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30 19階層

 

  ーー10日後ーー


  「お姉ちゃん、起きて!」


  「頼むから、あとちょっとだけ……」


  そこにはいつもと同じ光景があった。

 

  ルシアに布団を剥がされ起きるというのが日課になってしまった。


  「もう、朝食できてるって早く行こう」


  「分かった、今いくよ」


  ルシアの声に応え、一緒に階段を降りて行く。

  今日の朝食は、ミニフランスパンに少量の肉だ。


  「今日は、何回層まで進むの?」


  「ん、そうだなぁ、今日はボス部屋のある20階層まで降りようかな」

 

  最初にダンジョンに入った日から五日間はホワイトウルフでぼろ儲けしていたのだが、徐々に数があまり狩れなくなったのと、買取価格が大幅に落ちたのでやめて、最近はダンジョンを攻略することにしている。


  ダンジョンの5階層では、あまりホワイトウルフが出なくなってしまった。

  いや、俺たちに近づいてこなくなっただけか。恐らく、魔物にも知性があるので乱獲し過ぎてアレに近づいたら危険だとでも思ったのだろう。


  買取価格が下がった原因は簡単で俺たちが取りすぎたらしい。そんなにいっぱいは買取できないとのこと。


  まぁ、それでもお金は十分に溜まったのでいいんだが。


  「ボス部屋かぁ、なにがいるの?」


  「さぁ、俺も行ったことないからわからないな」


  ルシアの疑問は俺も持っている疑問だか、出来れば強くない魔物がいい。

  あと、宝箱には高価なものが入っていてほしい。


  ちなみに10階層でのボスはコブリンキング。

  三メートルはあるからだな巨大な剣を振り回して攻撃してくる魔物だったが、案外簡単に勝つことができた。

  大雑把な攻撃を回避するのは簡単だったし、素材を取ることが目的ではなく倒すことが目的なので稲妻で頭を吹き飛ばすことができた。



  「そうなんだ、じゃあ楽しみだねお姉ちゃん!」


  あぁ、ここ10日間でなんてたくましくなったんだろう。前はウサギを殺すのすら躊躇っていたのに、ダンジョンが楽しみだなんて……成長してくれるのはいいけどなんか複雑だ。



  ◇



  4階層



  「ルシア、後ろ」


  ルシアがコボルドと戦っているのを見ながら、後ろから攻撃をしようとしているコボルドを見つけて声を飛ばす。

 

  「氷貫」


  ルシアの声とともに背後から攻撃をしようとしたコボルドは突如として地面から現れた一本の氷に貫かれる。

  ルシアが使ったのは氷魔法。

  お金に余裕ができたのでスクロールを買いに行ったのだ。少しでも強くなれるようにと思ったが強くなりすぎてしまったらしい。


  ルシアの魔力は通常の魔法使いよりも三倍ほどあるそうで、しかも魔法を使いはじめたことによって増えはじめたとか。

  そのおかげか、魔力を気にせずに魔法を連続して使用することができるし、身体強化も長い時間発動していられる。

  まぁ、使いすぎて魔力切れを起こすことが何度かあったが。

 


  ルシアは前方から襲ってくるコボルドも身体強化を使い、一撃とはいかないものの余裕を持って倒している。

  そして、数分で五体のコボルドを倒すことに成功した。


 

  ◇


  19階層

 

  階段を降りると今までと変わらず、土で作られた通路が広がっていた。


  だが、この階層で出現する魔物は今までの階層とは違う魔物が出るらしい。

  その証拠に今階段を降りて歩いていると、十数メートル先に今までに見たことの無い魔物の姿が見える。


  身体は魚の鱗のようなもので覆われていて、形は人型、尻尾があり耳や鼻などの出っ張りがなく奇妙なモンスターだがそれ以上に奇妙なのはその手だった。

  手というより五本の鋭い指といったほうが正確かもしれない。


  その魔物には手のひらがなく、手がある位置からは五本の長い指が生えている。

  その指一本一本は、鋭く簡単にいろんなものを切断できそうに見える。


  『グルゥゥ……」


  魔物が一瞬唸り声をあげた後動いた。

  否、消えた。


  そして、


  「チッ、危ねぇな」


  「え? うぁぁあ」

  次の瞬間には俺の目の前に一瞬で移動して、先ほどまで脱力していた腕を大きく振りかざして来る。

  ギリギリのところでルシアを抱えて後ろに飛ぶことで回避する。


  だが、飛んで着地しようとした場所にはすでに先回りして爪の魔物が先回りをしている。

 

  「稲妻(ライトニング)


  俺の放った稲妻が爪の魔物目指して飛んでいくが、それを消えて回避されてしまう。


  「あぁ、アランと同じやつか」


  瞬間移動でもしているのかと思ったが、空中に移動してこないのでその類ではないだろう。

  それに、瞬間移動とか普通ならもっと高位の存在が使う魔法だしこんな攻略されたダンジョンの魔物が使えるわけない。お約束から考えればもう今は使えないか、勇者あたりが使えるんじゃないだろうか。


  まぁ、そんなわけで瞬間移動ではない。

  おそらくアランと同じ縮地だ。

  明らかにアランより長い距離を縮めているようだが、からくりがわかってしまえば大したことはない。


  「よっと、あ、ルシア、そのままでいいぞ」


  「え? このままでいいの……?」


  ルシアが俺に抱きかかえている状態から降りようとするのを止めると、少し恥ずかしそうに不満そうに聞いてくる。

  急にルシアを狙われたら危ないので一緒にいた方が安全だ。

  断じてやましい思いはない。幼女趣味はないのだ。



  俺は着地した地面から一歩も動かず、放つ。


  「サンダーレーザー」


  つい最近覚えた技で威力は稲妻と変わらないが、直線で発射され、簡単な方向転換なら出来ることが利点だ。

  俺が回転すれば周りにいる魔物は一掃することができる。


  この魔物は幸い空に移動することはできない。縮地は距離を縮めるだけであってそれは恐らく地面の距離だけだ。

  それに、この空間は直線の通路逃げ場はない。


  俺の右手から電気が収束されたレーザーが発射される。

 


  爪の魔物に届くまではそう時間はかからない。

  ちなみにこのレーザーは魔力を込めれば込めただけ長いレーザーが打ち出せる。限度はあるが。


  打ち出されたレーザーに反応して縮地で逃げようとするが、縮めた距離を歩こうと一歩生み出すよりも早くレーザーが到達した。

  魔物は人間よりも圧倒的に身体能力が高いが、この魔物くらいの強さなら俺の全力の身体強化明らかにに及ばない。


  その程度でこのレーザーを避けることができるはずもなく……俺が右手を横に振ると、爪の魔物は腹から右を切り裂かせる。

  左半分はくっついているので辛うじて上下がお別れしていないものの、勝敗は明らかだった。

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