表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/20

第18話 週末の水族館③


 ノリでみんなでペンギンプレートを頼んだ。

 ペンギン型のご飯の周りには、カレールーが注がれて。周りには唐揚げとエビフライとハンバーグが大集合!

 いわゆる、お子様ランチプレートってやつだ。


「可愛いし、美味しそう」

「やっぱりなんか恥ずかしくなってきた」

「俺もです……」

「ええっ⁉︎ 隼人までっ?」


「「ふぷっ! あははは」」


 お子様ランチが乗った円卓に、笑みが溢れる。

 私たちが本当の兄妹だったら、とても楽しい休日だったけれど、名目上は、今日は「デート」。

 そう思うと、自然となんだか緊張してしまう。


「なぁ、藍、緊張してるだろ」

「もうっ、そんなこと『ある』よ!」

「……あるんかいっ」


 クスクス、と笑みがこぼれる。

 仲良し3人の、憩いの食事。

 隼人の表情も柔らかいので、私も自然と笑みがこぼれる。




 ……でも……


 この場の雰囲気を崩したのは――拓哉だった。


「なぁ、藍」

「なぁに?」

「俺は、藍が好きだ」

「……………………うん」

「隼人も、本当に好きなんだろ?」

「はい、もちろん。好きだよ、藍」

「…………………………ありがとう」


 拓哉は、ナイフとフォークを円卓に置く。

 そして、真剣な面持ちで、私に問う。


「藍はさ……。たぶん、俺の勘が正しければ、このままの関係がいいって思ってるだろ?」


 ――さすが、拓哉。

 長い付き合いの拓哉には、何でもお見通しだ。


「うん、正直言うと、そう。でも……」

「……このままじゃ悪いって思ってるだろ?」

「……うん」


 そして拓哉は、隼人を見る。


「隼人はどうなんだ? できるなら、藍を独り占めしたいだろ」

「したいです………………でも……」

「……でも?」


 隼人は、私と拓哉を順番に見て言った。


「藍のことは好きだ、本当に大好きだ、でも……」


 言い淀む隼人に声をかけたのは、拓哉だった。


「……言いたいこと、なんとなくわかるよ」


 拓哉は、隼人をじっと見つめてコクリ、と頷いた。拓哉とは違い隼人はとっても気まずそうに、視線を逸らす。


 私にはなんだかわからなかったけれど、男同士、通じるものがあるんだろうか。


 仕切り直して、拓哉は言う。


「藍、拓哉……。俺さ……。

 俺たち高校1年生だろ? 今からこの話するのは早いってわかってるけど。決めてることがあって」

「え……?」


 私は、ドキリ、とする。

 拓哉のこの表情は、本当に大事な話をする時の表情だ。


「大学は、サッカー強豪校に行くつもりだ。だから、県外へ行く。藍と……一緒にいられるのも、あとほぼ3年間だ」


「…………え………………」


 驚きしか、言葉が出なかった。

 いつも一緒にいた拓哉。

 小さい時から今までずっと。

 辛い時も、嬉しい時も、いつでも、いつだって。


 私は自然と、ポロリ、と涙が出た。


「――わ! 泣くなよ藍! まだ3年もあるだろ?」

「そ……だけ……ど……」


 隼人は私の背中をさすりながら、手をギュッと握ってくれた。そして少しだけ自嘲気味に笑いながら、眉をハの字にさせて言う。


「本当だったら、チャンスだ! とか言う場面ですけどね。何も言えませんよ。藍のこんな……涙を見たら。……まったくずるいな、拓哉さんは」

「……みんな、ごめんな」


 可愛いペンギンプレートは、涙の味がして……とってもとっても、しょっぱかった。


 ◆ ◆ ◆ ◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] うー! 少し先の話とはいえ、離れ離れは寂しいですよね(;ω;) でも、こんなすぐ泣いちゃうってことは、藍ちゃんかなり、拓哉君寄り!? でもそうなると隼人君が(´;Д;`) スマホを手に今…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ