表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/202

202話 愛の力です!

 その後の練習が、妙にはっきり伸びたのは偶然ではなかった。


 ミオはスイングの迫力を増し、ノゾミは吹っ切れた勢いのまま盗塁の一歩目をさらに鋭くした。

 ユイは褒められた責任感をそのまま配球へ変え、セツナは勝負の儀式が効いたのか、打球への初動が目に見えて速くなる。

 マキは軽口の裏で送球のぶれを減らし、アイリは声のかけ方と立ち位置で守備全体の流れを作り続けた。


 そしてサユは、恋の一歩を踏み込んだことで、守備でも打撃でも“逃げないほう”へ体が向き始めていた。

 怖いものは、消えない。

 でも、怖いまま前へ出ることはできる。

 それはたぶん、恋でも野球でも同じだった。


 最後に、龍之介はノックバットを肩に乗せ、冬空の下で全員を見回した。

 白い息が、薄くほどける。


「今日、全員ちょっと伸びたな。……甘いものの力か?」


「龍様。愛の力です!!」


 即座に返されて、また笑いが起きた。

 乾いたグラウンドに、その笑いは前よりずっと自然に広がっていく。


 バレンタインは、ただチョコを渡す日ではなかった。

 チームの距離がひとつ前へ進み、それぞれの競技で培ってきた強みが野球の中へ混ざり合い、サユの居場所がまた少し確かなものになった日だった。


 ライトの端から矢のような送球を刺すその姿は、もう「端にいる子」のものではない。

 下位打線から這い上がるという宣言は、甘い余韻と一緒に、確かな手応えとしてグラウンドに刻まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ