幸せへのチケット(10)
青葉若葉目に眩しき5月、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今月もまた(初めて?)お読み頂け、喜び全開の東の外記・しげき丸でございます。
五月病に罹っちゃった人にも、本作が何らかの励みになれば幸いです。
第一章残り2話クライマックス真っ最中なので、それくらいの気合いで書いております。
空回りで無いといーけどねー(おい)。
シロエ達だけでなく、トウヤ達その他のキャラの頑張りにもご注目下さい。
それでは本編をどうぞ。
新ログ・ホライズン
―第10話:幸せへのチケット(10)―
-1-
ナゴヤ郊外、ゼオラ城。
シロエ達は入口の門番を軽く倒し退けた。
「早く行こう、主君。レイネシアがきっと心細がっている」
「ああ」
シロエは走りながらアカツキをじっと見詰める。
「ど、どうした主君?」
「こう言ったら怒るかもしれないけどさ、以前にアカツキをレイネシアの警護に付けたのは、友達になって欲しかったからなんだ」
中庭に入り、次のモンスターたちと戦いながらも話を続ける。
「………。では、護衛としては当てにしていなかったのか?」
「違うよ。もっとそれ以上に君とレイネシアは、お互いを必要とすると思ったからだよ。お互いを守るのは、その必然で、自然とそうなると思ったからさ」
「確かにそうだったが、何故そう思った?」
「君がレイネシアと同じ様に、身分の高いお嬢様だから、共感すると思ったからさ」
「っ!? どうしてそれを?」
「推理だよ。君の立ち居振る舞いは、時代劇ロールプレイと言うには、余りにも身に付き過ぎている。ちゃんとした家の生まれで躾けられたそれだ。
もう一つはクラスティさんさ。彼は隠しているつもりだろうけど、陰でいつも君を気にかけているし、彼と君の雰囲気は似ている。血統書付きの兄妹犬みたいにさ」
「気付いていたのか………」
「友達になって欲しかったのはさ、友達で無ければ言えない事をレイネシアに言って欲しかったからでもあるんだ。彼女を助け出したら、君に必ず言ってもらわないとならない」
「何をだ?」
だが、会話はそこで途切れる。
「いかにもな中ボスが出て来たぞ!」
嬉しそうに叫ぶカズ彦。
「一週間の長丁場の癖に、結構大盤振る舞いですよね」
軽口を叩くソウジロウ。
「大盤振る舞いは奢り酒だけで結構よ!」
「まったくだよ」
ダリエラとナズナがぼやく。
「さあ、食い散らかすにゃ!」
「「「おうっ!!」」」
班長の号令一下、皆はまるで茶会の昔のように突撃して行った。
-2-
アキバの街、ギルド互助会本部。
「演説をして欲しいって?」
トウヤが驚きの声を上げる。
頼み込んだのはロデ研のアオモリとミカカゲだ。
「そうなんです」
「リーダーのトウヤ君に、是非言って欲しい事が有るの」
そして二人から昨日起こった事を聞かされる。
「じゃあ、アオモリさん自身がすればいいんじゃないですか?」
お茶を出しながらミノリが口を出す。
「無、無理っす。カチンコチンになって、一言も喋れない自信あります」
「そんなの自信って言わない」
アオモリの情けなさに頭を抱えるミカカゲ。
「それならさー、歌にしちゃえばいーんだよ。五十鈴に曲作らせてさ。あ、ドーナツいる? ボクも食べるから」
テトラが盆に載せたドーナツとともに割り込む。
「あ、どうも」「頂きます」
五十鈴の脳裏に、天啓のようにフレーズが浮かぶ。
「うん! 作る作る! 『馬鹿にされても不安でも、好きな仕事するの自分に許そう』って、最っ高のフレーズじゃんっ! てとらだけで無くトウヤも歌ってよ!!」
「ええーっ!?」
「うむ。そうだぞ、これを唄うのはリーダーの義務と言うものだ」
「ひでぇっ? ルンデルは俺の味方じゃなかったのかよっ?」
「味方だからこそ応援してるではないか」
「「決まり、決まり―!!」」
はしゃぐてとらと五十鈴。
ミノリはそっとトウヤの肩に手を置く。
「観念なさい」
「くっそー! やりゃあいーんだろ、やればーっ!!」
トウヤは抵抗を諦めたのであった。合掌。
五十鈴は早速リュートと紙とペンを交互に操り、曲を作って行く。
その歌は、まるで春の新緑の様に、彼女の脳裏に次々と芽吹いたのだった。
-3-
シロエ達はフォーメーションを組んでダンジョンを攻略する。
前衛は、メイン盾をソウジロウにして、カズ彦、アカツキ、テツロウ。
ソウジロウが引き付けた敵をカズ彦とアカツキの暗殺者コンビが屠る。
カズ彦の〈斬徹刀〉は兎に角威力が高いが、その分ナズナやシロエがその馬鹿高いヘイトコストを面倒見なければならない。
逆に途中参加のテツロウの方が、揮う星球棍、〈ライジングスター〉に付与されたノックバック効果で、群がり過ぎた敵を吹き飛ばし、チームプレイとしては役に立つ事もしばしばだ。
アカツキは勿論、ソウジロウが攻撃を受け過ぎた時、〈影遁〉の分身で、敵の攻撃の幾らかを引き受ける名サポート振りである。
そして今回の攻略で、前衛以上に重要なのが遊撃部隊。
チーム〈ケルベロス〉である。
北への遠征で、マサチューセッツらシルバーソードと共に戦い、シブヤダンジョン戦でも得た教訓。
それはボスキャラや敵部隊が複数、横や後ろからもの襲撃が以前の倍以上に増えた事である。
ゼオラ砦でも、やはり同様のパターンで攻撃は来た。
彼ら三人は非常に機動力に優れるので、どこから襲われてもすぐに第2の前衛として立ち塞がれる。
メイン盾はマヒルだが、他の二人も幻想級で固めるだけあってそこそこ固く、分散したダメージはアヤメの範囲回復ヒーリングフォージで回復とそつがない。
最後に後衛。
シロエ、ダリエラ、ナズナ、セララ、そしてなんとにゃん太である。
にゃん太は石弓〈ホークアイ〉を構え、武器とスキルの射程を延ばす帽子〈義賊のハット〉を被っている。茶会の最初の頃、シロエが指揮官として頼りなかった頃は、このスタイルで時々指揮を手伝ってもらったものだ。
今回は、慎重に慎重を期して、後衛が襲われた時の万一の備えとして、こうして貰っている。
実際に一度その必要が有ったが、セララの防御を補助する召喚獣、〈アルラウネ〉によるサポートも有り、見事なボディーガード振りを発揮した。
お洒落なコートまで羽織った姿はまさしくボガードである。
そしてフォーメーション以外にも、重要な変化が有る。
班長とソウジロウの新たな口伝である。
にゃん太の口伝は〈固ゆで〉。
睨んだ敵を、射竦める技である。これでソウジロウやマヒルのピンチを何度となく救ったし、自らのピンチも凌いだ。
ソウジロウの口伝は〈真・天眼通〉。
「凄い、完璧な『滲み突き』と『鎬斬り』だ」
シロエが思わず呟く。
これにはアカツキが反応した。
「主君、それは実際の剣術に実在する奥義の名ではないか? 何故知っている?」
敵の剣を受け流した剣でそのまま突き、斬る。二刀ともが受けにして攻め。
究極の攻防一体である。
「マヒルさんのお蔭です。寄り添う心こそ天眼に通じる。敵の剣にさえ寄り添う心を教えてくれたのは、マヒルさんの愛とマヒルさんへの愛ですぅっ!」
「ば、馬鹿っ! 変な事言うなあっ!!」
恥ずかしがるマヒル。
うん無理も無いよね。一度ソウジロウは爆発した方がいいと思う。
「やはり主君の父君祖父君は相当の剣士だったのでは?」
詰め寄るアカツキ。
「うーん。生前それらしい事言ってたけどねー」
あっちもこっちも大ボケであった。
-4-
次の日の朝、アキバの街。
大広場の壇上に並ぶ楽器と、トウヤとてとらを始めとするバンドメンバー。
急遽ここはライブステージとなった。半ばゲリラライブである。
トウヤとてとらは、物珍しげに見る聴衆の前で、男女ハーモニーで唄い出す。
♪馬鹿にされても 不安でも 好きな事するのを 自分に許そう
レベル低くて ヘタッピでも 好きな仕事するの 自分に許そう
馬鹿にするのも 不安だから みんなの不安を 笑い飛ばそう
それでも落ち込む時もある
それでもヘタレる時もある
そんなへこんだ 自分でも 情けなくても 自分を許そう
泣き腫らしても 立ち上がり 好きな事するのを 自分に許そう
上手いヤツでも 不安だよ 好きな仕事するの みんなに許そう
明日はきっと上手くなれるって
夢見る事を自分に許そう
レベルアップをみんなに許そう
大冒険をみんなに許そう♪
それは少し拙い歌だった。最初、拍手もまばらだった。
でも、2回目を唄い始めた時、かなりの数の人が一緒に歌い始める。
何回も歌う内に、もっと聴く人も歌う人も増え、手拍子も起こって行く。
シンプルな歌だったからだろう。
やがて涙ぐむ者も出始めた。
ほんの少し泣きながら、皆唄ったのだった。
さて、大広場にはもう一つ、掲示板も立てかけられていた。
それにはこう書かれていた。
『低レベルの人が好きな仕事を自分に許せるように、悪口を言い過ぎた事をみんなで謝るメッセージボード』
最初、そこには5枚だけメッセージが貼ってあった。
『いつも歌い方に文句言ってゴメン』
『いつも曲や演奏に文句言ってゴメン』
『いつも偉そうでゴメン』
『いつも手厳しくてゴメン』
『言い過ぎてゴメン、テツロウ。兄ちゃんを助けてくれよなっ!』
人々は最後の一つだけに首をかしげたが、一人、また一人と、続けてメッセージを貼り続けて行ったのである。
そして小さな奇跡は起こる。
ライブの日の昼や夕方、各生産系ギルドで行われた初心者教室に、確かに少なくない人が戻って来たのだ。
ロデ研の料理部室にも、タクトとミーミーだけでなく、まどかと言う少女もまた、部室へと戻ってきたのである。
続けて来ていた者達も、多少辛口の評価を言っても、馬鹿にした風に悪口を言う者はいなかった。
「何か、あの歌聞いたらさ、悪口言ったり馬鹿にするの格好悪いなって思えたんだよ」
-5-
ガザーリと言う商人がいた。
好色で知られる男で、何人もの妾を囲い、泣かされた女は両手両足の指に余るらしいが、全て金の力でもみ消したと言う風聞の立つ、評判の悪い男だ。
そんな男だが、最近は女遊びを控え、妾にもあまり手を付けぬらしい。
別に改心した訳では無い。
身の程も弁えず、〈イースタルの冬薔薇〉に懸想したとの噂だ。
そんな男が商用でその日ナゴヤの別荘に到着したのは、ガザーリにとってとてつもない幸運であり、レイネシアにとってとてつもない不幸と言える。
ガザーリは館に着くなり、まず食事を要求した。
しかし、側仕えのジルドを伴い、食卓に赴くと、メイドや使用人は倒れており、自分が座るべき長大なテーブルの上席には、黄と黒の色も禍々しい半蜂の魔物の女。
「お前は一体誰だ!?」
狼狽えるザガーリ。
「お初にお目にかかります。私はダノーブ四天王の一柱、ハーシヴァーの部下〈典災〉のスカルビー。どうかお見知り置きを」
「わ、ワシの使用人を殺したのか?」
「いえいえ。微量の眠り毒で眠らせただけ。明日には目を覚ましますよ」
「ワシを脅すつもりかっ!?」
「とんでも有りません。私は貴方に良い取引を持ちかけに来ただけ」
「取引だと?」
この言葉にガザーリの肝が据わる。
たとえ相手が魔物でも、取引なら彼の土俵と言う自負がある。
「話を聞こうではないか」
「〈イースタルの冬薔薇〉を御所望だそうですね?」
「何と………」
ガザーリは生唾を呑む。
「貴方のコレクションの〈ルシアの涙〉と交換でいかが?」
「本当か?」
〈ルシアの涙〉は確かに歴史的名品と言える宝石だが、レイネシアと引き換えならば惜しくも無い。
「本当ですとも」
「………。何か裏が有るのだろう?」
「私達はレイネシアに歴史から消えて欲しいの。殺せれば楽なんだけれど、彼女には神の加護が有って、私たち魔物には殺す事はおろか、他人に殺せと命令する事も出来ないの」
「―――つ、つまり、彼女が二度と歴史の表舞台に出なければよいのだな?」
「ええ、一生どこかに閉じ込めて、好きに可愛がるといいわ」
ガザーリは降って湧いた幸運に眩暈を起こし倒れそうになる。
「真か?」
「本当よ。これが証拠の品」
スカルビーは胸の谷間から、首飾りを取り出す。
「こ、これは〈マイハマの朝露〉!! 間違いない!』
目利きであるガザーリの眼は、これが確かにレイネシアの身に付けている物と無抜く。
「では御了承頂けますね?」
「も、勿論だとも!」
斯くて、魔物と男の間に、昏き密約は結ばれたのである。
-7-
次の日の朝、アキバの街。
ギルド互助会のトウヤ達に、ミカカゲ達が礼を言いに来た。
同様のメッセージは、彼女達だけでなく、あちこちから伝わってくる。
トウヤ達はチャットの相手に手一杯なので、代わりに五十鈴とテトラが相手する。
「ホント有難う!」
「礼を言うっス」
「いやいやそんなの」
珍しく謙遜するテトラ。
「こっちこそ歌のいい元ネタ貰ったんだよ。ホントこっちこそ有難うだよ!」
「それにしてもなんか結構な騒ぎだよね」
「いい歌だったからっすね」
ミカカゲとアオモリが感嘆のため息を漏らす。
「うん。歌で世界変わる事あるんだって、私今鳥肌立ってる!」
「まあ、この銀河系アイドルてとら様にとっては当たり前だけどねっ!」
「えー、そんな事言って、昨日はてとらも泣いてたじゃん」
「わー、わー、わー」
これにはみんな笑い合う。
「さて、紅茶は如何かな? 不肖このルンデルハウス、料理は出来ぬが茶の嗜みは少しだけある」
そう言って差し出されるティーカップ。
「わあ、有難う」
「頂きまっす」
「トウヤも息をつき給え。倒れてしまうぞ」
「サンキュー、そうする」
「私もー」
ミノリからもギブアップ宣言である。
「あ、そう言えばさ、ミノリ」
トウヤは唐突に思い出す。
「あ、そうか。シロエさんの置き手紙!」
「うん、今こそ開けるべき時じゃないか?」
「そうよっ!」
「お、シロのアレか?」
直継とマリエールもやってくる。
「うわー、楽しみやでー」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
トウヤはそう言いながら、恐る恐る開封する。
『トウヤへ。そしてみんなへ。
これを読んでいると言う事は、おめでとうと言うべき事が起きたんだよね。
君たち自身の手で、低レベル冒険者問題に解決に一歩前進してくれた事は、いくら感謝しても足りない。
何故なら、それは僕らの様な、例えばクラスティさんやアイザックやミチタカさんやアインス先生と言ったお歴々には、無理な事だったからね。
僕達が普通に低レベル冒険者やそれを口撃する冒険者に何かを言っても、「強い奴や偉い奴だからそんな大層な事が言えるんだ。自分達にそんな事をするのは無理で関係ない話だ」と。突っぱねられてしまうケースがほとんどだからだ。
だから、君たち自身の手で、船に帆を張る必要が有ったんだよ。
そして、それに続く僕の言葉が、その帆を押す風になる事を願う』
最後まで読んだトウヤは、顔を輝かせみんなに告げる。
「みんな、今日の夕方も歌おう! それから兄ちゃんのメッセージをみんなに伝えるんだ!!」
「よっしゃ、めでたい景気付け祭りだぜっ!!」
「「「えい、えい、おー!!!」」」
みんなの拳が付き上げられる。
-8-
ゼオラ砦ダンジョン最深部。
「我が名はヤーマーカァ」
「同じくアラームラ」
巨体の二人の女魔人が名乗りを上げ、武器を掲げる。
「一際でかいにゃ。こいつらがラスボスですかにゃあ?」
「72時間の時間設定まで残り1時間半だから、そう願いたいねっ。カズ彦っ、ナズナ、いつものっ!」
「おおっしゃあ! 〈斬・徹・刀〉!!」
カズ彦の馬鹿馬鹿しいまでの威力の剣が、ヤーマーカァの鎧を切り裂く。
「ハイよ、〈パシフィケーション〉!」
「テツロウ、ダリエラ、今回はサブ盾のケルベロスをサポート。班長も! ダリエラさんは最初は僕と合わせて!」
「はいっ!」
「了解にゃ」
「はいはい」
「アカツキっ、最初にかましてHPの減りを見よう。上手く行けば攻撃パターンが変化するはずっ! 行くよっ〈バインドホステージ〉!!」
「〈バインドホステージ〉!」
「任せておけっ!主君っ!!」
アカツキの身体と刃が〈影遁〉で幾つにも分かれ、茨に絡まれたヤーマーカァに斬りかかって行く。
―第11話に続く―
※口伝紹介
●〈真・天眼通〉
〈天眼通〉使用時に、メジャーアクションに於いて【攻撃力】に[攻撃に使っていなかった武器の【攻撃力】]をプラスする。ただし、シーンSR回(最大SR3)までであり、その度にヘイトが追加で1点加算される。
この奥義を会得するのに大事なのは、何より人を愛し寄り添う心である。
とってもいい話なのに、何で本編あんなに残念なんだろう(涙)。
筆者:では今回のゲストは、ヴァディス(仮名)さんと班長(仮名)でーす。
ヴァディス(以下「ヴぁ」):どうも-。まだ本編に出ていないのにお恥ずかしい。
に:そうは言っても、実はヴァディスちは結構有名人にゃ。
ヴぁ:まあ、漫画家してますんで。一部にはそれなりに。
筆者:アニメ化もされたでしょ? それなりじゃ無いですよね。
ヴぁ:いやいや班長なんか、●の◎に◎われた事も有るとか。
に:何のことにゃ? 我輩は一般人にゃ。
(鋭い視線に皆黙る)
筆者:まあ、英国の誇り、トライアンフバーチカルツインに乗る姿が余りに格好いいからじゃないですか?
に:ホンダがCB750フォアを出すまでは、このバイクこそが世界を席巻していましたからにゃあ。
ヴァ:お弟子の料理人さん達も、班長を真似してバイクに乗られている方が多いそうですね。
に:九州から北海道まで、色々旅しましたからにゃあ。弟子と言うより、皆掛け替えの無い友ですにゃ。
ヴァ:くーっ、渋い。
筆者:今では英国(仮名)に自分の店を持たれているそうですね。
に:実際にどこかは秘密にゃ(班長は業界人ではありません。詮索しないでください)。
筆者:それはそうと、今回ヴァディスを呼んだのは、すっかり風化したころだからそろそろネタにしても大丈夫だろうと言う事で、ヴラド公とカバール、つまり吸血鬼をネタにしたかったんだよね。
ヴぁ:ビバ吸血鬼。
筆者:ビバ吸血鬼。
に:君達はアンデッドヲタクですからにゃあ。
筆者:伝承のほとんどは実は狼男と同じく狂犬病なんですけどね。でも、ヴラド公の伝承は別格。
ヴァ:そう、ヴラド公最高! だがエリザベス・バートリーを始めとするカニバリスト(人肉食者)は滅ぶべくして滅びるカスな行い!
筆者:まあ、自業自得だよね。カバールもさ。
に:まあ、なんですかにゃあ。ヲタクを馬鹿にしていた人達がもてはやしていた有名俳優達とかがカニバリスト(正確には血で無くアドレナリンエキスだが)だったのは皮肉ですにゃあ。
筆者:ヲタクが犯罪者予備軍だなんて言ってた昔が懐かしくさえありますね。
に:人間の心の美醜は外見や趣味とは関係ないと言う実例ですにゃ。
ヴぁ:ヴラド公を始めとする鮮血を浴び、生き血を啜ると称された残虐な戦い方で吸血鬼と呼ばれた者達は、お世辞にも善人とは言えませんが、守るべきものの為に全てを投げ打ったダークヒーローですよ。だからいつまでも人を引き付ける!
筆者:まあ、カニバリストはさ、結局自分の心の弱さに負けた人たちだもんね。彼等は他人の若さが怖かったんだよ。人間怖い物には同化しようとする。その究極の同化が人食い、他人の若さのエッセンスを得て生きようとする事なんだよねえ。
ヴぁ:まさしくカバール。
筆者:話はヴラド公に戻るけどさ。時々仮死状態になっただけで、息を吹き返す人が昔からあった訳だよ。
ヴぁ:そう、だから人は土に埋められて眠りに就くまでは、死体に精神がいくらか残っていると考えられてた訳ですな。
筆者:土に埋められてから息を吹き返す例も有ったしね。
ヴぁ:だから死体を串刺しにされれば、死んでもずっと抵抗できずに苦痛を味わい続けると昔の人は思った訳です。
に:それはそれは成程。道理でトルコイスラム兵が震え上がったはずにゃ。
ヴァ:後に、そうまでして守ろうとしたキリスト教圏から、逆に糾弾されてしまう訳ですが。
筆者:ヴラド公の『ドラゴンの騎士』の二つ名も、勇猛をほめたたえられての事だったのに、評価が裏返ってからは、神の敵ドラゴンの僕であり、彼は最初から悪魔崇拝者だったと責め立てられる始末。
ヴぁ:そして『ドラゴンの騎士』の綴りの短省形が、我々が吸血鬼の代名詞として知る、『ドラキュラ』なのですよ。
に:まさしく歴史に翻弄されたダークヒーローですにゃあ。
筆者&ヴァ:ビバ、吸血鬼!
それではまた次回来月でお会い致しましょう。お楽しみにね。
まったね~。