39 ミノタウロス ①
おい、おい、冗談キツイぞ。
俺が戦った事がある一番強かった魔物がBランクだったのにSランク?
背後を振り返れば ルシア達はミノタウロスを見て震えている。言葉をあげることも怖いのか何も喋らない。
右端の方ではテオドルが腰を抜かしている。その近くで意識を失っているレティシアがいた。
背後にはルシア達がいる。
逃げる選択は出来ない。
恐怖なのか足が震えている中ミノタウロスに向き直る。
「こいよ、化け物!」
人の言葉を理解しているはずはないが、俺の言葉と同時にミノタウロスが動く。
人の体の二倍ほどの大きさにもかかわらず圧倒的な速さで接近して斧を振りかぶる。
咄嗟に振り下ろされた斧を防ごうと剣を上にあげてガードする。
「クソっ」
全力で身体強化を使っているが片手では抑えきれず両手で端と端を持ち耐える。
剣の強度があったお陰で真っ二つにはならなかったが足元がへこんでいる。
俺は斧を打ち返し姿勢を低くしてミノタウロスの股の間を抜ける。
そのまま二十メートル程走って振り返る。
今まで魔物戦って来た中で剣で倒しにくい魔物は魔法で倒して来た。
剣よりも明らかに威力があったし、身体強化より属性魔法の方が簡単だった。だから、このミノタウロスと戦うなら剣じゃなく魔法の方がいい。
出来るだけあんなのに距離を詰められたくないし、遠距離の方が多少は安心だ。
「ライトニング」
俺の得意技になりつつある雷魔法を放つ。
Bランクのキメラの腹に穴を開けて瞬殺するくらい威力のある魔法。いくらSランクといえど傷を負わせることくらいできるだろう。
放たれた稲妻はミノタウロスの胸元に真っ直ぐ吸い込まれるように進む。
速すぎて反応できないのか?
そして、稲妻はミノタウロスの胸を貫くーー事は無かった。
ミノタウロスに当たる寸前でまるで吹き飛ばされる霧のように霧散した。
「は!? どうゆう事だよ? 雷が効かない?」
何故魔法が消えたのか理解できず、今度は違う属性の二発目を放つ。
「極炎雨」
敵の真上に超高温の炎球を作り出し、それを真下に落とすだけ。
俺の言葉と同時に魔法が発動する。
今まで使っていた魔法は自分の位置から敵に飛ばす魔法が多かったため、魔法を作り出す場所を自分から離れた位置に作るのが難しくいつも微妙にずれてしまう。
魔力をミノタウロスの上に集まるようにしっかりとコントロールしていくつもの炎球を作り出す。
よしっ! 成功だ。
魔力で作られた超高温の炎球がミノタウロスに向けて一気に降り注ぐ。
ミノタウロスに動く気配はない。
炎球はしっかりとミノタウロスに向かって勢いをつけて落下し、霧散した。
「ーーッ」
どうなってんだ?
魔法が効かない、のか?
もしそうだとしたらまずい。
剣のみで勝てる気がしない。さっきの攻撃でも受け止めるだけで精一杯なのに。
ミノタウロスは俺が魔法が効かない焦っているのが面白いのか笑っている。
魔物に戦闘本能はあっても意思なんて無いはずなのにまるで俺が焦るのを見て楽しんでいるかのようだ。
剣を構える。
もう、仕方ない。こうするしかない。
ミノタウロスが動く。
明らかに先程の攻撃より早い。
地を沈没させて踏み込み、一瞬で俺の目の前に移動。斧を振り下ろす。
速すぎて剣をかざす事が出来るだけだ。
「うっ、くっそぉ」
ミノタウロスの斧を受け止めた俺を中心に地面が割れる。
それと同時に足でなっては行けない音がする。
激しい痛みがある中で斧の一撃を耐えきると間入れずに蹴りが左から飛んでくる。
「やばっ!?」
もろに蹴りを左の肋あたりにくらいそのまま何十メートルを木にぶつかり飛んで行く。
「ガハッ、……いってぇ……」
絶対肋骨何本か折れたぞ、おい!
このままじゃ俺、死ぬな。
早くこの攻撃速度に対応できるようにならないと。




