そういえば何か忘れているような
「ここがわたし達の部室よ」
そういって案内されたのは、進路関係の資料がたくさん置いてある部屋だった。
「…まじで入部しないといけないの?別に俺以外でもいいだろ」
「私の事情を知ってるのあなた以外に適任がいるのかしら?」
「いっそ他の人に打ち明けてみるとか」
「そんなにこの画像をばらまかれたいのかしら」
「すいませんでした」
はー。やっぱあの画像が向こうにある限りまともに逆らえねえ。
強引にスマホを奪って画像を消すという手段もあるが、こいつのことだからバックアップをとってあるだろう。やるだけ無駄だな。
…それにしても
「素朴な疑問だが、部活新設の際に部員って二人でも大丈夫なのか?」
「…大丈夫よ。全く問題ないわ」
先ほどまでの勢いが失速する。
「それに顧問の先生とか」
「……顧問の先生には名前だけ貸してもらってるから、この教室に来ることはないわ」
顧問の先生来ないとか、そんな部活現実にあるのか。
「まあ、学外での活動がほとんどだから、この部室を使うことなんてほとんどないけどね」
「それもう部活である必要あるか?」
「部活動って肩書があった方が義務感が出るでしょ。あなたのやる気が少しでも上がるようにと、わたしからの粋な計らいよ」
義務感生まれるかなあ…。
少なくとも、現状やる気が上がる要素全くないんだが。
まあでも、
「あの画像を消してくれたらもっとやる気が出るんだけどな」
「…そうね、消してあげてもいいわ」
「え、本当か!」
「ただし、わたしが今あなたに対して怒っている理由を当てられたらね」
「怒ってるのか?」
「怒ってるわ。ええ、それはもう盛大にね」
「なにか怒らせるような要素あったか」
ここ数日の名取とのやり取りを思いだす。
「名取に反抗しまくってること?」
「ぶー」
「あっ、この前誘いを断ったことか?」
「はずれー」
「…いやわかんないぞ。それ以外もう思いつかねえよ」
「そう。じゃあこの脅し材料…じゃなかった、画像はまだ消せないわね」
結局名取が起こっている原因は分からず仕舞いで終わった。
「ん。こんなことやってるうちに最初の部活動の時間ね。行きましょう」
「行くってどこに」
「もちろん、わたしの仕事先よ」
部室のドアを開け放つ。
だが懸念すべき点が一つある。
「流石に外で名取と一緒に歩くのはまずくないか」
そう。異性の芸能人とプライベートで一緒に歩いてたりなんかしたら、パパラッチの恰好の餌食だ。
「大丈夫」
自信満々の表情でポケットから取り出したのは…眼鏡
「この通り、変装はバッチリよ」
その程度でバッチリとかガチ勢をなめすぎでは。
「さ、時間もないし、早く行きましょ」
鍵の無い部室を出て、名取の仕事先とやらへ歩みを進める。