2,怪しい男
森の木々を抜け、水辺を辿ると穏やかに音を立てている滝に辿り着く。
華奢な指で滝に触れると、さっと水がネレアを主人と認めているように、楕円形に水のアーチができる。
その中を男を連れてくぐり抜けた。
いつもの見慣れた家を見てほっとした感情に襲われる。
「なんだか今日は疲れちゃったわね。」
まぁ、木苺を取りにいったのに男を連れて帰ったのだから当然と言えば当然だ。
それにしても、何故わざわざ恐れられている「水の魔女の森」に足を踏み入れたのか。
私を狩りに来た訳でもないようだし。
「慈悲深い魔女に感謝することね。」
面倒事には関わりたくはないが、ここまで来たら徹底的に看病してあげよう。
まずは、水魔法を使って服と体を洗ってあげた。
服と身体の表面から水を空気中に移動するように魔法を使うと、脱水までできるから便利な魔法だ。
それから、ベッドの上に運んであげた。
「魔女のベッドを使えるなんて、、今後一生ない幸福なことよ。」
ベッドは一つしかないのに、、まぁしょうがないか。
看病するのにベッドに寝かせないのはどうかと思うしね。
それにしても、なぜ森にいたのだろうか。
迷い込んでいたみたいだけど、この付近に半日ほだ歩いても村なんてなかったはずなのだけど。
何か目的を持ってこの森に来た。
この仮説は前提として見た方が良さそうだ。
それか女神教のフィオグラグア教の連中?
魔女のことを女神だなんて祀る頭のねじが飛んでいるヤツにはあまり関わりたくない。
でもフィオグラグア教のおかげで生活できてる節はあるんだよなぁ。
魔法や自分の力でどうにもならない物は、お供え物として頂いているしね。
会ったことは無いけども。
少し不安になって来た。
とにかく何があっても良いように、申し訳ないけど少し縛らせてもらおう。
弱っているから、緩めにはするけど。
看病するために家に連れ帰ったけど、結局縛るのは本末転倒な気がしてならない。
まぁ仕方ないよね。
それにしても綺麗な顔をしている。
凛とした鼻に、親しみやすい目。
少し癖毛の茶色の髪がいかにも温和そうな雰囲気を醸し出している。
服は麻でできた比較的質素な服を上下着ている。
身分はあまり高くなさそう。
やんごとなきお方が森に居たら、それこそどうしたものか今以上に混乱してしまっていたでしょうけど。
まぁ目が覚めるまで待つしかない。
私も少し休もう。
ベッドがないから座りながら机に突っ伏すしかないけど。
客人用の布団なんてないもん。
今度フィオグラグア教に頼んでみようかな。
もうこんな事ないとは思うけど。




