第16話
1
「早速なんだけど、来週の土曜日空いてる?その日にデートしたいんだけど」
受付の仕事を終え、図書室を出るときに優太君が言った。
「来週の土曜日?」
と私は聞いた。
「そう。明日とか明後日とかじゃなくて来週の土曜日が良いんだ。
どうかな?」
「別にいいけど、デートって何するの?」
「まあ、ご飯でも食べながら話し相手になってくれればいいよ」
「ふうん」
と私は言った。
少しだけ優太君とランチを取っている自分を想像する。
正直、あまり楽しそうではなかった。
それだったらお兄ちゃんとご飯に行きたいなあ、と思いかけて、
私はぶんぶんと頭を横に振った。
「?」
そんな私を優太君が不思議そうに眺めている。
「面白そうだね。いいよ。デートしよう」
と私は言った。
優太君がほっとしたような顔をする。
「うん。じゃあ、来週の土曜よろしくね」
ちょうど教室の前に着いて、優太君が手をひらひらさせながら、
自分の席の方へ歩いていった。
私もうなづいてから、自分の席の方へ向かった。
心の中で、よし、やってやるぞ、と思った。
お兄ちゃんのことを好きでいるのが辛くなってきたから
優太君と付き合い始めたのだ。
お兄ちゃんのことはなるべく忘れて、
優太君とのデートをたくさん楽しもう、と私は思った。
2
そして土曜日、待ち合わせ場所の公園へ入ると、
私は優太君が立っている時計塔のそばまで駆け足で近づいていった。
「ごめん。もしかして結構待った?」
と聞く。
先に来ていた優太君はどこか呆けた様子で、
「いや、気にしなくていいよ」
と言った。
「今日は朝から、目的もなく外をぶらぶらしてたんだ。
それで早くここに着いたってだけだから」
優太君の話を聞いて
「ふーん」
と私は言った。
「優太君って歩くのが趣味なの?」
「いや、違うよ。普段はこんなことやらない」
「‥‥‥ん?それじゃ今日だけたまたま散歩したくなったってこと?」
何かしら違和感を感じて、私は聞いた。
もしかして、優太君は私に気を遣わせないために
嘘をついてるじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、彼はうなじのあたりを搔きながら、
「今日、姉ちゃんと彼氏が式場探しをしてるらしくてさ。
なんか落ち着かなかったんだ」
と言った。
そこまで聞いて、私はやっと納得した。
優太君が散歩していた理由も、
わざわざ日にちを指定して、私とデートしようとした理由も。
「なるほどね」
と私が言うと、
「うん」
と彼はうなづいた。
「じゃあ、とりあえず駅前に行こうか」
と言って優太君が私の手を握ってきた。
若干嫌な気持ちになったけれど、
それでも私はぎゅっと優太君の手を握り返した。
今日は優太君に本当に恋をするつもりでデートしよう、と思った。
なんとなく、それは無理なことではないような気がした。
それで本当にお兄ちゃんのことを忘れられたら大成功だ。
3
駅前に着くと、優太君はイタリアンのお店へ連れてってくれた。
カランカランと音を立てながら、手でドアを開ける。
お店はスカスカで、入るとすぐにウェイターが現れて席へ案内された。
席に着くと、
私はミートソーススパゲッティを、
優太君はカルボナーラを注文した。
「いい雰囲気のお店だね」
料理が来るまでの待ち時間に私は言った。
「そう?ならよかった。
実はここ、よく姉ちゃんと食べにくるお店なんだよね」
優太君は特に意味もなく窓の向こうの家電量販店を見つめながら言った。
「お姉さんと、今でも2人で出かけたりするってこと?」
「うん。そうだよ。涼風さんはお兄さんと出かけたりする?」
「‥‥‥しないよ。昔は出かけてたけど、今は全然」
「そっか。やっぱうちって結構変なのかな」
自虐しているようで、その実優太君はちょっと嬉しそうだった。
お姉さんのこと、本当に好きなんだなあと伝わってくる。
それなのに、お姉さんは今頃彼氏さんと式場探しをしているのかと思うと、
優太君がかわいそうに思えた。
「今日だけ、私がお姉さんを演じてあげようか?」
と私は聞いた。
言ってから、これはなかなかいい提案だなと思った。
優太君は優太君で気が紛れるだろうし、
私は私で優太君との距離を縮められる。
距離を縮めたらちょっぴりは優太君のことが好きになるかもしれない。
私の提案に優太君は驚いた顔をして、
「え!?いいの?」
と言った。
「うん。いいよ」
と私は笑顔でうなづく。
「それじゃ、お願い。‥‥‥あ、うちの姉ちゃんの特徴を説明するね。
そうした方が演じやすいと思うし」
それから私は優太君からお姉さんがどんな人なのかを細かく聞かされた。
4
「‥‥‥いつも穏やかで、優しいんだけど、
でもちょっと抜けてるところがあるから
俺が逆にお世話してあげないと駄目な人なんだ。
口癖みたいにえへへ~って笑うんだけど、
それがすごい好きで‥‥‥。
だから、演じるときはぜひその笑い方でお願い」
「了解」
スパゲッティを食べながら私は言った。
優太君がかれこれ10分近くお姉さんについて熱弁しているうちに
私たちが頼んだ料理が届いていたのだ。
私は一度、優太君に言われたことを頭の中で整理しつつ、
実物のお姉さんを思い浮かべた。
うん、多分いけるだろう、と思いつつ私はにへらと笑顔を作った。
「えへへ、優太、カルボナーラおいしい?」
とお姉さんの真似をしつつ優太君に聞く。
優太君は私の言葉を聞いた瞬間、フォークを手から落とした。
「めっちゃ似てる。すげー」
と優太君は感嘆の声を漏らした。
そのオーバーなリアクションに苦笑した。
「そんな似てた?」
「うん。めっちゃ俺の姉ちゃんの雰囲気出てた。
しばらくその感じでお願いしていい?」
「わかった」
私はこほん、と咳ばらいをする。
そして、もう一度お姉さんになりきって
「えへへ~」
と笑った。
優太君も私をお姉さんと思い込むことにしたようで、
こちらに慈愛に満ちた笑顔を向けてくる。
そして
「パスタ、おいしいね。姉ちゃん」
と言った。
5
それから私はお姉さんを演じ続けながら優太君と昼食をとった。
優太君は終始ニコニコで、
その笑顔を向けられていると、
まるで私が本当に愛されているかのような錯覚に陥った。
優太君はお兄ちゃんよりもずっとイケメンだし、
性格だってかなり良いんじゃないかと思う。
学校ではすごくモテているんだってまつりも言っていた。
そんな人に、疑似的であるにしても好意を向けられるというのは、
かなり恵まれたことのはずだよなあ、と私は思った。
‥‥‥悪くない。
お兄ちゃん以外の人からでも、こうやって好意を向けられるのは
嬉しいものだ。‥‥‥うん。
そう思いながら、
私はミートソーススパゲッティの最後の一口をぱくっと食べた。
完食して、ふう、と息を吐く。
思った以上に量が多かったのか、胃のあたりが少し気持ち悪くなった。
6
会計を済ませてレストランから出ると、
私と優太君はその後なんとなくデパートを歩き、
なんとなく水族館に入り、
なんとなく時間を潰した。
優太君の要望もあって、
その間も私はお姉さんを演じていた。
「えへへ。クラゲ、すっごい綺麗だったね。優太」
水族館を出て、駅前の大通りを歩きながら私は言った。
「そうだね。姉ちゃん」
優太君が体を寄せてきて、こつんと肩に肩をぶつけてくる。
この数時間でわかったことだけど、
優太君は手を繋いだり、こうやってちょっと肩をぶつけてきたり等、
体でのコミュニケーションを結構な頻度でしてくる人だった。
さも当たり前のことのようにやってくるので、
違和感を感じているこっちがおかしいんじゃないかという
気持ちになってくる。
そんなことを考えていると、
「おーい。姉ちゃん。俺の話聞いてた?」
と言って手を振られた。
「え?何?」
聞き逃していた私は焦りながら言った。
「あ、やっぱり聞いてなかったのか。
ぼーっとしてどうしたんだよー。このこの~」
と言いながら優太君が私の髪をわしゃわしゃする。
う、また触られた。
胃がぎゅっと締め付けられるのを感じる。
昼食を完食したあたりから感じていた気持ち悪さが
ぐっと存在感を増して、私はお腹をさすりたくなった。
「‥‥‥」
そんな私の異変を察知したのか、優太君が目をぱちくりさせた。
「えーっと、大丈夫?もしかして本当に嫌だった?」
急に我に返って、聞いてくる。
「い、嫌じゃないよ。ちょっとびっくりしただけ」
と私は笑顔を作って言った。
そうだ。私は別に嫌なわけじゃない。
ちょっと昼食のスパゲッティの量が多かったせいで
気持ち悪くなっているだけ。
そのはず。
だって、目の前にいるのは
文句のつけようがない心根の綺麗なイケメンなのだ。
そんな人に触れられて嬉しくないわけがない。
私の笑顔を見て、優太君は信じてくれたのか
「そう?ならいいんだけど。でも、もし嫌だったら言ってね。
俺結構常識がないところあるし、嫌だと思われてても
気づけないかもしれないから」
と言った。
「うん。わかった」
と私はうなづく。
そして、今日ずっと気になっていたことを聞くことにした。
「優太君ってお姉さんにもそんな感じなの?」
「そんな感じって?」
「手を繋いだり、髪わしゃわしゃしたりとか、
体に触れることにあんまりためらいがない気がして」
と私が言うと、優太君は「ああ」と言った。
「そうだね。姉ちゃんとも、こんな感じ」
そこまで言ってから、優太君は人差し指で頬を掻いた。
「‥‥‥ごめん。嘘。本当は今のでも結構抑えてる方なんだ」
「え?今のでも?」
私は思わず、声に出してしまう。
「うん。実際家では、日常的にハグとかキスをしてて。
あーでも、それが普通じゃないっていうのはわかってるつもりだよ。
だから、姉ちゃんに彼氏ができてからはなるべく我慢するようにしてるし。
けど、一応花火とは今付き合ってるわけだから、
少しくらい体に触れたっていいのかな、って思っちゃって。
‥‥‥その、別に大丈夫なんだよね?」
「う、うん‥‥‥。大丈夫」
と私は少し戸惑いながらもうなづいた。
ハグやキスを日常的に行うって、
それはもう兄妹の域を抜け出していないだろうか。
まあでも小さい頃に親とキスしたことがあるって人もいるみたいだし、
そういう行為の延長線って考えれば、なくもないのかな。
「花火は、お兄さんとどれぐらいスキンシップしてる?」
と今度は優太君が聞いてきた。
「うちは全然そういうのないよ。手を繋いだりもしないし、
当たり前だけど、ハグとかキスもしてない。
最近じゃ、私から話しかけないと会話すらないし」
こうやって話していると、
優太君の家との違いを再認識させられるようで、
私は少し自分が空しくなった。
「え?手を繋いだりもしないの?」
と優太君が驚いた様子で言う。
カルチャーショックを受けているようだ。
「‥‥‥うん。昔は私もお兄ちゃんと手を繋いだり、
ハグしたり、一緒に遊んだりしてたけどね」
と私が負け惜しみのように言うと、
優太君が首を傾げた。
「それなのに、今は全くスキンシップ取ったりしないの?
何があってそうなったの?」
「‥‥‥知らない。中学生になったくらいから
急にお兄ちゃんが私のこと触らなくなったの」
「それまでハグとかしてたのに、急に?」
「うん。そう」
「‥‥‥ふーん」
優太君が急に腕を組んで何か考え始めた。
しばらく考え込んだ後に口を開く。
「もしかしたらだけど、それって実はお兄さんも花火のこと‥‥‥」
彼はそこで急に話すのをやめた。
「何?どうしたの?」
と聞く。
「‥‥‥」
優太君は返事をしないまま、
私の後ろ側にある何かをじっと見つめていた。
何だろう、と思って振り返る。
そこには見覚えのある女性が立っていた。
誰だっただろうか、と私は記憶を掘りかえした。
そして、その人が優太君のお姉さんであることに気づいた。
彼女の隣には優しそうな男の人がいて、2人は手を繋いでいた。
ああ、あの人が彼氏さんか、と私は思った。
2人は楽しそうに会話していて、
すぐ近くに優太君がいることには気づいていないようだった。
そして最悪なことに、
次の瞬間二人は人目もはばからずにキスをしだした。
反射的に、私はちらっと優太君の方を見た。
優太君は無表情のまま、ただ想い人のキスシーンを眺めていた。
しばらく眺めてから、落ち込んだ顔でこちらを向く。
一体何を言われるのだろうと思っていると、
優太君は私の顎をクイっと上げて、
「ねえ、花火。キスしてもいい?」
と聞いてきた。
「‥‥‥え」
私は一瞬身を引きそうになって、ぐっとこらえた。
そして冷静に頭を回転させた。
‥‥‥これは、チャンスじゃないだろうか。
こんな非の打ちどころのない男子と
キスをする機会なんてそうそうないだろう。
ここで思い切ってキスしてしまえば、
いろいろ吹っ切れるような気がする。
案外楽しめるんじゃないだろうか。
キスから優太君のことを本当に好きになることだって全然あり得るような気がする。
そうだ。前に進むためにも、私はここでキスをするべきだ、と私は思った。
「いいよ。キスしよっか」
と答えると、
「‥‥‥うん」
と優太君が言った。
そのまま躊躇なく、こちらに顔を近づけてくる。
ああ、このままキスされるのか、と私は思った。
近づいてくる優太君の顔を見る。
綺麗な顔してるな、と素直に思った。
初めてのキスがこんな素敵な人とだなんて、私は幸せ者だ。
きっとこのキスもとても素晴らしい体験になるに違いない。
ああ、早くキスをしてしまいたい。
‥‥‥そう、思っているはずなのに。
「ゔっ‥‥‥」
気づいたら私は両手で口を押えていた。
大きな蛇が胃の中を這いずり回っているかのように、
お腹が気持ち悪かった。
どうしようもないほどの吐き気に襲われた私は
「ご、ごめん!私、ちょっとトイレに行ってくる」
と言って、走り出していた。
「え?」
キスするつもりでいた優太君が呆気に取られている。
けれど、説明してる暇なんてなくて、私はすぐに近くのコンビニに駆け込み、
トイレに入った。
便器に顔を近づける。
「おえぇ‥‥‥」
と声を出して、私は胃の中のものを吐き出した。
お昼に食べたスパゲッティは既に消化されていたみたいで、
出てくるのは胃液ばかりだった。
それなのに、私の体からはしばらく吐き気が消えず、
便器に顔を突っ込んだまま、口を開き続けた。
「うう。きもぢ悪い‥‥‥」
とつぶやいた。
喉のあたりを胃液が逆流する度に口の中は酸っぱくなって、
目からは涙がぼろぼろと溢れた。
朦朧とした頭で、やっぱり嫌だな、と私は思った。
男の人と手を繋ぐのも、肩をぶつけられるのも、
髪に触れられるのも、キスされるのも、みんな嫌だ。
お兄ちゃんがいい。
全部、お兄ちゃんがいい。
ねえ、お兄ちゃん。
なんで蛍さんのなの?
なんで私じゃないの?
私、これからどうしたらいいの?
「う、ううう‥‥‥」
私はしばらく胃液を吐き続けながら泣いた。
7
「だ、大丈夫?だいぶ顔がやつれてる気がするんだけど」
コンビニから出て優太君のところへ戻ると、
一番最初にそんなことを言われた。
「うん。大丈夫。気にしなくていいよ」
色んなことがどうでもよくなっていた私は
適当にそう答えた。
優太君はそんな私を見て、申し訳なさそうな顔をする。
「その、ごめんね。そんなにキスするのが嫌だとは思わなくて‥‥‥」
両手をぱちんと合わせて頭を下げてくる。
「別にいいよ。私も許可しちゃってたし」
と私は言った。
「とりあえず、今日はもう疲れちゃった。
このまま帰る感じでもいいかな」
「あ、ああ。そうだね。そうしよっか」
彼は私の顔色をうかがいながら、うんうんとうなづいた。
それから私たちは特に手も繋がずに駅を目指して歩き始めた。
優太君は私の考えていることをなんとなく察したのか、
歩いている途中に、
「今後はこういうデートみたいなのはなしにする?
俺は別にそれでもいいよ」
と言った。
話が早くて助かるな、と私は思った。
今日のこの一日で、
自分はこういうことをしててもうまく自分の気持ちをごまかせない人間なんだな、と
実感していたのだ。
「‥‥‥ただ、できればしばらくは彼氏彼女の関係のままではいたいなあと
思ってるんだけど」
「‥‥‥ん?なんで?」
このまま別れる方向に話が進んでいくと思っていた私は、
予想外の言葉に首を傾げた。
「俺としてはそっちの方が便利なんだよね」
「便利?」
「そう。多分花火にも言えることだと思うけど、いろんな人に言い寄られるときに
付き合ってる人がいるって言えると結構楽なんだよな。
まあ、ただそれだけなんだけどさ。だからしばらく付き合ったままではいようぜ」
「‥‥‥なんでもいいよ。私は」
と私は言った。
断って口論になるのも嫌だし、
どうせ付き合っていようがなかろうが私の絶望的な状況は何も変わらないのだ。
もうどうだっていい。
とりあえず今はふかふかなベッドで心ゆくまで眠りたい。
「‥‥‥そういえばさ、さっき、私に何か言いかけてたよね?」
ふと思い出して言った。
「え?」
「ほら、私のお兄ちゃんが私のことをどうたらこうたらって」
そこまで言うと、優太君も思い出したようで
「あー」と口を開いた。
彼は数秒こちらを見て、また視線を前に戻した。
「いや、やっぱり何でもないかな。俺も確信があるわけじゃないし。
変に期待させるようなこと言って、あとでがっかりさせちゃっても嫌だしね」
「?」
何を言っているのかよくわからなくて、首を傾げた。
すると優太君はこちらを向いてにこっと笑った。
「とりあえず、今度花火からお兄さんの体に触れてみたら?
案外喜ばれるかもよ」
「あはは。ないない。ただ引かれるだけだと思うよ」
そんな会話を交わしながら私たちは家路に着いたのだった。
8
それから結局私と優太君は別れることなく、
彼氏彼女のままでいた。
特にデートをすることもなかったし、
関わるときと言ったら図書室の受付をするときくらいだったけれど、
それでも、一応関係は切らなかった。
その理由は1つだけ。
優太君も言っていたが、誰かに告白をされたときの断り文句として
とても便利だったのだ。
みんな学校に慣れて退屈になり始めたのか、
6月に入ると、私は告白されることが急に増えた。
異性からの告白を断るとき、たいてい他に好きな人がいるのか、とか
何で俺じゃダメなんだ、とか質問されることが多くて、
そういう時に優太君と付き合っているから付き合えないのだと言うと、
みんな後腐れなく諦めてくれた。
だから、私としても付き合ったままでいるほうが好都合だったのだ。
そんな風にして、無為にだらだらと毎日を過ごし続けた先で、
その日はやってきた。




