れたりしてないか、傷を負っていないか、肩や腕を触って念入りに調べる。
「だ、だいじょ、ぶ……」
どこを触っても痛がったりはしないので怪我はしてないようだ。
俺はホーッと深く息を吐き出した。
「ちゃんと後ろで見てなさいって言ったのに、ダメでしょっ!」
俺に叱られて、タローはウルウルと目に涙を溜めた。
「でも、おで……ママのやぐに、だちたがった……!」
な、なんていい子なんだ!
そんな子を叱ってしまうなんて俺は……!
慌ててギュムッと抱きしめる。
「ママこそごめんね! タローちゃんはすっごくいい子だね! いいよ、いいよ、一緒に戦おうね!」
俺はコロッと前言撤回して、タローを戦わせることにした。
だって無理でしょ。こんなけなげな姿、見せられて断れる奴なんていないでしょ。
よくよく考えたら、戦闘を覚えさせれば一人の時にも危なくないしな!
それになにより、タローが前衛してくれたら護符がいらないんじゃない?
いや、違う、これはケチってるわけじゃなくてな! パーティとしての役割分担がだな……!
信じてくれ。1枚1000円の護符なんて大量に使えるほど、俺の金は有り余ってんだ!
決して、決して、タローを利用しようなんて! そんなつもりはないのだ!!
「ママ……?」
一人顔面ショーを繰り広げる俺を、怪訝そうにタローが見上げてくる。
「だっ、大丈夫だよっ」
他に誰に見られているわけでもないのに俺はタローに引きつった笑顔を向けた。




