40 ミノタウロス ②
ミノタウロスの蹴りで骨が数本折れているだろうが、痛みに耐えて立ち上がる。
あいつの攻撃とまともに打ち合ってたら勝てる気がしねぇな。
どうする?
そう考えているうちにミノタウロスが走ってくる。
その巨体に似合わぬ速度で俺の目の前まで迫り横薙ぎに斧を振るう。
俺は背後に飛ぶことで回避する。
そのまま着地し、今度は全力でミノタウロスの方へ向かって大地を蹴る。
斧が俺に当たらず振り抜いた状態から次の攻撃に移る僅かな瞬間を狙って剣を振りかざす。
しかし、ミノタウロスは俺の思っていたよりもずいぶん早く次の攻撃を仕掛けて来た。
斧を振り抜いて止まると思っていたが、そのまま一回転遠心力を乗せた回し蹴りが左から迫る。
「クソっ、そんなのありかよッ」
紙一重のところで地面に転がり避けることに成功するが、すぐに一回転を終えたミノタウロスが地面に転がっている俺に向けて斧を振り下ろす。
やばいッ、このまま防いでも身体に大きな損傷を負う。
最悪、背骨のような大事な骨が折れてお陀仏だ。
立ち上がろうとするのと斧が迫るのは同時。
立ち上がりながら剣で斧をガードするのではなく、滑らせるようにして受け流す。
力の大部分が使われずに地面に斧が食い込む力になってしまったため、地面が割れながらも半分以上が食い込んでいる。
「やっと、こっちの番だな。覚悟しろよ!」
地面に刺さった斧を踏みつけて人の二倍ほどもあるミノタウロスと同じくらいの高さまで跳躍する。
人間であれば急所である首めがけて一閃する。
だが、俺の剣は想像よりも遥かに小さな傷しか与えることしかできなかった。
身体の大きさからすれば、ちょっとした切り傷程度だろう。流石に、重要な血管が流れている首なら少しの損傷でも致命傷になるのではないかと考えたが随分と硬い身体をお持ちらしい。
切り口から血が流れているがあと何回同じような傷をつければ倒れてもらえるか……
俺が着地すると丁度斧を地面から引き抜き飛びかかってくる。
あぁ、くそっ。
こんな化け物どうやって倒せば良いんだよ!?
皮膚は硬すぎて剣がまともに通らない。魔法は何故か効かない。挙げ句の果てに身体強化を全力で試行しても超ギリギリだ。
「ウォォォォォォォォォオオオオオ!!」
ミノタウロスから距離を取ろうと走ると、雄叫びをあげながら追いかけてくる。
少し走ったところで振り返ってすれ違いざまに剣を一太刀。
先程の首よりは深く数を与えることが出来たがまだまだこんなものではダメらしい。
「はぁ……魔法が効いてくれればな……」
ん?
自分でそう言ってあることに気づいた。
確かにミノタウロスに魔法で攻撃をしようとすればそのことごとくが失敗した。
でも、それはミノタウロスの近くで魔法が霧散しただけであり近くまではしっかりと魔法として機能していた。
それならば、もしかするとミノタウロスから離れた位置で発動する魔法なら使えるかも知れない。
俺はすぐさま相手に直接当たらなくてもいい魔法を脳裏で探す。
うん、そんな魔法ほとんどないや。
まぁ、でもないわけではない。
俺はミノタウロスに向き直り魔法を発動する。
「煌炎!」
上空に輝く炎の球体が出現。
その大きさはほんの握り拳位の大きさだが、球体から発せられる光は尋常ではない。
ほとんど一瞬で消えてしまうがそれで十分なほど強烈な光を発する。
しかし、目を覆われたりしたら素人でも簡単に防げるので二回目はいくら魔物といえど当たらないだろう。
炎魔法と雷魔法の合成魔法。
正直、敵に対して目くらましなんて使うことないと思っていたからすっかり存在を忘れてたよ。
まるで太陽を間近で見せられているような光に思わずミノタウロスが目を手で覆う。
だが、既に見てしまったのなら数秒は何も見えないはずだ。
ちなみにこの魔法は術者には効果はない。
俺は身体強化された身体で早く強く剣を振るう。
何回も何回も出来るだけ多く出来るだけ深い傷を与えられるように。
目を押さえて苦しむミノタウロスが斧を無造作に振るうが流石にそんなものに当たったりはしない。
数秒後、皮膚は傷だらけで血だらけ。
それでも死なずに立っているミノタウロスだが戦況は火を見るより明らかだ。




