表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
191/196

191話 バレンタインの日

 数日後。

 野球部オフシーズン中の、定期練習日。

 今日は、空気にいつもと違う緊張が混ざっている。


 そう、バレンタインだ。

 男子部員は龍之介ひとり。

 イベントの日は、その事実がやけに重い。


 野球グラウンドには、冬の乾いた匂いが漂っていた。

 吐く息が白くほどけるたび、誰かの視線まで一緒に揺れている気がする。

 普段なら「寒っ」と笑って終わるのに、今日は笑いが半拍遅れる。

 龍之介は誤魔化すみたいに、声を張った。


「……よし。準備運動が終わったら、次はキャッチボールだ。サユもどんどん慣れてくれよ」


 輪になった部員たちの肩が、いっせいに小さく跳ねた。

 その跳ね方は、「はいはい分かってます」という軽さじゃない。

 まるで今の言葉の裏に別の意味が隠れていないか探すような、微細な反応。


 サユは腕を回しながら、わざとらしいほど堂々と顎を上げる。

 いつもより強い仕草。

 本人も分かっているのか、分かっていないのか。


「あたしに任せなさい。すぐに上達して見せるわ」


 返事は強気。

 けれど語尾だけ、ほんの少しだけ柔らかい。

 龍之介は視線を外し、次の号令に移ろうとして――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ