03 服屋に行ったけど……
歩き始めてから20分ほど街が見えてきた。街の入り口に兵士らしき人が二人立っている。
俺、身分証明書とか持ってないけど大丈夫かな?そもそもこの世界に身分証なんてあるのか?
考えているうちに町の入り口に到着。
「身分を証明できるものはあるか?」
「持ってないな」
「そうか、じゃあ犯罪歴が無いか確認するからこっちに来てもらっても良いか?」
兵士に連れられて、石造りの建物に連れていかれた。俺の前に、石碑?のようなものが置かれた。
「この上に手を乗せてくれるか?」
「あぁ、でもどうやって犯罪歴なんてわかるんだ?」
「犯罪を犯して、登録されている者ならこの石碑に魔力を吸われると分かるんだよ。でも、重罪の者しか登録されていないがな」
魔力で誰かわかるなんて便利だなぁ。地球でいう指紋と同じ役割ってことかな。
石碑に手を置くと、魔力を少し吸われたが何も起こらなかった。当然だ、犯罪なんて犯してないよ。本当だよ?
「これで良いか?」
「ああ、問題ない。あとは通行料で銅貨五枚だ」
ポケットに手を入れて、アイテムボックスから取り出したのをバレないように銀貨一枚を手渡す。つりで銅貨五枚を受け取る。
「もう行って良いぞ。ようこそ、バルカロスへ。
にしても嬢ちゃん。身分証は持っておいた方がこれからも楽だぞ?」
嬢ちゃんじゃねぇよ。
「どこかで作ってもらえるのか?」
「冒険者ギルドとか商人ギルドとかなら金はいらねぇ。でも冒険者や商人にならないならやめておいた方がいいな。金がかかってもいいなら、身分証を発行してもらえるところがある」
「ありがとう、じゃあ冒険者ギルドに行ってみるよ」
兵士にギルドの場所を聞き、街に入る。見た感じは中世くらいだろう。ほとんどが石造りの建物だ。いろんな屋台も出てて美味しそう。
少し歩いていると、何故か注目されていることに気がついた。不思議そうに、珍しそうに眺めている。どこにも変なところは……あった。
「この服か……」
そうだよな。ただでさえ女の子なのに男子制服着てたら可笑しいよね。
このまま目立つのも嫌なので近くの服屋に立ち寄った。変な字の看板だな。
「いらっしゃいませ〜」
店に入ると、一人の女の子が出てきた。15.6歳くらいかな。
「適当に服を選んでもらいたいんですが、あとこの服の買取っててきます?」
「買取はできますよ。先に買取からしましょうか」
少女が俺の脱いだ服をじっくりと隅々までみている。ちなみに、俺は今その辺にあったミニワンピースを着せられています。案外楽なので癖になり……やっぱりなんでもないです。
「これ、結構いいものなんじゃないですか?金貨3〜4枚で買取できますよ」
その後、制服の買取は金貨4枚ということになった。
「買う服の予算はどのくらいですか?」
予算?そもそも相場がわかんないよ。さっきの制服の買い取りをそのまま使うか。金貨四枚だな。
「金貨四枚で、大丈夫ですか?」
「金貨4枚って、相当な量の服が買えますよ」
「うん、それでいいよ」
少女は驚いたあと、俺の体を上から下まで視線を落としてニヤリと笑って店の奥に消えて行く。
俺はまだこの時、この店に頼んで後悔することなど想像もしていなかった。
「持ってきましたぁ。ハァハァハァ」
少しして息を切らしながら、大量の服を抱えて持ってきた。なんか、ワンピースとか、妙に可愛い水色の下着とかが見えてるんですけど。
「あの、そんなに可愛いのじゃなくても……」
俺は服なんて着れればいい程度でオシャレなんてどうでもいいんだが。
「ダメですよ。私が選ぶからには超可愛くしてあげますから!ささっ、こちらに!」
そう言って、試着室へと誘導される。この時思った。あ、これ無茶苦茶長く遊ばれるやつだ。
少女は次から次へと服を持ってきて、着せて、「うーん」と唸ってまた他の服を持ってきて……
そして、俺はこの後5.6時間ほど着せ替え人形と化した。