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馬鹿王子の幸せな結婚

王都の治療院に、王子がやってきたわ。


「クリス、頼む。向こうから、婚約破棄をするように仕向けてくれないか?」


馬鹿王子、まだ、ヨシコ様との婚約破棄を諦めていないのね。


「また、婚約を結ぼう」


パシッ!


手を振り払った。


「私、婚約者がいる身です。治療でないのなら、帰って下さいませ」


「冷たいな」


しつこい。それに、わだかまりがある。

「馬鹿は予測出来ない」と言うし。ヨシコ様は、この男の馬鹿さを理解して、愛しているのだろうか?


「おい、馬鹿と聞こえたぞ」


「とにかく、困ります。それに、王家が、この生活が出来るのは、殿下がヨシコ様の婚約者だからです。次の王統は、ヨシコ様の血筋と貴族会議で決まりましたわ」


「だから、クリスが生活を支えてくれ!」


うわ。クズだ。頭にきた。


黒い感情がわき上がった。


「それなら、一つだけ。手はあります」


「何だ。教えてくれ!」


「ヨシコ様の前に出て、裸で、『うっぽこひょっとこスンスンスン、あひょ~ん、ぴき~ん』と詠唱して下さい。そしたら、さすがのヨシコ様の愛は冷めるでしょう」


「なるほど、さすが、クリスだ!しかし、裸で王宮をうろついたら、不審に思われるぞ」


「そしたら、着るのを忘れたと言えば、大丈夫でしょう」

「さすが、クリス」





☆王宮



「ヨシコ!見てくれ!」


「・・・うむ。ダーリン、どうしただか?裸だが?」

「着るのを忘れた!」


「そうか。大変だな」


ヒィ、本当に、馬鹿王子やりやがったわ。

私は、止めようと近づいたけど、近づけない。殿方の裸は、結婚してから旦那様のを見るものよ。


「うっぽこひょっとこスンスンスン、あひょ~ん、ぴき~ん」


そして、私が適当に言った詠唱を叫び出しましたわ。

うわ。何で、暗記しているのよ。


ヨシコ様は、


「おい、何をする!」


馬鹿王子をお姫様抱っこして、王宮に入ったわ。

不味いわ。婚前交渉、聖女の資格を剥奪されるわ。


「ジーニアス様、来て、大変だわ」

「何だって」


もし、いたしている最中に、踏み込んだら、大変だわ。

でも、男手は必要。



「フフフフ、この手があったか。ヨシコが発情して、婚前交渉すれば、聖女の資格を剥奪される」

「ええ、そしたら、元通りね」



名誉王と名誉王妃が、ささやいている。


「そうはさせないわ」


メイドを集めて、王子の部屋に集まったわ。

声が聞こえる。



「王子、上手いだ」

「そうか、こうか」

「んだ。んだ」


もう、始まっている!


「おう、証拠の現場を抑えるぞ!」


うわ。名誉王もゲスだわ。息子の性交渉を見るなんて、


カチャ!


ドアを開けられたわ。


そしたら、


「何をやっているか?」


積み木をしていたわ。

王子は毛布を掛けられている。


「王子の好きなように積み上げるだ。上手いだ」

「うん・・・・」



☆王子回想


『見て、積み木でお城を作ったよ。母上―』

『爺、母上は?』

『社交です。おや、王子、積み木が乱雑ですね。片付けましょう』

『これ、僕が積んだんだ・・・お城だよ』


・・・・


『アハハハ、初めて、馬に乗れたよ。父上は?』

『陛下は、その、会議です』



・・・


『王子は、立派でなければなりません』

『ウゼー、お前、クビ』


『殿下、成績が悪いです。これじゃ、国王になれません』

『うっせー』



・・・皆、俺に変われと言う。

でも、ヨシコは言う。このままでいいんだ。

何か、心地良い。




「さあ、王子は、疲れているだ。ネンネするだ」

「うん」


「あ~、殿下は良い子、ネンネ~しな♩」


・・・ああ、心地良い。


「ヨシコ、すまない。次は服を着る」

「えらいだー!」


そうか、ヨシコは褒めてくれるのだ。


久しぶりに深い眠りについた。





☆数ヶ月後


カラ~ン、カラ~ン。


「ナターシャが宣言します。セドリックと聖女王ヨシコの婚姻の証人になります。さあ、誓いのキッスを・・」


「ダーリン!」

「さあ、殿下、お立ち台を用意しました」

「おう、爺、有難う」

「殿下が、お礼を言えるようになったとは!成長されましたな」


チュ♩


正直、微妙な空気だったわ。

しかし、私は、大声で言ったの。


【ヨシコ様、おめでとうございます!】


ザワザワザワ~~~


ぽつり、ぽつりと、


「「「おめでとー」」」


の声が聞こえて来たわ。


私、言えたの。


ヨシコ様、おめでとうって、


最後までお読み頂き有難うございました。

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