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そこにAIはあるんか?信じられるAIは? 4(了)

「…っ!」


執務室から玉座の間まで向かう道すがら。

アネエルの肩を借りて歩いていたカペルコの耳が、唐突にピンと立った。


「どうかしましたか?カペルコさん」

「何か…何か聴こえてきます」

「え…?な、何?何が聴こえてくるの?」


カペルコの言葉に、アネエルは顔を青くした。

先程まで何度か聞こえてきた悲鳴は今はもうアネエルの耳には聞こえない。

それが良い兆候なのか、それとも不吉の前触れなのか。或いは事は既に起こってしまったのか。

ふらつくカペルコを支え、励ましながらも、その道中アネエルの内心には不安が渦巻いていた。


「………」


その足は止めず、カペルコが聴覚に意識を集中する。

モナとアネエルが固唾を飲んでその様子を見つめていたが、程無くしてカペルコが口を開いた。


「『ジキソウソウ』…。ジキソウソウと聴こえてきます」

「『ジキソウソウ』…?」

「…『ジキジキソウソウ』とも聴こえるような気がします」

「一体何のことなのかしら…?呪文や(まじな)いの類…?」

「…それ何かの空耳じゃないの?ボク聞き覚えあるんだけど」

「…っ!待ってください!」


アネエルの言葉を遮るようにカペルコが言葉を続けた。


「今、『ユーは埋葬』と聴こえた気がします…!」

「…!これは只事ではありません!誰かの命がルー語を嗜む人物の手によって奪われようとしています!」

「それYou are my soulじゃないの?A・RA・SHIじゃないの?」

「その通りですアネエルさん。今、玉座の間では魂を冒涜する嵐のような惨劇が起こっているに違いありません…!」

「ルー語を嗜むのはルー大柴ぐらいしかいないんじゃないの?」

「っ…!魔王様!」


切迫した表情を浮かべて走り出すモナとカペルコ。


それだいぶ(いにしえ)から擦られ続けてきたネタなんじゃないの?


アネエルはその言葉を飲み込んで二人の後を追った。





――――――――――





「ホホホ!暇潰しにはまあまあの余興じゃったわ」


玉座の間にタマモの笑い声が響く。

彼女の前には息を切らして膝を付き項垂(うなだ)れるアサヒの姿があった。


「だが残念じゃったのう〜?あの出来では妾は全く満足出来ぬわ」

「くそぉっ…!一体何がいけなかったんだ…!」

「選曲だろ。お前そもそもラップの所ちゃんと歌えてなかったぞ」

「お盆芸もなっとらんかったのう。汚らしい一物がチラチラ見えて非常に不愉快じゃったわ」

「………」

「なんなんだよその満足そうな表情は」

「さて、負け犬はとっとと退散せい」


興味を無くしたようにタマモかポンポンと手を叩くと、玉座の間の扉がひとりでに開かれる。

それどういう仕組み?

魔王がそう思っていると、アサヒがゆっくりと立ち上がり魔王に向かい合った。


「ロムレクス…」

「うん…出来ればあまりこっち向いてほしくないんだけど」

「こいつを受け取ってくれ」


アサヒから端末が魔王に手渡される。

全面がタッチパネル操作に対応した華美な装飾の無いシンプルなその端末は、心無しか()()()()いた。


「お前の汗でちょっとぬるぬるしてるんだけどこれ…えっこれ汗だよね?」

「開発部の予算5年分を費やした労力の結晶だ。くれぐれも扱いには気を付けてくれ」

「扱いに気を付けながらこれでチンコ隠せってか?矛盾が過ぎるだろ」

「頼んだぞロムレクス。俺の…開発部の夢を、お前に託した」


そう言い残し、アサヒは部屋を去る。

後には魔王とタマモ、そして脱ぎ散らかされた白衣とパンツが残されていた。


「くく、本当に見るに堪えない醜態を晒してくれたのうお主のツレは。今どんな気持ちじゃ?」

「最悪だよ。ハゲ扱いされるわチンコ見る羽目になるわ、こんな下らない話長々と書く事になるわ」

「また訳の分からん事を…しかし首尾良く行けば相応の見返りが待っておるのじゃぞ?さ、早く脱ぐが良い」

「いやあの…せめてとにかく明るい安村とかにしてくれん?今ブーメランパンツ持ってくるから」

「なんじゃ、この期に及んで躊躇っておるのか?情けないの〜。男なら威勢よくツルンと服を脱がんか」

「ツルンってなんだよワシの頭つるつるじゃないから。…いやそうじゃなくて…この部屋というか、自分の職場に幼女と全裸の男が並ぶ光景が非常によろしくないというか…」

「なお〜〜〜ん?」


魔王とタマモがやり取りしている中、フェレスが割って入るように鳴き声を上げる。

足元に擦り寄る小さな存在に気付いたタマモは、顔を破顔させてフェレスを抱き寄せた


「おおなんじゃなんじゃ、どうした?(めご)い猫じゃの〜」

「にゃん!」


ふみふみふみふみふみふみ


「おうおう乳など揉みおって。母御の母乳が恋しいのか?じゃがすまんのう…妾からはもう乳は出ないのじゃ。とうの昔に閉経してしまってな」

「妙な所でババア設定を活かすんじゃねえよ!どこぞのフィクション作品に閉経設定のヒロインがいるんだよ」

「にゃん…」


ふみふみふみ…


「………」


フェレスの手が静止した。

その大きく見開かれた瞳は何を捉えるでも無く、ただ虚無を見据えていた。

或いは彼自身が触れていると思っていたもの、それ自体が虚無そのものだったのかもしれない。


「にゃい…」

「ど、どうしたフェレス…宇宙猫みたいな顔になっとるぞ」

「はあまったく…雄というのは本当にしょうもない生き物じゃのう。仕方のない…」


タマモが、ふ、とため息をつく。



変化は程なくして起こった。

辺りの魔素が揺らいだかと思うとそれを吸収してタマモが光を帯びてゆき、時を早回しさせるようにその身体が成長していく。

目元の赤い隈取はよりはっきりと濃さを増し、少女らしい淡い唇はふっくらと厚みのあるものに。

鈴の髪飾りで二つにまとめられていた銀髪は、後ろに一つまとめられた腰まで届く長髪に。

全体的に華奢だった身体つきは、肉感的で包容力のある大人のそれに。

そして袴から覗かせていた3本の尾は、濡れたような深い光沢を放ち存在感を増した9本の尾に。


可憐な少女から妖艶な女性へと変貌を遂げたタマモは、その目をゆっくりと開けるとニタリと笑う。

艶めかしい仕草で組んだその腕の上には、巫女服からはちきれそうな二つのたわわな実りがズシリと乗っかっていた。


「さっきまでの姿は省エネモードでな。どうじゃ?猫よ、これなら文句あるまい?」

「ほ、ホログラムすげ〜…何でもありなんですけど…」

「にゃっほおおおおぉぉぉぉい!!!!」


ふみふみふみふみふみふみふみふみふみふみふみふみ


狂喜乱舞したフェレスがタマモの胸を揉みしだく。

それを見るタマモの目は愛玩動物を愛おしく思う物ではなく、1人の雄を我が物にした優越感に浸る女狐のそれだった。


『や…やめろぉ!やめてくれええぇぇぇ!』

「まだ扉の向こうに居たのかよ!いいからさっさと城内練り歩いてこい!」

「…さて、あとはお主なんじゃがのう?」


胸元のフェレスを優しく撫でながら、視線だけを向けてタマモが魔王に呼びかける。

そこに映る挑発的な色を、魔王は臆せずに真正面から受け止めた。


「この姿はお主の望み通りでもあろう?これでも尻込みする程お主はその心までもがハゲ上がっておるのか?」

「………」

「妾が認めればこの身体が触り放題好き放題なんじゃがの〜?本当に情けない雄じゃの〜?」

「ふっ…そこまで言われてはワシも黙ってはおれまい…!」


ピクリ、と反応したフェレスがタマモの膝からするりと逃げ出した。

魔王の瞳には静かに燃える揺るぎない意思が宿っている。

先ほどまでとは様相の異なる、肌を震わす程の覇気を放つ目の前の男にタマモは愉悦を口元に浮かべた。


「証明してみせよう。ワシはただの気持ち悪いハゲたおっさんなどではなく、スタイリッシュでフサフサな出来る魔王である事をな…!」


窓の外に一際大きい雷鳴が響く。

魔王は自らの魔王服に手をかけ、しがらみを振り払うよう勢いよく脱ぎ捨てた。





――――――――――





「着きました…!」


息も絶え絶えに、カペルコは視界の先にある扉を見て叫んだ。

そして『魔王城に続く回廊は長ければ長いほど雰囲気が出て良いでしょう』と提言したかつての自分を呪った。


「頑張ってくださいカペルコさん!あと少しです!」

「ねえあの、焦る気持ちは分かるんだけどさ。ほんの少しだけ落ち着かない?」


発破をかけるモナと息を切らすカペルコに対し、諭すようにアネエルが言う。

今、玉座の間で何が起こっているのかハッキリとは分からないが、何かろくでもない事が起こっている確かな予感がアネエルにはあった。


「――――!」


と、その時。


カペルコ達が向かう先、玉座の間の扉が開いた。


「なっ…!?」


思わず足を止める三人。

部屋の奥から、何者かがこちらに向かってくるのが見える。

薄がりの中から姿を現したその男は―――。





「…なんだお前らは」


三人を目にするなり、怪訝な表情を浮かべてそう言った。

全裸で。


「いっ…イヤアアァァァ!!なんで!?なんで服着てないんだよぉ!この変態!」


顔を真っ赤にして目を背け、悲鳴を上げるアネエル。

それに対しカペルコは扉の前に立ちはだがるアサヒを静かに睨み、モナは口元に手を当て眉を(ひそ)めてアサヒの下腹部を凝視していた。


「ふっ…男というのはな、時に何かを得る為に戦い、そして時に失うものなのさ」

「なんでそんな格好でカッコつけていられるの!?失ったものって何なの?羞恥心!?」

「アネエルさん、気持ちは分かりますが落ち着いて下さい」


視線を外さぬまま、険しい表情でモナは言った。


「サイズ的には平均やや下かと思われます。恥を感じる程ではありません」

「そういう風に言われるのが一番心に来るんだよな」

「何平然と会話してんの!?こいつのおっ…おち…おちんちんの大きさなんて知らないし、どうでもいいよ!」


その瞬間。

普段は糸目がちなモナがクワっと目を見開いてアネエルを振り向いた。


「アネエルさん。こいつの、の後の言葉もう一回言って頂けませんか?」

「カペちゃぁぁぁん!もうやだよぉこの人達!」

「………」


そんなやり取りを無視して、カペルコはアサヒの前に歩み出る。


「アサヒ博士…魔王様は今、どうされていますか?」

「くく…秘書くん。ロムレクスの事が随分心配なようだな?」


不気味な笑みを浮かべるアサヒに、カペルコの表情が一段と固くなる。


「俺はな、今回、あいつの欲望を解き放ちに来たのさ。自らの内に眠るどす黒い欲望をな。今頃己の欲望に身を委ね、飲み込まれている所だろう…」

「………!」

「魔族といえどあんな所業はおいそれと出来るもんじゃない。この俺でさえ口に出すのは憚られる…。奴の今の姿を見たが最後、もう以前のような関係には戻れないと思うぞ…?くくく…ふはははは!」

「…くっ!」


弾かれたように猛然と駆け出すカペルコ。

玉座の間に続く扉に向かう途中で、しかしアサヒが両手を広げて行く手を塞いだ。


「おいおいおい待て待て待て待て。今の話聞いてたか?部屋に入るなと遠回しに伝えたつもりだったんだが」

「私は決めたんです!常に魔王様の傍にあろうと…!どんなお姿の魔王様でも、私なりに精一杯お仕えしたいんです!」

「いやなるほど。悪いさっきの言い方は大分回りくどかったかもしれんが、欲望にもほら色々あるだろう?つまりはアイツ自身も今この部屋には誰も入れたくないと思っているはずなんだ」

「私が尽くす忠誠は、アサヒ博士が思うような薄っぺらなものではありません!」

「この部屋の中も君が思うような感じじゃないと思うんだけどな〜!」

「…埒が明きませんねっ…!」


カペルコとアサヒのやり取りを聞いていたモナが素早く動く。

常人には目で追えない速さでアサヒの後ろに回り込むと、脇の下から両腕を通して羽交い締めにした。


「少し大人しくしていてください!」

「ぐああああぁぁぁ痛い痛い痛い!なんだこの力!?お前本当に元聖職者か!?」

「いやあああぁぁぁ!!ちょっとモナ、そいつをこっちに向けないでよおぉ!!」

「さあカペルコさん!早く行って下さい!」

「や、やめろぉ!やめてくれええぇぇぇ!」

「…モナさん、ありがとうございます!」


暴れるアサヒの脇を駆け抜け、カペルコは扉の前に辿り着く。

扉に手をかけようとした時、しかし彼女は逡巡した。


この5年、魔王に仕えてきた彼女は魔王の色々な表情を見てきた。

局地的な戦闘で起きた被害に心を痛める魔王。

魔界のみならず人間界との平和をも語る魔王。

下らない事を言っては周りを呆れさせてきた魔王。

いつかカペルコにその手を差し伸べてくれた魔王。


そのどれもが、優しさに満ち溢れていた。

そして、その優しさにカペルコは導かれてきた。


自分は魔王の歩みを支える、杖だ。

何があっても、決して魔王の傍を離れない。


「魔王様!」


カペルコは扉を勢いよく開け放ち、室内に飛び込んだ。













「走りだ、せぃっ!!走りだ、せぃっ!!」

「ほほほほ!これは傑作じゃ!」


部屋の向こうには、股間を何かで隠しながら全裸で熱唱する魔王と見知らぬ妖狐の熟女がいた。


「明日を迎えに行こう〜!」

「………」

「どんなに小さな蕾でも〜!」

「………」

「一つだけのハピ、ネス〜!!」

「魔王様」

「イエ〜イエ〜イエ〜!」

「…魔王様」

「イエ〜イエ〜イエ〜!」

「………」

「イエ〜イエ〜イエ〜イエ〜イエ〜!!」






ジャーーーン……






「はあはあ………ど、どうでした?」

「ふむ、なかなか悪くなかったのう。思ったよりやるではないか」

「おお…!という事は、つまり!」

「それよりも誰か来ておるぞ?お主の客ではないのか?」

「えっ?」


魔王が振り返り、カペルコと目が合う。


「えっ」


玉座の間の時が止まった。






「………」

「………」

「………」

「………」

「カペちゃん!大丈夫だった!?えっ」


アネエルに続き、アサヒを羽交い締めにしたままモナが室内になだれ込んでくる。

室内には股間を何かで隠し顔だけをこちらに向ける全裸の魔王と、見知らぬ妖狐の熟女がいる。

その状況を確認すると、皆一様に動きを止めた。






「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「…魔王様」

「…は、はい…」

「いつから私がここに居たのか、聞かなくてよろしいのですか?」

「…え、えっと…いつからそこにいましたか…?」

「魔王様が明日を迎えに走り出した辺りからです」

「あ、あ〜、ついさっきって感じね…」

「何回かお声がけしたのですが」

「い、いや〜ちょっと…テンション上がってたっていうか。ハピネスを乗り越えた辺りでウイニングランに入ったっていうか…」

()()()()()()()()()()…?一体何を仰られているのですか?」

「すみませんこっちの話です。ごめんなさい。忘れてください」

「………」

「………」

「魔王様」

「はい」


カペルコが息を吸い、深く、深くため息をつく。

それがどういう心境のものなのか、魔王は正確に把握出来なかった。


「私は魔王様をお慕いしておりますし、何があろうとお仕えする気持ちでおりますが」

「はい」

「しかし流石にこの状況には困惑しております。どういう事か説明して頂けないでしょうか?」

「ふむ、それは妾が説明しよう」


魔王とカペルコのやり取りにタマモが口を挟み、全員がそちらに注目した。


「妾はそこな男二人の慰み者としてここに呼ばれた訳じゃがのう」

「いや言い方!言い方考えてちょっと!」

「急に子種を仕込みたいなどと言われて妾も困ってしまってのう…妾に種を付けるに値する雄かどうか少々テストしておった所なんじゃ」

「言ってません!本当に言ってませんよそんな事!勘弁してくださいよホント!」

「なんじゃ?根も葉も無いと申すか?」

「うぐっ…!」

「こ、こ、こ、子種…」


グルグルと目を回して顔を真っ赤にしたアネエルが、頭から煙を噴きながらへたり込んだ。

アネエルにはこの空間は少し刺激が強すぎるのだろう。

一度部屋から出してやった方が良いだろうか、とカペルコが動こうとした矢先、

室内に声が響いた。




――――さっきから黙って見ておれば――――


「……?」


――――儂の可愛い部下に一体何見せてくれとるんじゃぁぁぁ!!――――


「えっ?」



カッ



「ぐわああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



視界が一瞬のうちに白く染まる。

天の怒りと呼ぶに相応しい落雷が、激しい轟音と共に玉座の間に、そして魔王に直撃した。





――――――――――





「………」


ホワイトアウトした世界に徐々に輪郭が戻る。

激しい轟音と衝撃に揺さぶられ麻痺した知覚が回復してくると、カペルコは自身がへたり込んでいる事に気が付いた。


「は…」


混乱した頭のまま周囲を見やると部屋の奥の外壁は落雷で崩壊し、雨が室内に降り注いでいるのが見える。

そしてそこには、仰向けになり横たわる黒焦げの魔王の姿があった。


「………」

「か、カペちゃん…大丈夫?」


震える声でカペルコに声をかけるアネエル。


「…私は大丈夫です」

「ま、魔王様…魔王様は!?大丈夫!?」

「恐らく…大丈夫です」

「なっ…なんでそんな事が分かるの!?」

「あれを見てください」


カペルコは魔王を指差した。


「陰部を何かで隠しています。意識がある証拠です」


そこにはプスプスと音を立て魔王と同じように黒焦げになった何かの残骸があった。

気付けば、先程までいた謎の妖狐も見当たらない。


「気絶したふりをしているだけかと思われます」

「え、え~…いやでも、瀕死の中とっさに取った行動かも…」

「髪型がアフロヘアーになっています。ギャグテイストなので命に別状はありません」

「ええ…?そういう基準なの…?」

「…なんにせよ、魔王様は雷に打たれたぐらいで死にはしません」


カペルコはゆっくりと立ち上がると、服についた塵を払った。


「さあ、戻りましょう」

「ま、魔王様を介抱してあげなくて大丈夫なの?」

「魔王様に必要なのは治療ではありません」


魔王に誠心誠意仕え、傍にいる事を決心したカペルコ。

だがしかし、寄り添うとはただ近くにいればいいという事ではない。

主の意思を汲み、その最適解を考え、実行する事こそが肝要なのだ。


「今魔王様に必要なのは、独りの時間です」


とりあえず放っておこう。

カペルコはそう思った。


「さ、行きましょう」

「う、うん…モナ、行こう?」

「そうですねえ…ふふふ、今日は良いデータがたくさん取れました」

「モナ…」

「ナ…ナヴィ……俺の夢がぁ……開発部の技術の集大成がぁ……」

「さっさと来なさい」


うわ言を呟くアサヒの首根っこを引っ掴んでズルズルと引きずりながら、モナ達四人が退出する。

扉が閉まり、後には大の字になった魔王一人が残された。




「………」


冷たい雨が魔王の火照った身体を冷やす。

たった一人、一糸纏わぬ姿となって、魔王は今この状況に至るまでの経緯を反芻した。


どうしてこうなってしまったのだろう。

どうしてこんな話になってしまったのだろう。

自分はただ。

自分はただ女の子をお触りしたかっただけなのに。




………




理由は最低だけどここまでの仕打ちを受ける理由はやっぱり無くない?

そう自問していると、再び聞き覚えのある声が室内に響いた。




――――ロムレクスくん――――


「か…神様…?」


――――さっきの機械なんだけど――――


「…はあ」


――――もしよかったら後で儂にも貸してね――――


「………」






たった今アンタが壊したよ。

口に出さず、魔王は思考を放棄して瞳を閉ざした。


降りしきっていた雨は弱まり、曇天の隙間からオレンジ色の陽光が玉座の間に降り注ぐ。

砕けた液晶がその光を乱反射させ、魔王の股間の端末はキラキラと光り輝いていた。





【そこにAIはあるんか?信じられるAIは?】



山田じぇみ子を知ってるのにロリコンじゃないって整合性取れなくないか?

って本気で悩みながら書きました。

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