女だったら高身長!
大変長らくお待たせしました!
ちょっとずつではありますが、スランプ脱出して来ております!
「シューー……」
2mを超える草の上から顔を出したのは体長は7m、太さは1mをゆうに超えると思われる巨大な大蛇。その体は金色の鱗に覆われ、ギラリと此方を睨みつけてくる真紅の双眼。そして、長く鋭い牙。
「……な、なんなんだよ!あいつは!?」
チロチロと長い下を出しながら鎌首を持ち上げるその風貌と威圧感はまさに主。この草原を支配する王とでも呼ぶべきだろう。
「(解体したシュターラの血の匂いに誘われて出てきたのか?)」
「あ、あいつは…」
「昴、何か知ってるのか?」
「う、うん。多分、あいつはシュターラの希少種だと思う」
「………はあ!?あいつもシュターラなのか!!?」
さっき、解体したシュターラの姿を思い浮かべてみるが似ている所は希少種と呼ばれた大蛇がシュターラと同じ蛇だという事のみな気がする。
「正式名称はコアシュターラ。コアは希少種を示す総称だよ」
「へー、詳しいなー」
此方を品定めするようにじっと動かないコアシュターラを警戒しつつ、気になっている事を聞いてみる。
「そもそも、希少種って何?」
「希少種っていうのは…」
昴曰く、希少種とはこの世界に実在する魔物全てが成り得る存在なのだという。例えば、さっきまで相手をしていたシュターラ。通常の種は体長1,5m、太さは30cm。体を覆う鱗は緑がかった銀、目は鈍く光る黄色。鋭い牙からは毒液が滴り落ちているといった姿なのだが、希少種とは比べ物にならない大きさである。この通常種が長い年月を経て、進化した種が希少種と呼ばれる個体なのだそうだ。そして……
「あの額にある宝石。見える?」
スッと指を差した場所には金色の鱗に混じって光る深緑の石が見えた。
「ああ、見えるよ。あの緑のやつだろ?」
「うん。あの石がコア、守護石の元となる物」
「………なっ!?」
驚きのあまり、固まる私を尻目に昴は説明を続ける。
「希少種を示すコアは核。その他には王冠って意味もあるんだけどね。僕たち、召喚師は希少種からコアを取り出し、浄化することで守護石として扱うことができるようになるんだ」
「…じゃあ、僕の守護石も元は希少種のコア?」
「うん。もちろん、僕のもね」
「へぇ〜…」
私は思わず、腰に結びつけられた守護石を指でつつく。今はグラキシアを宿し、色を変えた守護石。コレも召喚師の手に渡る前はあのコアシュターラと同じように長い年月を生きた希少種だったのだろうか?
「守護石は召喚師になくてはならない物だけど、その材料となるコアを宿した希少種はその名の通り、とても数が少ない存在だ」
ギルドがコア目当てに討伐隊を送り出しては無駄足を踏んで帰ってくるくらいにね?と昴が悪戯っぽく言う。
「…ふーん。じゃあ、そのコアを手に入れたらどうなる?」
「そりゃもう!高値で売りさばくもよし。新たな召喚獣を宿すもよしだよ!」
昴と顔を見合わせ、ニヤリと笑う。
さぞかし、悪人顔だっただろうが気にしない。
「だったら、手に入れるしかないだろ?」
「だよね、同感!」
私は導鈴を昴は針をそれぞれ構え、コアシュターラと対峙する。
「シュー……」
どうやら、コアシュターラの方も品定めを終えたらしい。私達を見下ろしていた二つの深紅は真っ直ぐとサラサの作り出した水球の中で眠るグラキシアに向けられていたからだ。
「(シアを狙っているのか!?)」
マズイな。グラキシアの治療はまだ終わってない。何とかして、グラキシアから狙いを逸らさなくちゃ!
「昴!何とかならないか?」
「任せて! それっと!」
昴がコアシュターラの気を引くため、針を放つ。しかし、放たれた針は金色に輝く鱗に阻まれ、甲高い音と共に弾かれてしまった。
「…弾かれてんじゃん!」
針が命中したはずのコアシュターラも此方に気がついていない。
「いやー、流石は希少種。硬いね!」
「いやいやいや、笑ってる場合じゃないよ!?」
昴の針が効かないとなると残された手段は私が直接、斬り込むかグラキシアを守っているサラサの手を借りるかしか手はない。
「流石の私でも、あの草を超えて斬りつけるのは無理かなー…」
「彩君、ちっちゃいもんね!」
「コレでも165はあるんだよ!ほっとけ、ちくしょー!」
165だって、女子の中では背が高い方なのだが少年のふりをしている今の私の基準は男子なので仕方がない。けれど、ムカつくことはムカつくのだ。
「で?どうすんだよ」
「んー、コレを使ってみるよ」
そういって、昴が取り出したのは長さ15cm程の鉄製の棒だった。割り箸のように角ばってはいるものの、それがなんなのかさっぱりわからない。
「何これ?」
「棒手裏剣(笑」
「………手裏剣!?」
手裏剣といえば、折り紙で作るあのイメージが強い。しかし、その種類は豊富で沢山の形があることも知っている。
「昴がギルドに武器を預けてた理由はコレか」
「まあねー。流石に手裏剣となると殺傷能力が上がるからさ」
「なるほど」
「さてさて、本気でやってみようか!」
昴がポーチから複数の棒手裏剣を取り出し、構える。
「シューー…」
いつまで経っても進行方向から退かない私達に痺れを切らしたのか、コアシュターラが地を這う為に鎌首を下げ、動き出す。
「今だ!」
針と同じ要領で放たれた棒手裏剣は動き出したシュターラの目を貫いた。
「シュッーー!!?」
コアシュターラは声にならない叫びを上げ、のたうち回る。
「えっ、ちょ!?」
「わわわっ!?」
胴をくねらせ、長い草をなぎ倒しながら暴れるコアシュターラの尻尾が私達の方にも飛んできたのだ。瞬時に後ろへ避けたが、痛みにもがくコアシュターラの尻尾は不規則な動きをしながら動き続ける。
「うわっ!?」
草に足を取られ、尻餅をついてしまう。尻尾を避ける事に夢中で足元にまで注意を向けられなかったからだ。
「彩君!!!」
「やばっ!?」