83.お宿は猿ヶ京温泉
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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「天守、立派だったネー」「ネー」
いつの間にかイケメンな真田ファミリーのイラストグッズを抱えたオタ組がホクホク顔ではしゃいでいた。
バスは更に利根川を北へ、途中で川を渡る。
「右手をご覧くださぁ~い」「ノリノリだな司ン」二度目だぜ!
「ここが名胡桃城、沼田城以前に真田氏がこの地を守り、或る時は奪われた戦いの舞台となった城です」
「なんにも無いよ~」
「ここは中世の城だったので、沼田城の様な立派な天守や石垣などはありませんでした。
土塁と堀、そして柵と物見櫓に囲まれた板葺き屋根の館があり、その土塁と堀の縄張の巧みさで敵を防いでいたのです」
「逆に生生しいネ」とミキ。
「それも日本の強さなのカ~?」とラン。
国道17号線は湖に差し掛かる。ダム湖、赤谷湖。猿ヶ京温泉だ。
バスは立派なホテルの前に止まった。
「オンセン宿~?!」
「ゴーカねー!」
「何と贅沢な…」
「あー、ここは割りとリーズナブルだけど湖を見下ろす景色は抜群、露天大浴場もあるよ。
キャンプ続きだったから今日はゆっくり休んでねー」
「キャー時サマステキー!惚れルー!」「抱いテー」「私も富豪の妾に…」こら飴ズ!
「「ダメー!!」」「やめんか!」「元気だなあ」「うふふふ」
本館から離れた大浴場、内湯と露天が続きになってる。
ちと寒いけど露天へ。眼下に広がるダム湖。
「ふぃ~、スバラシーね!!」「時サマサマだヨー」「山の方、雪景色綺麗だなあ」
湯煙、温泉、冬景色。
そして夕食は昨日までのバーベキューと打って変わって、お部屋でのんびり湯葉料理と鍋物。
「これ…何?」
「豆乳を温めて、表面に固まった膜を掬い上げてそのままにしたり乾かしたりしたものを重ねた、湯葉だよ」
「変わった食べ物ネー」「日本のフード、ユニークダネ」感心するランとミキ。
「これは中国にもある」とスー。
「そうなんだ!」
「台湾にもあるよ。ダーポェーって揚げたりするんだよ」
「へ~。元々中国のものかもね、湯葉って」
「そう。最澄が中国から持ち帰った精進料理なんだよ」
「やっぱり!」
「でも、この生の湯葉は無いね。
ホント日本は食を魔改造するねえ。オイシイし!」
食べながら、スーが笑った。カワイイ。
食の魔改造は、日本の極意というか習性なのだ!
「お次サン!スケッチ見せてー!」「いーよー、恥ずかしいけど」
「グラちゃんも…おー!オリエンタルーな感じ!」
「うん。軒の反りが中国風だね。日本のは大人しいけど…これはヨーロピアンには響く絵かも」
「ワタシ子供の頃見てた絵がこんなんデシタ。
ハポンに行く時、こ~んなパラッツィオ見られるってドキドキしまシタ!」
「グラシアさん、中国来た事は?」
「時様と紫禁城行きまシタ!日本と違うルホーソ(豪華)なパラッツィオ!」
「そうなんだ。あの強い軒反り、どんな絵になるんだろ…」
スー、造詣深いな。
「いーなー。私絵下手だから次姉やグラ姉みたく描けないしー」
お玉ちゃん、絵は苦手なのね。歌は凄く上手かったのに。
「実はお延姉も絵が上手だよ?子供に色々教える時カワイイ絵を描くんだぞ」
「「「見たーい!!!」」」「でもあっちで時サンとラブラブ空間作ってんぞ」
時サンとお延さん、大人な飲みタイムだ。
「これは…」「立ち入れない雰囲気だな」
「さっきの沼田城、もっと描きたかったネ!でもサムイのキライデス!」
「雪景色綺麗なのにネー」
「天守の前にカマクラ作ってコタツで描きたいネー!」
「駄目だ!そんなの作ったら抜け出せる自信が無い!」
「「あははは!!」」
「みんなすっかり仲良しさんですね」
「随分グローバルな美女パーティーだよ、がんばった甲斐あった!」
「時様、助平ですよ?」
時サンは、お延さんと…えーと、「水芭蕉」「谷川岳」の小瓶を利き酒してた。
私もご相伴に預かろう!
「どうぞどうぞ」
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食事、というか宴会も一息ついて、もう一風呂…って飴ズ全員ついて来た!
グラ玉もだ!
カポーン。
「みんないい人ネ。とっても楽しいヨ」
「マラビョーソ(素敵)!時様喜ぶヨ!」
「司ンのお友達だから楽しんでもらおうって張り切って準備したんだよねー」
「え…もしかしてあのバス、今回の為に買ったの?」
「ランドマスターは前から時様の愛車ダヨ?」
「何その凄い名前…でも安心したよ~」
「あれで日本中走り回った事あったよねー」
「今のハポン、北も南もヴァリオディア(数日)!ラクチンネー!」
「にしても、スゴいなあ…」
「何見てんのスー」
「いや。あれ芸術でしょ」
確かにグラちゃんは女神像みたいな美の結晶だ。
今は髪をアップしてるけど、これで金髪が風になびいた日には、ルネッサンスだ。何だそれ。
「お玉ちゃんもカワイイ系だけど、スゴイ美少女だぞ?それにナイスバディだし」
「うん。二人に挟まれると極楽だよ」
「で、さらにお延さんとお次さん。あの亘さんって何者だ?」
流石に本当の事は言えない。
「気まぐれな金持ち様だよ」
「いやいや、ホイホイとあのバスコン繰り出したり、こんな旅行計画立てたり、気遣いも凄いぞ、こんなストレスフリーな旅、生まれて初めてだ。
それに司ンの解説、全部聞いてチェックしてる。知識量も相当だろう」
「そりゃ、我が師だし」
「どっかの国の大臣かと思うよ。日本や中国、東南アジアじゃないだろうけど」
「なんで日本以下駄目出し?」
「どこも汚職塗れだ、日本は国民の力が図抜けてるけど政治家はイマイチだ。
それでも中国や東南アジアよかマシだけどな。でも台湾には及ばない」
スー、毒舌冴え渡ってんなあ。
「客観的だね」
「で、亘さんは…謎の人って事でいいのかな?」
何か悟った?でも、そうとしか言いようがないよね。
「それでお願いします」
スーは、何とも言い難い顔で笑った。
「ワタシだったら、6人目になりたいネー」
ちょっとスーらしからぬイントネーションで言った。
…いや、飴ズも中々凄いぞ?本気でアタックすれば4姉妹の次に。
6人目?
「司ンも亘さんの愛人候補でしょ?」
「待てい」
「いや亘さん凄く司ン好きでしょ。4姉妹も司ン大好きだぞ?」
すかさずスーの頭を鷲掴み。
「いていていて止めて」「止めぬ」
「お!司ン怒りのナントカ拳!」
「流石学園祭世紀末覇王!」
「スーは既に死んでいるー!」「勝手に殺すな!」
美女軍団全裸漫才は続くのであった。
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※猿ヶ京温泉で赤谷湖を見下ろす宿、猿ヶ京ホテルには夫婦で、家族でお世話になりました。大浴場では民話のお話を聞けたり、録音が浴場に流れていたりします。
もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。




