16-12
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昼過ぎに港へ着いた兄達は執事の事を尋ねようと、船着き場に向かった。そこで丁度、船を降りてくる執事に出会った。彼は酷く弱っている様子で、兄達の問いかけにもしどろもどろだ。
「どうした⁉何があった?」
「も、もうしわけ、ぅ、ありません……水を……」
船乗りが教えてくれた。
「その人、ヒドイ船酔いで、海の上で吐いてたんでさぁ」
銀髪の青年が魔法で水を出すと、手で受けて飲み始めた。やっと一息ついた執事が言う。
「恐れ入ります……たすかりました」
「それで?なにがあった?」
「それが、王太后様は酷く不機嫌なご様子で、わたくしめは肝を冷やした次第にございます。そのおかげで船酔いになってしまい、、、」
「妹は?変わった様子は無かったか?」
「お姿は認められましたが……なにせ王太后様に睨まれましたゆえ、ずっと頭を下げておりましたもので、詳細に申し上げる事はできませぬ」
青年は船乗りに言いった。
「島に渡りたい。すぐに船を出してくれ」
「そうは、言われましても……」
「どうした?」
「知らないんですかい?あの島は全て魔女様のものなんでさぁ。家畜や家や石ころ一つだって全てがです、ええ。ただ、あそこに住んでいる奴らは魔女様に特別な許可を与えられていましてね。出入りは自由なんですが、俺達なんかは滅多にあの島に近づいたりしないんですよ。一歩島に上がっただけで、魔女様には知られるっていう噂でして、ええ。魔女様が不機嫌だというのなら、悪い事は言いやせん。やめておいた方がいい」
青年は構わず出してくれと言ったが、船乗りは渋り首を縦に振らない。他の船乗りたちも集まり始め、誰か船を出してくれと言うも、皆同じような反応。そこへ進み出た者がいた。この港を取り仕切る元締めだ。胸に手を当てた彼は事情を説明しだした。
「実は、年の暮れに島の方で大きな爆発があったんです」
「なにっ⁉それで?島の者達は大丈夫だったのか?」
「ええ、被害などは出ていないと聞いています。それは良かったんですがね。おっかなくて誰も近寄りたがらないんでさぁ。その召使の方は王家の使いだからと渋々渡してあげた次第でして。誰も魔女様の怒りに触れたくはありませんので」
青年は懐から財布を取り出すと中身を確認することなく、元締めの胸に押し付けて言った。
「お金ならこれで十分なはずだ。すぐに船を出してくれ。身の安全はケステルの名にかけて、僕が保証する」
こうまで言われては断り切れず、今日のところは魔女様の機嫌が悪いからと、明朝改めて船を出してくれることになった。
◇◇◇
帰り支度の為に、午後の特訓は無くなりました。なので、朝日は服の洗濯をすることにしました。初めて自分達だけで洗濯をこなした時には随分と手間取りましたが、あれから試行錯誤と新たに得た浮遊の魔法を使い、朝日は一人で難なく洗濯をこなせるようになっていました。アイラの分もまとめて洗ってあげながら、ここに来てからの事を思い出していました。
最初は食事さえまともに出来ず、部屋はボロボロで寒さに震え、こんな所で住むなんて無理だと思っていましたが、今は自分達で改装したこの小屋に愛着も湧いています。
ここでの生活は朝日にとって、初めて経験する事ばかりでした。一から食材の確保と慣れない道具での料理。自分達でお風呂も何とかしましたし、この一週間は魔法の練習にも打ち込みました。小さなアパートで、ただ一日が過ぎていた頃とは違って充実した毎日でした。
グランダとのやり取りは、なんだかんだ言って楽しかった気もします。いつも皮肉を言ってきますが、結局は遠くから見守ってくれて、助けが必要な時はアドバイスもくれ、色々な経験をさせてもらいました。出会った最初の印象と今では随分違っています。
(こういうのが田舎のおばあちゃん家っていうのかな?)
親類と付き合いのない朝日には、そういう経験はありません。
洗濯も済み、アイラと一緒に部屋の掃除をしているとエミリーが夕食の準備が出来た事を知らせてくれました。
朝日は最後くらいの晩餐はきちっと服装を整えようと、お嬢様が持ってきていたショールを羽織って席に着きました。グランダに何か言われるかと思っていましたが、特に何もありませんでした。その日の夕食はとても静で、みな誰かか喋ってくれないかといった感じに黙々と食べ、そのまま食べ終えました。
小屋に戻ると、この数日の疲れが一気に押し寄せたのか、朝日は眠気に襲われベッドに横になりました。まだ片づけが残っているのでほんの少し休むつもりだったのに、いつの間にか熟睡してしまいました。




