24 盗賊
「街に着いたら何をするんだステラ?」
今俺に馴れ馴れしく喋りかけてきたのは、同じ馬車に乗っているレイズという冒険者。
ポーションを買ったおかげでお金がほとんど無かったので現在は冒険者ギルドが出してくれる馬車に乗っているわけだ。
料金は一人大銀貨一枚という安さ。普通なら、護衛をつけたりしないといけないので金がかかるがこの馬車には冒険者しか乗っていない。
それに商人のように金になるものが乗っているわけでもないので盗賊に襲われることはないだろう。危険といえば魔物くらいなわけだがそれくらいなら自分たちで対処できる。
だから格安で乗っていけるのだ。
「ダンジョンに行こうと思ってます。たくさん魔物が出てお金になると聞いたので」
「姉妹でダンジョンに行くのか。仲良いなぁ」
「いや、違……」
なんか否定するのがめんどくさくなってきたな。もういっそこのまま姉妹ということにしといてやろう。特に不都合はないし。
「まぁ、確かにお金にはなるけど気をつけてね。ダンジョンで一攫千金とか言って返ってこない人たくさんいるから」
俺の言葉に、レイズのパーティーメンバーであるセファが俺に忠告してくれる。歳は二十を少し超えたくらいだろうか。ショートカットな髪で見た目は元気な女子高生に見える。
「はい、気をつけます」
「口先だけじゃダメだからな。命あってこそ価値がある金だ。金稼ぎのために命を落とすんじゃ無いぞ」
本当に人を気遣える人だなぁと思う。まだあってから数時間しか経っていないのにこんなに心配してもらえるとは。
もしかして、俺の見た目が幼く見えるからなのかな。
「分かってます。ところで、レイズさん達は何をするんですか?」
あぁ、何だろうこの口調。自分で言っていてなんだが気持ち悪いと思う。
出来るだけ男っぽさが出ないように心がけて話しているのだが、本当に気持ち悪い。
冒険者ギルドでは無駄に口調のせいで驚かれたので少し心がけてみたのだがいつまで続くだろうか。いや、きっと明日には戻っていることだろう。
「俺たちも、大体一緒かな。次の街を拠点に金稼ぎとランク上げをしようと思ってるんだ。
でも、昇格試験が受かるかどうか分からないんだけどね」
一瞬顔が受験前の受験生の様な顔になる。昇格試験ってそんなに難しいのかな?
「レイズさん達は今何ランクなんですか?」
「あぁ、俺たちは今Dランク。あと二回依頼を達成したら昇格試験を受けられるんだ」
ちょっと自慢げな顔で話してくる。俺たちはFランクだから二つも上なのか。
「お姉ちゃん、あれ」
今まで黙って俺たちの話を聞いていたルシアが唐突に口を開く。
馬車の進行方向を見つめながら指差して。
この馬車には屋根がなく本当に箱みたいな馬車なので前がよく見える。
そして、前を見ると少し先に道を塞ぐようにして数人の人影が見える。
そしてーー
「止まれ!」
そう言われて大人しく馬車を引いている人が停止させる。
人数は八人。全員が剣や槍などで武装している。
あれ、おかしいな? アドルフが「冒険者しか乗ってない馬車を襲ってくるなんてことあるわけねぇーよ」と言っていたんだけどこれって絶対、盗賊だよね?
「俺たちは盗賊だ! 女と武器を全て置いていけ!」
リーダーらしき男が声を張り上げる。女の後にとってつけたような武器を付け加えて。
フッ、俺が可愛すぎるのか。あぁ、なんか悲しくなってきたぞ。
まだこっちにきてから数日なのにどうして二回も絡まれなきゃいけないんだ。
「チッ、断る!」
レイズがそう言って馬車から飛び降りて、腰にあった剣を抜く。
それと同時にセファも、腕をクロスさせて腰の両方につけてあった短剣を引き抜いた。
二人とも相手が八人だと言うのに即座に戦う判断をして、油断なく武器を構える。流石Dランクだ。
一応俺とルシアも馬車から降りておく。
「お姉ちゃん、大丈夫なの?」
「うん、大丈夫だよ」
状況を理解しているのか心配そうに聞いてくるルシアにそう言って頭を撫でる。あ、可愛い。
何があっても大丈夫。だって勝てなそうだったらルシアを連れて全力で逃げるから。
「おい野郎ども、男は殺せ。女もポーションで傷くらい治る。多少傷ついてもいいから生きたまま捕らえろ!」
人数差的に勝ったと思い、喜びと言う名の雄叫びをあげながら向かってくる。
「ステラ、ルシア逃げて!」
セファがそう言うが、もう距離は10メートルほどしか無い。逃げ切るには無理があるだろう。
俺たちより数メートル前にいたレイズ達に、四人の男が攻撃を仕掛ける。
ニ対四。技術は盗賊たちの方が少し下の様だが、数で押されている。捌きながら、攻撃に移ろうとするが少しずつ傷を受けていく。
そして、俺たちの方にも残りの四人が向かってくる。側から見れば明らかに俺たちの方が絶体絶命だ。
「おい、抵抗しないなら痛い目は見なくて済むぜ? ギァハハハッ」
あぁ、その笑い方もその視線も本当に気持ち悪い。
ルシアが、俺の後ろに隠れる。
「火炎弾」
炎弾よりも遥かに強力な火炎の玉が一番前にいた男に着弾。そのまま吹き飛ばされ道の端で木に叩きつけられてぐったりと倒れる。
死んではいないと思うけど、なんの防御もなしにもろに受けたから相当ダメージを食らっているだろう。
「クソッ、こいつ魔術師か! 早く意識を奪え厄介だ!」
リーダーの男が剣を抜く。
「氷散弾」
剣を構えて走りながら、魔法を発動。俺に向かって無数の尖った氷が差し迫る。
「放電」
俺を中心に電撃が縦横無尽に駆け巡る。ルシアに当たらないように気をつけながら、差し迫る無数の氷を砕く。ボロボロになりながら落ちる氷。
少し驚きながらもリーダーの男が剣で、部下の男が槍で攻撃を仕掛ける。
それを、身体強化を使って打ち返す。一瞬ひるんだ隙に槍の男の懐に潜り込む。
身体が小さいのでこういう時は便利だ。
そのまま、剣で胸を穿つ。あばらの骨がバキバキッと折れる音を立てて体を貫く。
そのまま引き抜き、リーダーの男が振り下ろした剣を受け止める。
鍔迫り合いの状況から一歩前に出て力任せに振り抜いて弾き飛ばす。男は足で地面を擦りながら着地し、もう一度とばかりに俺に向かって走る。
上段からの全力で振り下ろされた剣。だが、身体強化を使っている俺からすればそれは遅い。剣が俺に届く前に一閃。
男の両腕と首がずれる。そのまま落下し、身体は後ろに倒れる。
「さてと、向こうは大丈夫かな?」
レイズ達の方を見れば一人倒れてあと三人になっている。押されているのは盗賊の方みたいなので大丈夫だろう。
確認を終えた俺はラスト一人の盗賊に向き直る。刀を静かに構え、異様な雰囲気を放つ男に。




