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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第3章 王立フェブリア学院 ~ 2年生編 ~
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第37話 目指すもの

 1年生も無事に入学式を終え、春一のイベントが終わってから暫くした頃、巷ではとあるニュースで持ち切りだった。


「ケビン君、今話題の噂話って知ってる?」


「興味ないから知らないな」


「学院生が何人か行方不明になってるんだって」


「貴族だらけの学院生を狙うとは、無謀な奴もいたもんだな」


「それが行方不明になったのは、平民らしいよ? 貴族の生徒には被害が出てないんだって」


「だから噂話で終わってんのか」


「え、何で?」


「貴族が被害にあったなら親共が黙っちゃいないだろう。学院も必死になって探すさ。ところが平民だとそこまで影響力がないから、のらりくらり対応しているんだろうさ。だから生徒は噂話として、大した危機感もなく話題に出来るんだよ。特に被害にあっていない貴族連中はな」


「それって酷いね。平民だから全力で対応しないなんて。なんかこの学院に愛想が尽きそうだよ」


「学院長が全力の指示を出しても、末端の一介の教師にまでは伝わらない。それが貴族となると、益々その傾向が強くなる。そういった背景があるんだろ。いい貴族もいれば、悪い貴族もいる。そこら辺の人間と一緒だ」


 そこでジュディさんが教室へ入って来た。いつもの明るいテンションじゃないな。


「みんな席に座って下さい。大事な話をします」


 醸し出す雰囲気に、生徒達は静かに席へと戻るのだった。


「皆さんはもうご存知かも知れませんが、最近、我が学院の生徒が行方不明になっています。行方不明になっているのは、初等部の低学年層です。そして調査の結果、行方がわからなくなったのは、どうやら学院外へ出た時みたいです」


 学院の外での犯行か。学院に侵入するよりリスクは低いな。理由は何だ? ただの人攫いとは思えないが。


「そこで学院からの決定事項としまして、学院外への外出を全面禁止とします。学院内であれば、安全である事が確認されていますので、敷地外に出なければ自由にしていて構いません」


 寮生活が滞りなく出来るように、基本的な物は学院内で揃うしな。不便に感じる者は少ないだろう。


「先生、質問があります」


「何? カトレアさん」


「ケビン君も寮生活になるんですか?」


「え……それは……」


 ジュディさんが、助けを求めるような視線を飛ばしてきた。まぁ、そっちが勝手に決めれる事じゃないよな。


「寮生活なんてするわけないだろ。面倒くさい」


「でも、学院の決定なんでしょ? 敷地外に出られないのは」


「俺は除外だ。貴族だしな」


「それなら、他の貴族も出ていいと思うんだけど」


 くっ、変なところで頭が回るな。


「現段階で貴族が狙われていないだけで、必ずしも安全である事が、保障されていないからだろ」


「それならケビン君も出られないよね?」


「さっきも言ったが、俺は除外されているんだよ。基本的に学院の規則からはな」


「つまり?」


「俺は自由! お前らは不自由!」


「ズルいよー! 私も自由がいい!」


 その言葉に、クラスメイトもウンウンと頷いている。


「なら、筆記試験で全科目満点を取ってみろ。あと、Aランク冒険者を無傷で倒せ。そしたら、お前らの自由は保障される」


 その内容に殆どの生徒は項垂れていた。現状、無理なのだ。出来ていたらFクラスではなく、Sクラスに入学しているからな。


「もしかして、ケビン君……」


「どっちも達成しているぞ。入学前にな。だから学院長が認めて、俺は自由なんだ」


「Aランク冒険者の方は、無傷とはいかなくとも、もしかしたら作戦次第で何とかなるかもしれないけど、筆記試験はどう足掻いても無理だよ」


「じゃあ、諦めろ。筆記が絡む時点で、お前にはそもそも無理だ」


「確かにそうだね。それよりも、何でSクラスじゃないの?」


「俺はダラダラ過ごすのが好きなんだ。当然、断った」


「断れるものなの?」


「出来るぞ。なぁ? ジュディさん」


 いきなり話の矛先が自分に向き、ジュディは慌てて返答する。


「え、えっと、確かに学院長からのSクラス推薦を断ってます」


 その言葉にザワっと生徒たちが反応する。


「な、なぁ、ケビン君……君は学院長からの推薦を断ったのかい?」


 名も知らぬ生徒から、ケビンに質問が飛ぶ。


「断ったぞ。Sクラスなんて面倒なことこの上ないだろ」


「あ、ありえない……Sクラス……しかも、学院長からの推薦を断るなんて」


「お前は名誉目的で学院に来てるのか?」


「えっ?」


「だって、そうだろう? 学びたい事を学ぶだけなら、クラスなんて関係ない。クラスに拘っている時点で、お前は学院に学びに来ているのではなくて、つまらないプライドと名誉が目的になっている。そんな奴に、俺の生き方を否定される言われはない」


「うわぁ、ケビン君ズバッと言うねぇ。確かにそうだけど」


「それは違う! Sクラスを目指して、日々研鑽を積むのも立派な事だ。名誉目的ではない!」


「そんな考えだから、お前はFクラスなんだよ。何も理解していないな」


「何だとっ!」


 名も知らぬ生徒は、顔を赤く染めて怒りを顕にした。


「何故Sクラスを目指す必要がある? ジュディさん、この学院はクラスによって差別化し、授業内容が変わるの?」


「それはありえません。全クラス授業内容は統一です」


「だ、そうだ。それなのにお前はSクラスを目指すと言う。つまりSクラスに拘っているという事だ。Sクラスの生徒であるという名誉が欲しいのだろう? Sクラスなんてものは、目指すものじゃない。お前の言ってた日々の研鑽を積み重ねていれば、おまけとして付いてくるものだ。あくまでおまけとしてな。つまらない名誉欲なんて捨てるんだな」


 名も知らぬ生徒は、反論ができずガックリと肩を落とした。


「ケビン君、なんか今日はカッコイイね。あの子は論破されて、ざまぁだけど」


「これは本来、ジュディさんの仕事ですよ。今回はこっちに矛先が向いたから教えてあげたけど」


「うぅ……面目ないです。ケビン君の言う通りです。」


 名も知らぬ生徒と同様に、ガックリと肩を落とすジュディであった。


「先生相手でも容赦ないね……さすがにざまぁは出来ないけど」


「ということで話は逸れたが、俺は敷地外に出られるわけだ」


「ズルいけど、それなら仕方ないね」


 ガックリと項垂れている2人を他所に、カトレアはケビンの言った内容に納得するのであった。


 話が纏まった(?)ところで、落ち込みから復帰したジュディさんから、再び話が再開される。


「皆さん、先程ケビン君が言った通り、Sクラスはクラス自体を目指すものじゃありません。日々の研鑽を積み重ねていって頑張っていれば、おまけでSクラスになれる程度に考えておいて下さい。毎日の努力こそが皆さんに確かな自信を付けてくれます」


 ジュディさんが話している中、最初の話題でふと気になった事を尋ねてみる。


「なんかいい感じに、纏めに入っているところで悪いんですけど、敷地外への外出禁止令は、初等部の低学年層のみですか?」


「いえ、高等部までですね。学院部の生徒は成人した大人として見られているので、特に規制は掛けていません。自己責任といったところです。個人の能力も高いですし」


「ということは、ケビン君は、学院部の生徒並みに能力があるんですか?」


「お前は話の腰を折るのが好きだな。全然、先に進まないじゃないか。そんな事はどうでもいいだろ」


「だって、どのくらい鍛えたら自由になれるかの目標になるじゃん」


「だから、お前は筆記で引っかかるから諦めろよ」


「まぁまぁ、そう言わずに。日々の研鑽が大事なんでしょ?」


「ケビン君、話しても大丈夫ですか?」


 一応の了解を取りたいのか、ジュディがケビンに尋ねてくる。


「ある程度なら構いませんよ。代表戦では、実力を隠していたのがバレていますし」


「では、皆さんも気になっているケビン君の強さについてですが、予想でしかないのですが、少なく見てもAランク冒険者以上です。Aランク冒険者もピンキリなので実際の実力は分かりませんが」


 その回答にクラス中が騒ぎ出す。今までダラダラと過ごしている姿しか見ていなかったので、そこまで強いとは思わなかったのだろう。


 代表戦の時もEクラスの生徒が相手だったからか、判断材料としては足りなかったが、先生からの回答でケビンの強さに信憑性が増した。


「ケビン君って本当に強かったんだね。Aランク冒険者の件は盛ってたのかと思ってたのに」


「どうでもいいだろ」


「それでは、質問がなければ授業に移りたいと思います」


 それから、いつも通りの授業が始まり一日が終わるのだった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 暗がりのとある場所で……


「学院が敷地外への外出禁止令を出した」


 それなりに身なりのいい服装をした者が報告を上げる。


「どうにか出来ないのか? 計画に支障が出るぞ」


 その報告に対して、尋ねた男も如何にも身なりのいい服装だった。


「今まで通りには、攫うことが出来ないかもしれないが、他にも方法はある」


「どうするんだ?」


「王都内に住む生徒に対して、こっそりと外出許可を出す。自宅に帰るだけなら特例として認めるとな」


「それだとほとんど貴族にならないか? ことを大きくする訳にはいかない。秘密裏に動いているんだぞ?」


「貴族を狙うのは後からだ。先ずは平民だ」


 そこで新たに発言する者がいた。身なりは普通だが、堂々とした出立ちだった。


「もうどっちでもいいだろ。攫っちまえばこっちのもんだ」


 次に発言した者はどこか見窄らしい様子の男だった。


「そういう訳にはいかないだろ。バレたら計画が台無しになってしまう」


「この際、学院に侵入して攫っちまえばいいのさ。ちまちましているのは性にあわないんだよ。一気に攫ってさっさとこの国とは、おさらばすればいいのさ」


「学院への侵入は最後の手段だ。今はまだ表立って動くわけにはいかない」


「ちっ! 面白くねーな」


 それなりの身なりをした者に、見窄らしい男が悪態をつく。


「とりあえずは当初の計画通り、敷地外に出てきた初等部の低学年層を狙うとしよう。ステータスが低い分攫いやすいだろう」


「了解した。お前もそれでいいな」


「わかってるよ。こんなつまらねぇ仕事、引き受けるんじゃなかったぜ」


「状況が変わり次第、また連絡する。今日はこれで解散だ」


 如何にも身なりのいい服装をした者の発言が終わると、集まっていた者たちはそれぞれ去っていくのだった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 学院の帰り道……


『マスター、人攫い共はどうするんですか?』


『どうもしないよ。俺に被害がある訳でもないし』


『確かにそうですね。ボッチのマスターには助ける友達もいませんしね』


『おい、友達はいるぞ』


『カトレア以外でですか?』


 ぐっ! カトレアと言おうとしたのに、先制攻撃を仕掛けてくるとは。


『ターニャさんだ』


『シーラさん繋がりですね。無駄な抵抗を』


『それにクリスも、一応は友達の範囲だ』


『基本的に年上ばかりですね。年上キラーなんですか?』


『変なこと言うな。称号に付いたらどうするんだ』


『別にいいじゃないですか。事実なんですから』


『称号欄に不名誉なのが、増えて困るのは俺だぞ』


『それよりもマスター、つけられてますよ?』


『知ってるよ。例の人攫いだろ。雑魚なんだから放っておけ』


『まぁ、あとは家に帰るだけですからね』


 最近はステータスのバランスを取るため、馬車は使わず走って通っている。敏捷が結構あるので、馬車よりも早く着くのだ。


 走って通うなんて面倒くさいと思っていたが、ステータスが上がり始めると、少し楽しくなって三日坊主にならなくて済んだ。


 ということで今日も走るのだが、つけている奴に見られるのは癪だから、ぼちぼち【生命隠蔽】を使おうと思う。普通に門からも出してもらえないしな。


 前に外出しようとしたら、危険だからという理由で通して貰えなかったのだ。それからは、門に差しかかる前にスキルを使うようにしている。


『さて、ぼちぼち門に到着するな』


『そうですね』


『そこら辺の店に入ってスキルを使うか。無駄に待ちぼうけをくらうから、隠れている奴はざまぁだな』


 適当な店に入りスキルを使うと、そのまま外に戻る。案の定、つけていた奴は、建物の陰からこちらの様子を窺っていた。


『とりあえず顔は覚えたし、気配も覚えたから問題ないだろ』


『そうですね。マヌケの気配は記録に残しておきますね』


『頼む。じゃあ、いつも通りに帰ろう』


 ケビンは門から堂々と、王都外へ出て走り出した。


『マスターがムキムキマッチョになる日も近いですね』


『ならねーよ。その前に楽する魔法を考える』


 その後も、帰りつくまではサナとの会話を楽しみながら、走っていたのであった。


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