第20話 エピローグ 幸せのその先に
「ねぇ拓哉っ、ハンカチ持った? 忘れ物ないっ? ティッシュは?」
「あのさー、藍、ガキじゃねぇんだから」
大慌ての私に、隼人は一言。
「しょうがないですよ、拓也さん。藍ですから」
「違いねぇ」
「もー! 2人してっ」
あれから、3年近く経った。
今日は拓哉が県外の大学へ通学するために、一人暮らしのマンションへ旅立つ日。
私は保育士を目指すため地元の短大へ進学することにしたから、しばらく別々の生活を歩むことになる。
実は私たちは、あれからもずっと3人で暮らしていた。
――なんと私の両親は、一度も海外から帰ってこなかったのだ。
便りがないのは良い便り……なぁんて言うけれど、本当にそのとおりで、元気で仲良くやってるみたい。それに驚くことに、私と隼人は今度姉と兄になる。2人の間に子どもを授かったそうで、産んで落ち着いたらこちらへ帰ってくるそうだ。
「拓哉、連絡ちょうだいね」
「ああ」
「たまには、帰ってきてね」
「たまにはな。ていうか、藍も来たらいいんだよ」
「うん、隼人と行くね!」
「そーじゃなくてっ」
拓哉の鋭いツッコミに、中学生になった隼人はお腹を抱えて大笑い。
「大変ですね、拓也さんも」
「わかってくれるか隼人」
「痛いほどに」
「もー! 2人してわかり合っちゃって!」
拓哉は、改めて隼人の頭をワシャワシャッと撫でる。
「もー。ガキ扱いしないでくださいよ」
「隼人はいつでも、俺の可愛い弟だよ。……藍を頼むな」
微笑ましい光景。
私もついつい、笑顔になってしまう。
――――だけど――――⁉︎
その言葉を、待っていましたと言わんばかりに、腕組みする隼人。
「「⁉︎」」
「いーんですね。拓哉さん、俺に任せて」
「あ、ああ。
……………………。
お前っ! まさか!」
「そのとーりですっ」
隼人は私よりだいぶ伸びた背丈を活かし、私の肩をぎゅっと抱く。
「俺、今でも藍が大好きですから」
「――えっ、ええっ⁉︎」
「覚悟しててよね。藍、拓哉さん! これからは俺のターンだから。拓哉さんがいない間、ずーっと俺のアピールタイムだからッ」
「おいっ! 強引に藍に攻めるのやめろっ」
――キュン。
強引な隼人に、不覚にもキュンとしてしまう私。
――ということで。
親が連れ子再婚した途端に、義弟からも同級生からも積極的にアピールされて困るうえに、2人とも女心をこれでもかとくすぐってくるので、私、相当やばいのは、まだまだ……続きそうです。
――――おしまい――――
全20話。
今話で完結となります。
お付き合いいただきましてありがとうございました。




