98.初めての自主企画ツアーへ出発!
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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圧倒的美女の圧倒的煽りに煽られまくりつつ、プレゼンで作った旅程、訴求ポイント、試算を説明した。
学園祭で色々各地のガイドをパソコン用に作ったのが役に立ったなあ。
「ほお~…」美人のヤーティンさんがヘンな顔でプロジェクターの画像を見てる。
「ほお~」スーも見てる。
「ハオ、あんたも大学でこんなのいつも作ってるの?」
「んな訳ないじゃん。学祭で似たの作ったけど、スケジュールや試算なんてしてない」
「司ン…ウチ来ない?」
え?
「私日本の旅行代理店に居たけど、こういうユニークな企画を組める人いないよ?
殆ど既存の商品任せで、急な天候悪化とか交通規制に対応できないものなのよ。
逆にあんまりそれやり過ぎると足が出ちゃうしね。
一般層向けで費用が限られてればある程度仕方ないけど、それでも応用利かせられる事ってあるじゃない?」
「それは…そんな目に遭った事がないので何とも言えませんが」
「貴方のプランは相当余裕を持った時間割もしてある、これ大事。
相手があのヤカマシオババ…ん、失礼、時間に余裕がある富裕層の高齢女性、しかも親しい親類同士。
立ち話で盛り上がれば2~30分なんてザラに遅れるのよ」
やっぱそうなんだ。
だからバスをチャーターした旅をメインで組んで、万一の渋滞の時に備えて特急の移動を補助で考えた。
「ルート策定が一つだけじゃない。
高速がダメなら列車、荷物の積み下ろしも提携会社に協力頼んで積み下ろししてもらって宿へ。
これなら万一の場合でも旅にメリハリが出て楽しんでもらえるし。
司ン。貴方旅慣れてない?」
「え~、亘さんのお蔭です」
「いいなー、その亘サン!一度お会いしたいなー!」
「見た感じはパっとしない中年のオッサンだよ?」「そーなの?!」
ただの酒飲み中年ですけど。只者じゃないけど、その上妻4人持ちのスケベだし。
「でもその方はアンタッチャブルの方向で。
あのオババ軍団に知れたらタダ事じゃ済まなさそうね」
ヤーティンさん、鋭い。
海外の富裕層と下手に接触して問題が起きたら…
あの人今でも政府とかと繋がってそうだし、最悪戦争になりそう!
「でー!訴求ポイントとしては、旅慣れたお客様達に、歴史ドラマを追体験して頂く。
スーさんに聞いた話では、戦国悲劇が大好きで淀川ツアーも大坂歴史アンド買い物ツアーも何回かお楽しみ頂いている様子です。
丁度季節もお花見のシーズンですし、ちょっとローカル旅や城泊も交えたツアーはどうか、と思いました…ダメでしょうか?」
「いいえベリーです。
着眼点はナイス。後はあのオバサン達が求めるメロドラマストーリーに叶うかどうかね」
「メロドラマですか。そうなるとアジア人気の高い浅井三姉妹ツアー」
「それもうやったのよ」
「では秀吉浮気糾弾ツアー」
「それやって雰囲気最悪」
「前田利家ロリコンツアー」
「企画時点でNG」
色々やったんだー!事前に聞いてたけど。
「なので、日本史十大イベントの大阪の等乱追体験!
外堀を埋める、って感じで色々なお城を眺めて料理とお宿、そしてちょっとしたストーリーを楽しんで頂く程度に留めました」
「そうね。大坂城包囲網なんて発送、中々無いし近京坂をグルっと回るツアー自体珍しい。
ところどころ本筋からずれつつ楽しめる場所も入ってるし。
説明するお話も中々耳が肥えてるオバサマにも新鮮かも。
うん。ちょっとハオから聞いただけでここまで考えてくれるって、結構凄いわね」
エヘヘ、褒められた。
「バスと宿の試算、万一の現地フォローの手配は私の方で見直すわ。
後は司ンの説明とハオの翻訳ね。」
「「え"??」」
「司さんは日給2万円、バス同乗は雇用と保険の都合で禁止、一行とは訪問地で待ち合わせ。
交通費と宿泊費は会社払い」
「ガンバリます!!」
「すご!私は?!おいくら万円!!」
「ハオはオバサン達から小遣い出るでしょ、頑張れば」
「ミゼラービレ!!」
スー、グラちゃんっぽいぞ?
「ハオ、閩語で訳せなかったら英語でいいからね」
「あの~、閩語って何です?」
「ああ、福建語の事よ、私達は南岸の一族だから北京語ナンカじゃないのよ」
「それなら私も英語で何とか」
「助かるわー。あー見えてもアメリカにもガンガン売り込んでるオバサン達だし」
凄いなあ。でも北京語「ナンカ」って辺りに引っかかるものがあるな。
スーは台湾の生まれだから北京には抵抗があるって事かな?
あまりこの話題には踏み込まない方が良さそうだ。
「ワタシも移動と宿は司ンと一緒でいいよね?雅姉?」
「久しぶりに可愛がって貰いなさい」
「司ンと一緒ー!!!一緒じゃなきゃ嫌ー!!!」
今日ほど取り乱したスー見たの初めてだよ。
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その日、4姉妹に顛末をかいつまんで打ち込んだら。
「後ろで時様が凄く笑っています。あ、今ひっくり返りました」
だって。
今更ながら気が付いた。
凡その事はスーから聞いていたけど、あのキャリアウーマンバリバリのヤーティンさんすら恐れる徐氏オバサン軍団って、どんなんだろう。
スゴい人達なんだろなーっては思ってたけど、その10倍凄かったらどーしよ!
私初日で死んだりしないよね?
「私達、司さんのバックアップのためについてっていいかしら?」
「え~!そんなの悪いよ!って毎度このパターンじゃない!
そんなバックアップって酷い事起きないと思うよ?」
「『い~や確実に起きるゾ~はっはっはー!』」
電話口の向こうの方から時サンの妙ちくりんな笑い声が聞こえる。
もしかしてスーの親類オバサン軍団の事知ってるのかな?
「ついてくるのはいいけど、宿は旅行会社指定の所だから、空きがあるかわからないよ?
桜の開花まであとちょっとだし」
「またご一緒出来ますね?」「つかさーん!いっしょにご飯だべよーね!」「エストイ・デセアンド(楽しみ)!」「死ぬなー」
みんなお延さんの携帯に寄って来てるんだろうなあ。
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いよいよ桜前線が迫ってきたその日、私はリニアで名古屋へ!
自分で初めて企画立案したツアーへ、お客様を案内するために!
スーと一緒に。
「一緒でよがっだよ~!」
クールなスーだった物が肩にしがみ付いて泣いていた。