43 変態
もうすぐ第1章終了です。
「ここは……」
重いまぶたを開けると、全体的にぼやけた世界が視界に広がる。
「起きたようね。折れてる骨とかは全部治しておいたけど痛いところとかあったら言ってね、ポーション持ってくるから」
俺はどうやらベットに寝かされているみたいだ。
えーと、ここは孤児院かな?
首を横に倒すと、背もたれのない椅子に座り壁に背を預けて座っている女性が居た。
見覚えのある淡いピンク色の髪の毛の美少女。
「ルシア達は大丈夫ですか?」
段々と状況を理解し始めあの後どうなったのか、ルシア達が無事なのかが頭に浮かび質問をする。
俺が今ベットに寝かされていてこの美少女の人が居るってことはルシア達も無事なんだろう。なんせミノタウロス三体を瞬殺する人だ森から連れて帰ってくることくらい簡単だろう。
なのでこれは一応の確認である。
「孤児院の子達は全員無事よ。
まぁ、召喚士の子は魔力が空っぽだったり、他の子もトラウマが出来ちゃったりしたけど命に関わることはないわよ。
強いて言うなら貴女が一番酷かったわよ?
全身の打撲に十本近い骨の骨折。もう少しくるのが遅かったら死んでいたわね」
「本当に助けていただいてありがとうございます。もう駄目かと思ってました」
「私も何の目的もなく助けに来たわけじゃないしいいわよ。そんなこと」
目的?
何かの目的のために俺たちを助けたってことか。
この街の領主に用があったのかな? あの場にテオドルも居たし。
他に考えられるとしたら俺が異世界から転移したとバレたかとかかな。
異世界から来たなんて誰にも言ってないしバレる要素はないと思うからやっぱりこの街の領主に用があったんだな。
「この街の領主に何か用事でもあったんですか?」
俺はそう言いながら自分にかけられていた布団を払いのけベットに座り向き直る。
「違うわ。用があったのは貴方よ」
「え?」
俺に用がある?
まさか本当に異世界から転移して来たことがバレたのか?
異世界から来た人間なら色んな理由で用がありそうだし、この世界に来ている他のクラスメイト達がチートを使って派手に暴れていたりしていて、それが何処かのお偉いさんにそういう人間が異世界から来た人間であるって情報が入ったなら、俺を探しに来たのもうなづける。
明らかにランクに不釣り合いな魔物倒してるし、冒険者始めてからたった一ヶ月でダンジョン攻略したし、自分で言うのもなんだけど今の俺超美少女だし。
「そうでしたか。俺がいせかーー」
「だって、私の好みにドストライクなんだもん!」
椅子から立ち上がり、腕を大きく広げて迫ってくる。
「え?」
今度はさっきの え? より困惑が強かった。
この人何言ってんの?
ガシッ 両手を背中に回して抱きついてくる。
「あ〜良い抱き心地! それに可愛い!
長い銀髪、平均より低めの身長、膨らみかけで小さな胸、12.3歳という歳でしかも美少女!
もうほんとうに私の好みのど真ん中よ。あぁ〜可愛いわ〜」
抱きついた後は髪を触り俺の顔を見て幸せそうな顔で「あぁ〜」とか言って震えていらっしゃる。
俺はこういう時に言う言葉を知っている。
すなわち
「へ、変態だ!」
「違うわ! 心外よ、誰でも貴女みたいな美少女で可愛い身体を見ればこうなるわよ。
はぁ、はぁ」
少し息が荒いようでいらっしゃる。
「つ、次はそのささやかな、膨らみかけの胸を触らせてもらえるかしら? はぁ、はぁ」
「近づくな、変態!」
まだ疲労が残る身体で座った状態から蹴りをかます。丁度お腹あたりにヒットし数歩後ろに下がるがよろよろとした足取りで、しかもなんともいやらしい手つきで迫ってくる。
「ちょっと、ちょっとだけで良いから。ね?」
ね? じゃねぇよ。
アウトだよ。ちょっとでも人に触らすもんじゃねぇから。
「エレキショット」
なんだろうこの人。
俺は今きっと汚物を見るような目でこの人を見ていることだろう。
そう思いながら雷魔法を放つ。ここは室内だが致し方ない。
身体は疲労しているが魔法を使うのはまた別らしくあまり身体に負担はないようだ。
俺は通常のエレキショットを縮小してよりスピードを出せるようにして放つ。威力はあまりなく人を数秒程度動けなくする魔法だ。
距離二メートル。
「ふふふっ、あまいわね。散りなさい」
その言葉の瞬間俺の作ったエレキショットは魔力の粒子もなって霧散した。
「な!?」
「残念ね。魔術師としての力量に差があればこんなこともできるのよ?」
自慢げに言って「さぁ、おしまいだ」とばかりにジリジリ距離を詰めてくる。
そして、まさに俺が捕まりそうなったその時。
「お姉ちゃん! 目が覚めたんだね!」
扉がバンッと開かれルシアが元気よく登場した。
だが、次の瞬間にはルシアの眼差しが軽蔑の色に変わる。
「なんで貴方がお姉ちゃんの部屋にいるんですか?」
ハイライトが消えた瞳でアイスショットをぶっ放す。
いつものルシアならこんなことはしない。ましてやここは孤児院の中自分とレックス達の家である。いったいルシアとこの人との間に何が会ったのだろうか?
ルシアのアイスショットは同じように魔力の粒子となって霧散する。
「あ! そうだ、貴方達そこで抱き合ってこっち向いてくれない!?
まるで姉妹みたいで、可愛いわ! 百合万歳!」
あぁ、そういうことか。
ルシアも俺が意識を失っている間に苦労したんだな。
分かる。分かるよルシア。
軽蔑の眼差しになった理由がだいたい想像できたよ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。ルシアもあのあと大丈夫だった?」
俺はこの変態を放っておくことにしてルシアと扉を閉めて部屋の外に出る。
「うん、一応あの変態に助けてもらった……」
「そ、そうなんだ。助けてもらったのは良いけどあの変態、誰なの?」
「あの人は世界が誇る現最強のSSランク。世界にたったの五人しかいないうちの一人。
ユリシア・メルヴィ。世界最強の魔法使いと謳われている人らしい。
信じられないけど……」
SSランク!?
いつか会ってみたいと思ってたけどこんなに早く会えるなんて……いや会わない方が良かったかな、あんな変態?




