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序章


 知る限りでの最高視聴率は年末の歌番組が81.4%で、動画サイトの最高累計視聴数は250億。選挙の投票率は80%まで上昇中。傾向として昔から流行は廃れやすく、炎上は容易い。そんな国ではあるが、突飛なことは往々にして起こるのでネタ切れはしない。



「最初に魔王を倒した方には賞金20億を贈呈いたします」



 また始まった。国民的漫画の原作者が死んだとか、声優同士が結婚したとか、どっかの誰かがノーベル賞をとったとか、ニュースで見るといまいち現実味ってやつが湧かないような、それでいて確かに水面が波打つような。



「まじかよ……」



 それが情報として初めて解禁されたのは、とあるゲームの発売前夜に、公式が急遽あげた生配信だ。

 水面が揺れるとか、そんなちゃちなものじゃない。明らかに、その波はかつてないもので、国という塞き止めを破って飲み込んだ。


 フルダイブのゲームは世界規模で見ると珍しくないが、日本では初。



「其れが、これかよ!」



 この滾りは確実に、ワールドカップ決勝をも超える。そうと決まればソフトを購入するのは悪手。日付が変わった瞬間にダウンロード版の購入が最適。


 あとはそれまでの約二時間はネットでの情報収集と友人各位への連絡、信頼できるゲーマー仲間とボイスチャットを繋げて即座にダイブ。


 明日の学校は言うまでもなく休む。男どもはほぼ来ないだろう。俺が今感じている熱を、同じように纏っている奴らがいるのがわかる。



「はっ! すっげぇ記事……緊急生配信も……っと、もしもし! わかってる! 俺はもう風呂あがってっからあとは正座で待機だ。落ち着いたらまた連絡する」



 切ったそばから着信がくる。熱をわかちあわないと焼け死んでしまうというばかりに。だが俺は既に冷静になってきていた。


 

 

「問題は糞ゲーか否か、か……」



 いくら賞金がかけられていようが絶対にクリア不可だったりおつかいだらけの苦痛な内容だったりすれば、たちまちやる気をなくしていく。それに、圧倒的に有利なのは時間がある奴だ。そう、無職とか自宅警備員とか何もしてないけど家はある人とか。



「くっそ……俺も学生だからまだ時間はある方だけど、本家無職様、もとい高等遊民の方々にはどう足掻いても勝てねえ……」



 そもそも本気で一番最初に魔王を倒す気なのか?

 額から考えてもプロのゲーマーはこぞって動くし、年がら年中ゲームばかりのすねかじり共も本気を出すだろう。


 話題性からなんとなく始めてみた隠れた逸材も出てくるかもしれない。


 砂漠に落としたコンタクトをすくい取るような、そんな絶望感が、考えるほどに押し寄せてくる。



「はぁ……夜食でも持ってくるか」



 カップ麺をすすりながら時計の針を眺めると、随分とその歩幅が小さく感じた。一定の筈なのに、人間とは不思議なものだ。


 一通り情報を集め、友人ともコンタクトをとり、どうやらフルダイブの都合上、他人とボイスチャットで繋がりながらのプレイはできないらしい。


 これから始めるゲームは元より日本初のフルダイブとして話題になっていたため、発売前にハードとなる「スクリーンコアZC」は購入済みの人が多いだろう。俺もなんとか抽選で購入できたが、今日を機にまた転売価格が凄まじいことになりそうだ。



「って、そろそろ時間じゃん」



 スクリーンコアはヘルメット型装置を頭に装着し、腕時計のような装置を腕に巻く。基本的な操作はヘルメット越しに映る立体空間スクリーンを指で触れるか、声帯操作、腕時計にある程度簡易な操作を設定できる。


 順当にダウンロードが始まる。しかし、莫大な容量によってダウンロードの進捗を示すバーは進まず、パーセンテージもコンマ一桁すら増えるのに数秒を要していた。



「……」



 最後の一口を啜り、俺は胡座をかいたまま横に倒れた。



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