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自覚。または愚鈍 2

電波組夢子ちゃん2号続きます。ので、ちょっとイチャイチャ入れてみました。一応恋愛ものだったと思い出しました(笑)

 文化祭は一月後に迫っていた。


 なものだから、忙しいわけで。

 だから休日の午後、外は雨なんかが降ってて、肌寒いリビングのソファーで、タオルケットかぶって昼寝しちゃうのも仕方がないわけで。……仕方がないのだけど、さっきから聞こえるシャッター音はなんなんだ?


「……母よ。なに写メをバシバシ撮ってるのかね」

「え? 起こしちゃった? だって~可愛いんだもの!」


 てへっ、とか笑っても可愛いたけだから。きゃぴってる母の方がよっぽど可愛いわ。


「あんまり大声で話すと起きちゃうわよ」

「うむ」


 そうだった。一人で寝てたんじゃなかった。

 説明しよう! うちのリビングには、ソファーセットの他に壁に作り付けのソファーベッドがある。出窓の下にあるそれはお昼寝にちょうどいいのだ。天気がいい日のお昼寝なんて最高だし、ごろごろ寝ながらの読書にも最適。なんて素敵。


 もともとそのつもりで父が設計に口を出したらしく、小さいときは3人でお昼寝したりもした。今はもっぱら真輝と私専用だけど。


「静留君の寝顔可愛いわね~」


 母、痴女入ってるぞそれ。しぃちゃんには聞かれないようにね。

 ん? しぃちゃん?


「……あ」


 そうだ、しぃちゃんを枕に昼寝してたんだっけ。

 しぃちゃんの右手側に私、左手側に真輝。しぃちゃん両手に花である。大変満足そうな寝顔だ。そして真輝可愛い。

 確かに寝顔は幼いよね。まつ毛長いし。起きてる時は背高いから見上げるし、下から見るのと上から見るのではちょっと違う気がする。まぁ、どっから見てもイケメンに変わりはないけど。さらに真輝可愛い。


 ほんと、なんでこんなイケメンが私の恋人なんだろうなぁ。

 寝顔を見ながらそんなことを思うあたり、私寝ぼけてるな。

 小学校を転校してから、結構いろんな人に出会った。男も女も、年上も年下も。読書の趣味が合う人もいたけど、しぃちゃんの隣みたいにほっとできなかった。

 依存だと言う人もいる。でも、多分何があっても好きなのに変わりはないんだ。……恥ずかしいがな!


「……とりあえず、母。しぃちゃんの写メ私にもくれ」

「もちろんよ♪」


 口になんてしないけど、願わくば、しぃちゃんもそうであるように。

 写メは待ち受けにしよう。



 隠してたわけじゃないけど、母は妊婦さんである。安定期に入ったとこだ。報告された私と真輝はバンザイの後、サムズアップをした。

 3人欲しかったんだよねー、と万年ラブラブ夫婦は笑い合った。

 真輝はお兄ちゃんになる、と興奮してその日なかなか寝なくて、大変だったらしい。

 父の仕事はもう少ししたら落ち着くらしく、今度こそ立ち会い出産! と気合いを入れている。可哀想なので、母のお腹に父を待てとお願いしといた。


 そんな母を買い物に行かせるわけにはいかない。それが今の我が家のマイルール。なので、足りない醤油を買いに行くのは私だ。


「ボクも行くー」

「じゃ行くか。(はは)さんちょっと休んだら?」

「ん? そうねぇ、じゃお願いね」


 気がきくなしぃちゃん。私は真輝にレインコートを着せると、傘を持った。真輝のと自分のだ。


「真桜、傘こっち」


 しぃちゃんがとったのは、二人余裕な大きさの傘。相合い傘決定なんだねそうだね。

 そうして、玄関を開けた私達が見たのは、キョロキョロうろうろ家の前を行ったり来たりする電波組夢子ちゃん2号だった。

 ……ストーカー?


「あ! 間中君!! よかった! 私ちょっと迷ちゃっ」


 バタン! としぃちゃんは扉を閉めた。私と真輝を背中にかばうのも忘れない。真輝の視界にすら入らない早業だった。


「ちょっと待て」


 カギをかけるなり、スマホでどこかに電話をかけ始めた。

 家の前にストーカーらしき不審者がいる、なんとかならないか。家から出られない等々、説明するも段々声が険しくなってきた。


「……ああ、そうですか。わかりました。警察は民事不介入という大義名分を掲げて雨の中出動するのが面倒なことを隠したいと。よくわかりました。失礼します」


 ぶちっ、と切ると次。内容から察するに所轄の警察だな。そして軽くあしらわれたと。そういう対応してるから後手に回って叩かれるのに、飽きないなぁ。

 ここでピンポーンとチャイムが鳴る。コンコン音がするのはノックかこれ。こわっ!


「晴、家の前にストーカーらしき不審者がいる。てか、あれは電波だ。……え? あれとは別。うん、そう。真桜と真輝がいるのにあれを放置はありえない。ああ、よろしく」


 今度は晴さんか。本庁から所轄に苦情、うん、私はなにも聞かなかったぞ。そしてまたピンポーン。間中くぅ~ん! と声もする。私はインターホンの電源を切った。母が起きるじゃないか。


「間中です。神楽坂のお嬢さんが家の前にずっといるんですが……ええ、はい。そうですね……至急……うちのが怖がってますので……はい。ああ、それから警察にも連絡してあります。……どっちが早いですかね? は? 当然でしょう、チャイムを連打し玄関のドアを叩き大声で叫ぶ。こんな状態で警察を呼ばない選択肢はないでしょう。急ぐことをお勧めしますよ。では」


 うん。軽くホラーだ。ご近所迷惑なレベルでしぃちゃんを呼ぶ声。てか、今の電話って誰? なんか聞いちゃいけない内容があったぞ。


「中行こう。そろそろ来るはずだから」

「しぃちゃん。でもあれ近所迷惑」

「ああ、早いとこ退場してもらおうな」

「しずにいー、だれー?」

「真輝、将来頭のおかしい女と妄想癖のある女は選ぶなよ?」

「あい!」


 頭のおかしくて妄想癖……そうか、あの人女王よりもお花畑で生きてるのか。


「あれ、生徒会の奴らにもちょっかいかけてたらしい。それもありもしない過去の傷を慰めて自分がそばにいるから大丈夫だと(のたま)ってたようだ。それ以外にも顔のいい男にコナかけまくってを繰り返してた」


 なんというか、バカ? てかずいぶんと斜め上を突き抜けてくなぁ。生徒会のメンバーなんて、女王の下僕じゃないか。愚直に惚れるわきゃなかろうよ。


「ねごとはおふとんのなかじゃないとねー」

「ねー」


 真輝、その教育は誰から? いや、ねーとか同意してるしぃちゃんだろうことはもろバレだけど、だかしかし!

 可愛い弟が腹黒に染まっていくような……!





 そんな時間を置かずに、2号ちゃんは無事警察に捕獲されたとさ。なんか攻略対象とかイベントとかさわいで大変そうだった。ちょっとの時間差で捕獲しそこねたのは2号ちゃんの父親だった。


「今回は娘がとんだご迷惑をおかけして、誠に申し訳ない」


 なんでこの人からあれが出来上がったのか、ほんと不思議な程の常識人だった。

 家のリビングに父親さんと秘書さん、私としぃちゃんと眠そうな真輝。母は休んでる。無理はよくないし、ちゃんと後から説明するからと。


「正直、共学にやることも反対だったのです」


 秘書さんが話し出す。

 曰く。うちの学園ーー今さらだけど聖ガーデニア学園と言う。名前の由来通り、広い庭園がある。文化祭はそこで巨大迷路をやる予定ーーに通いたいと言ったのは2号ちゃんであること。

 その時すでに「攻略対象」と「イベント」そして「逆ハー」とかを叫んでーー地声がもともと大きいーーいたこと。

 母親が死ぬことを含めて、父親が迎えにくることなどを知っていたらしいこと。

 たしなめたが、「悪役令嬢」を断罪して「ハッピーエンド」にするから、と聞く耳すらもたなかったこと。

 詳細を尋ねるも「秘密♪」と言われたこと。


「聖ガーデニア学園に通いたいと言うこと以外はまともだったので、通わせてはみたものの」


 2ヶ月もたたないうちに、苦情が山のようになったのだと。


 大人二人は、深い深ーいため息をついたのだった。



父親はまとも。超常識人です。これからの対応にため息しか出ない。哀れ。

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