24 新しい関係
通りには普段見かけない屋台が所狭しとひしめき合っていて、私たち四人はまず腹ごしらえをすることにした。
「お姉さま! たこ焼きと焼きそばはマストですわね!」
「ええもちろん! 唐揚げも食べるでしょう?」
「はい!」
手分けして素早く商品を買い込む私たち姉妹を、キセノがあっけにとられたように見ている。
「キセノは何も食べないの?」
「あ、いや、食べるけどさ。何ていうか、その……二人とも、よく食べるんだな。少し驚いたよ」
「こいつら姉妹は割と大食いだぞ。うちのパーティでも料理ばっかり食ってるしな」
タンタルが会話に割り込んできた。しっかりと自分用のチョコバナナをゲットしている。この人、けっこう甘党らしいのよね。
このお祭りで出る屋台の食べ物は、極東の島国ヤーパンに迷い込んだ異世界人が広めたと言われている。普段あまり口にできない美味しい食べ物がたくさんあるので、毎年兄やテルルと協力していろんな物を食べてきたのだ。
「キセノも何か買っておいでよ。あの辺の石段で待ってるからさ」
「あ、ああ、分かった」
キセノはなぜか一瞬チラッとタンタルを見たが、何も言わず屋台に向かった。
私はテルルとタンタルとともに、石段に座ってキセノを待つ。
「……お姉さま。わたくしとしたことが、イチゴあめを買ってくるのを忘れてしまいましたわ。すぐに戻りますので、少しだけ待っていてください」
「えっ? イチゴあめはデザートだから後で買いに行けば……」
「タンタル様! くれぐれも姉をよろしくお願いしますね?」
「へっ? あ、ああ、分かった……」
テルルが行ってしまうと、急に会話が無くなった。いつもならタンタルが私に嫌味を言ってくるのに、なぜか今はじっと下を向いている。
……気まずいなぁ。タンタルっていつもうるさいイメージがあるから、無言になられるとどうしていいのか分からない。
「……セレン」
「何ですか?」
やっと何かしら言う気になったのか。嫌味はイラつくけど、何も言われないよりはマシだ。さあこいと私は身構えた。
「その……わ、私は、お前のことを嫌いだなんて言ったことは、ない……」
「は?」
何の話かと思ったけど、そういえば前にもこの人、同じようなこと言ってたっけ。
変にこだわってるなぁ。別に私はどっちでもいいんだけど。
「はいはい。“嫌い”ではなくて、“冴えなくて可愛くない女”なんでしょ? 何度も言われてるから分かってますって」
「そっ、それも……違う……」
「ん?」
いや、それも違うって違わないでしょうよ。毎回毎回タンタル自身が言ってきたことだ。
この人、急に私を星夜祭に誘ってきたりして挙動不審になっているけど、何か悩みでもあるんだろうか。あ、あれか。婚約者作りが上手くいってないせいか。
「その……これまで私がお前に言った言葉は……全て、嘘、なんだ」
「……嘘? って、いやいや! いくら何でも騙されませんよ。何年言われ続けてきたと思ってるんですか。さすがに無理がありますよ」
「!! あ……わ、たし……は……」
私の言葉に、ショックを受けたような、今にも泣き出しそうなタンタルを見て、こっちが罪悪感に駆られてしまった。
これじゃ私がイジメっ子みたいじゃないの。あぁ~もうっ!
「何か悩みがあるんでしょう? 別に、今までのこと必死で謝らなくたって、助けて欲しいのなら助けてあげます!! ……幼馴染ですからね」
「……セレン……」
タンタルが叱られた子供のような顔で私を見てくる。
なんか調子狂うなぁ……。
「私を……許してくれるのか……?」
「まぁ……もういいですよ。何だか最近のタンタル様、情緒不安定に見えて気の毒ですし」
「………」
タンタルがふぅ~っと大きなため息をついた。すっかり肩の力が抜けたみたいだ。
「……セレン。今まで悪かった。何年もずっとお前を傷つけたこと……本当にすまなかった」
タンタルが深く頭を下げる。その姿は真剣で、彼が本心から言っている言葉だと分かった。
「……謝罪を受け入れます。タンタル様」
私たちは初めて微笑みを交わし、握手をした。




