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兄の余計な話

調理部の恋愛事情:内藤 裕介&川田 唯


隠れメインは内藤孝介かもしれない・・・。

「おまえさー、唯ちゃんとどこまでいってるの?」

 朝からこのバカ発言をしたのは、一番上の兄・孝介。見た目がシュッとしてるうえに難関といわれる大学に通っていることから、近所では「かっこよくて人当たりも頭もいい」といわれる長男だ。

 確かに、孝介兄ちゃんは何をやってもソツがなく、マメなうえに料理も上手。セールスなどの迷惑訪問や口さがないご近所さんのあしらい方も兄弟で一番上手だ。

 でも、駿介兄ちゃんはどう思ってるか知らないけど俺は「外面仮面」だと思っている。家での孝介兄ちゃんは、家庭内大魔王だ。そして、なぜか俺の恋愛に興味しんしんで余計な話をしたがる。

「兄さん。朝から裕介が固まってる。」

 駿介兄ちゃんが孝介兄ちゃんをいさめてくれるけど、大魔王もとい孝介は「だってさ、俺ら3人が揃うって朝しかないだろ。駿介は伊織が認めてるから心配してない。でも、裕介はさ~、まるっきり初心者じゃん?ここは経験豊富な俺が・・・」

「兄ちゃんの経験豊富って、合コンのお持ち帰り人数だろ」

「・・・おまえ、なんてことを言うんだ。兄ちゃん悲しい」

「気持ち悪いこというな!!だいたい兄ちゃんは小野さんにまるっきり弱いじゃないか」

 小野さんとは孝介の彼女で、以前孝介の持ち込んだ実験の副産物で大変なことになったときにすごくお世話になった人で、さっぱりした性格のきれいな人だ。

「当たり前だ。俺は小野に惚れているから弱い。」

 孝介は当然と言わんばかりに言い切った。大魔王をここまで服従させる小野さんって、やっぱりすごいや。

「お前が小野のことを持ち出すから話がそれただろうが。いいか、裕介」

「なんだよ」

「必要なときは、俺の部屋のベッドサイドの一番上の引き出しをみろよ」

「はあ?なんだよ、それ??」

「だから、必要なときに見ればわかる。覚えておけよ?」

 俺の疑問に一切答えず、孝介は俺に念押しするように言った。


 俺の彼女である川田唯さんは、同じ高校の3年生。この間の泰斗祭で調理部を引退して現在は受験勉強に集中している。

 当然、土日はデートよりも受験勉強。今は、唯さんが俺の部活が終わるまで図書室で勉強して待っててくれている。二人で帰るこの時間帯は貴重なのだ。

 手をつないで一緒に帰る幸福感・・・孝介にはわかるまい。駿介兄ちゃんなら、分かってくれるかも。

「ちょっとコンビニ寄ってもいい?」

 唯さんがコンビニの前で足を止めた。

「いいよ。何か買うの?」

「うん。ちょっと食べたいケーキがあるの。」

 唯さんの家は結構な老舗の和菓子屋だ。

 一度遊びに行ったらお祖父さんとお父さん、お姉さんのダンナさんがそれぞれ手作りの和菓子をご馳走してくれ、唯さんのお姉さんに「現役の男子高校生を見るの久しぶり~♪」となぜか喜ばれてしまった。

 さらにお母さん手作りの夕飯までご馳走になってしまったっけ。

「ケーキ?」

「そう。うち、和菓子屋だからケーキは売ってないしね。作るのもいいけど、今はちょっと時間がなくて・・・・あったあった。裕介くん、このケーキ知ってる?」

 そう言うと唯さんは俺にチョコレートケーキを手渡した。それは透明なプラスチックの容器と黒色のフタに金のリボンがかけられたコンビニには珍しく豪華なパッケージ。そこにプリントされてる名前は“初恋ショコラ”。 

 ん?これって、“ケーキとぼくのキス、どっちがすき?”のCMで話題のやつじゃないか。

「これって、あのCMの?」

「そう。前にも食べたんだけど、美味しいからもうリピートしっぱなしなの。裕介くんは食べたことある?」

「いや、ないけど」

「じゃあ、食べてみて。私のオススメなの。」そういうと、唯さんは2個手に取るとさっさとレジで「袋を別にしてください」と言い、俺が払うよ・・・と言う前に会計を済ませていた。


「ただいま~」

 そう言ったものの、兄2人は帰りが遅い。駿介兄ちゃんから“夕飯は冷蔵庫の中だ。俺も兄さんも遅いから、先に食べて寝ろ”とメールがあったため、1人で夕飯をすませる。

 両親が家を離れているため、1人の夕飯には慣れたけどやっぱり3人で食べたほうが楽しいよな・・・孝介の戯言はうっとうしいけど。

「あ。唯さんからもらったチョコケーキ食べよう」

 パッケージを開けて、一口。うん、唯さんがリピートするだけあってうまい。

 それにしても“初恋ショコラ”ってすげー名前。唯さんはさらっと買ってたけど、俺にはムリだ。何かの罰ゲームで買う羽目にならない限り、自分では選ばないだろう。

 それに“ケーキとぼくのキス、どっちがすき?”って、誰だよ。このコピー考えたの。唯さんに聞いたら、どう答えてくれるかなあ・・・・って、おいおい。まだ俺そんなにキスしてないし!!

 俺はそそくさとケーキを食べ終え、食器を片付けた。そこでふと朝に孝介が言ったことを思い出す。

-必要なときは、俺のベッドサイドの一番上の引き出しをみろよ。

 いったい、あれはどういう意味なんだろう。今なら孝介いないし、見てもいいよな。

 思い立ったが吉日ではないけど俺は孝介の部屋に入った。

 孝介の部屋で言われた箇所の引き出しを開けた・・・・。

 そこにあるのは四角い箱・・・・これって・・・・・まさかと思ってなかみをみたら想像通りの物だった。

「こ、孝介~~~~!!」

 本人がいないので毒づいてもいいはずだ(いたら〆られる)。確かにそのうち必要になるといいなとは思ってるけど、朝に言うことか!!あのバカ兄!!

 とりあえず、今はいらないけど・・・・もしやってこともあるし・・・・端っこからもらっておこうかな。

 箱を前にして、悩んでしまう俺だった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


R15だから、大丈夫ですよね?

孝介・・・あんたって人は(笑)。

なんて書いてて楽しいキャラなんだ。

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