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プランB 18

すみません、予約投稿をミスりました。

エピソード18は、正しくはエピソード21ですので3話を追加します。



「 で、結局何にしたんだ? 」


「 それは始まるまでは内緒 」


悪戯っぽく笑うジュン、ヒロは両手を挙げて降参のポーズだ。

もっとも、ヒロの片手にはコーヒーが在るので、おどけているようにしか見えないのだが。


ヒロがジュンに訊ねたのは実験開始の合図の事だ。

”発進”はお話にならない、かと言って昔のロケット時代に使われていた ”リフトオフ” は使えない。

すでに宇宙空間に浮かんでいてリフトされていないのだからリフトオフ、つまりリフトを外すことは出来ない。


実にどうでも良い話なのだが、地球圏ではかなりの話題になっている。

それだけ今回の試験が世間の注目を集めているという事なのだ、スポンサーの目論見は成功したと言って良いだろう。


「 そうね。 ワープインじゃ無いとだけ言っておくわ 」


「 そりゃそうだよな 」


シュタインリッヒ博士の理論に基づくワープでは、空間に穴は開かないからそもそも ”イン” はしない。

超光速航行状態(・・)になったという意味でインは使えるのだが、 ”ワープイン” と言っている間に目的に到達して ”アウト” しているのだから何とも間が悪い。 

記録と記憶に残る人類初(・・・)ともなると、科学者はそれなりに気を遣うらしい。


科学者だけでなく世間の人々も気にしている。 

なんでも賭け事にしてしまうブックメーカーは、過去最高の売り上げになっている。

シュタインリッヒ博士は日本の文化に詳しい、って言うかハマっている。

だから一番人気は日本語で ”発進 ”、二番人気は ”ワープ ” になっているらしい。


「 スポンサーは何も言ってきてないよな? 」


「 私は聞いていないわ。 ローズも指示は無いって言ってたし、今回は何も言ってこないんじゃ無いかしら 」


スポンサーはケチではない。

だが、厳守すべきことがある場合は必ず、何があっても守れと言う指示がある。

今回は特になさそうだから、シュタインリッヒ博士にお任せと言う事なのだろう。


「 スポンサーは、人類初(・・・)に興味は無さそうだな 」


「 良い宣伝になるのにね。 でも、その後の準備で忙しいんじゃないかしら 」


トラブルが無ければ今回の実験は成功する、すでに何度も成功しているし、不具合はその可能性も含めて全て改善されている。

スポンサーの本当のネライはその後の事業に在るのだから、細かい事は気にしないのだろう。

ヒロとジュンはそう結論付けた。


------------------------------


ヒロとジュンの搭乗しているタンカーでは、お祝いのパーティーが始まっている。

人類初のワープ試験は成功したのだ。

ヒロは予定通りだと安堵し、ジュンは泣きながらモニター内のシュタインリッヒ博士に向かって拍手した。


長い間、科学者として学会や世間から認められずに生きてきた生活が終わる。

実家の名声も上がるだろう、ローズの実家の名声なんてジュンにとってどうでも良い事だが、ローズが認められたのがとにかく嬉しそうだ。

友人としてなのか、それとも母性のなせる業なのかは不明だ。



ヒロとジュンの二人用として用意されていた料理とアルコールが、タンカーに搭乗している全員にふるまわれ、食堂はパーティー会場へと変化していた。

用意されていた食事もアルコールも驚くほど高価なものだったので、どこか遠慮しがちではあったが。

バカ騒ぎをしている者は居ないが熱量はあふれるほどに在る、不思議なパーティーとなっていた。


全員が少なからず関係者であることも関係しているが、銃を持った兵士がいる状態で騒げるものは少ないだろう。

彼らの銃のトリガーは軽い、事前にタップリ忠告されているのも影響しているだろう。

それに、何事も無ければ兵士達も交代で楽しんで下さい、とヒロから命令が出ている。

ヒロとジュンはおもてなしの国の出身で、本船の指揮権も兵士の指揮権も一応ヒロが持っている。 


兵士に拒否権は無い、命令には従わなければならない。

しかしモラールが高く率先して命令に従う兵士は強い、そういう事だ。



実験は成功に終わった。

実験船はあらかじめ準備されていた、(もちろん通常航行で火星まで到着した)、母船に収められチェックを受けている。

異常が無ければ、近傍宙域で待機していた林アナウンサーが実験船内部を紹介する映像が流れる予定になっている。


ヒロが作りだした空間安定化装置は、ワープ時に宇宙船の存在する空間を安定化させるだけでなく、空間のズレを利用した防護フィールドとしても利用できることを世間に実証してみせた。


ちなみに火星宙域に待機している母船は、人類初のフィールドジェネレータ搭載船だ。

フィールドを上げていれば、宇宙塵はもちろん隕石が直撃しても被害は無い。

それだけ速度を稼ぐことが出来て、運航時点で人類最速の船になっている。

ジャンプ機関が搭載されていないのは、搭載したらムーンベースの実験が人類初じゃなくならからだ。


母船は複数のジェネレータでフィールドを張っており、格納作業中も安全であると林アナウンサーがモニターの中で説明している。

フィールドを外さないと実験船を格納できないが、外してしまうと被害を受ける可能性がある。 

大小いくつかのフィールドジェネレータを使い分けて、格納庫だけ空間が開くようになっている。


「 エンゲージときたか 」


「 ピッタリでしょ? 」


ローズが選択した実験開始の合図は、”エンゲージ” だった。

人類初の超光速航行に成功した事に比べれば実にどうでも良い話だが、賭けに勝ったものは大喜びしたとかしないとか。


誤字脱字の報告、読後の感想などお待ちしています。

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