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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~
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第35話 日常

 闘技大会も無事に終わり、学院もいつもと変わらぬ日常へと戻っていった。ケビンも相変わらずダラダラと過ごし、変わらぬ日常を満喫しようとしていたのだが、変わった事が1つだけあった。


「それでは、午前の授業はここまでです」


 チャイムがなるとジュディさんから終了の言葉が出る。この言葉と同時にケビンは隠蔽系スキルをフル稼働させた。


 その瞬間、クラスの誰からも認識されず安全を確保したかに思えたが、いつもの如く徒労に終わるのだった。


(ガラッ)


 教室のドアを開け放ち現れたのは、何を隠そうケビンの姉であるシーラだった。その後方には、ターニャもいた。


「ケビン、お昼ご飯を食べるわよ」


 そう言い放ち教室内に入って来るが、当の本人は逃げるために、コソコソと背を低くして見つからないように移動を開始していた。


「シーラ、ケビン君は居ないようですわよ」


「いや、いるわ! お姉ちゃんセンサーがビンビンに感じているもの」


「何ですのそれは? ケビン君が絡むとなると、貴女の威厳も無きに等しいですわね」


「そんなもの、そこら辺のモンスターにでも食わせておけばいいのよ」


 そう言って教室を見渡すシーラに対して、是が非でも見つかりたくないケビンは、息を潜ませつつ移動を進めるのだった。


 あと少しでドアに差し掛かろうとした瞬間、謎のお姉ちゃんセンサーにキャッチされてしまう。


「いたわっ! ケビン、お昼に行くわよ」


 何故だ!? 何故いつも発見されてしまう? 隠蔽系スキルは確かに機能しているはずだ。現にターニャさんには効いていた。


「や、やあ、姉さん。今日も来たの?」


 見つかってしまえば、大して意味のないスキルは解除して、シーラに受け答えする。いきなりドア近くに現れたケビンに、周りは吃驚するのだが、今は構っている暇はない。


「あら、ケビン君はそんな所にいましたの? 気づきませんでしたわ」


「その反応が正常なんですよ、ターニャさん。隠蔽系スキル全開なのに見つけられる方がおかしいんです」


「貴方も大変ですのね」


「お互い苦労しますね」


 1人の人間に振り回されるという境遇を共感し、仲間意識が自然と芽生えるのであった。


「何2人でわかりあってるのよ。ほら、行くわよ」


「ちなみに拒否権は?」


「え? ケビンはお姉ちゃんと一緒にいたくないの?」


 今にも泣きだしそうな顔である。だが、心を鬼にして言うしかない。


「偶には一人になりたい事だってあるし。ゆっくり過ごしたいから」


「う……」


「う?」


「うわーん。ケビンに嫌われたぁ」


 ターニャに抱きつき泣き始めるシーラに、その光景を見てたじろぐケビン。周りからはヒソヒソと話し声まで聞こえてくる。


(おい、あの氷帝が泣いているぞ)


(完全無敗の女帝が負けた……だと!?)


(氷帝を泣かすなんて、ケビン君は何者なの?)


「はぁ、仕方ないですわね。とりあえずケビン君、お昼に行きますわよ」


「あ、はい。ターニャさん」


(何者なんだ!? あの氷帝を負かしたケビン君を従えているぞ)


(彼女が真の支配者なのか!?)


(お姉さま……ぽっ)


 若干1名変なのが混じっていたが、その場に留まっていては、何を言われ続けるかわかったものではないので、ターニャの提案に素直に従ったのだが、裏目に出たようだ。


 1人ぐずる姉を引き連れて、ケビンたちは教室を後にする。


「ぐすっ……」


「いい加減泣きやみなさいな。ケビン君が困っているでしょう」


「だって、ケビンが拒否するって……」


「仕方ないですわね。ケビン君、手を繋いで下さるかしら」


 そう言われたので、ターニャさんの手を握る。


「いや、私じゃないですわ」


 ん? 違ったのか? ターニャさんの顔を見上げてみるが違うらしい。


(なんていう破壊力なのかしら。首を傾げてそんな無垢な目で見られてはたまりませんわ。シーラが没頭するのも頷けますわね)


「ま、まぁ、この手はそのままでいいですわ。反対の手でシーラの手を握って下さる?」


 そういう事か……反対の手で今度は姉さんの手を握る。すると、ピクっと反応したので、声をかけてみる。


「姉さん、もう泣き止んだ?」


 ケビンの問いに、満面の笑みでシーラが答える。


「ケビンの愛で私復活!!」


(いや、愛はないけど……)


「本当に手のかかる人ですわね。それじゃあ、お昼に行きますわよ」


「ねぇ……ターニャはどうしてケビンと手を繋いでいるの?」


「た、たまたまですわ」


「俺から繋いだんだよ。姉さんだって繋いでいるだろ。仲間外れは良くない」


「ケビンが言うなら仕方ないわね」


(ふぅ、何とか誤魔化せましたわ。まさか、ケビン君の上目遣いにキュンとしたなんて、口が裂けても言えませんわね)


 それから、3人はカフェテリアへと向かうのだった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 3人が立ち去ったあとの通路では……


(今日もケビン君とお話ができなかった……)


 柱の陰から1人の女性が様子を窺いながら、三人のやり取りを見ていた。何を隠そうクリス本人である。


 傍から見たら、ただの変質者と疑われる勢いだが、学院の制服を着ているおかげで、変な人がいるなぁぐらいにしか思われていなかった。


 氷帝がいつも会いに来ているので、中々ケビンに声が掛けられないでいた。ケビン自体は既にクリスが来ているのは、気配察知で理解していたが、面倒なので気づかないふりを続けていた。


 そんなことも露知らず、ここのところは毎日通っているが、柱の陰から見守る程度で終わっていた。


 本人にとっては至って真面目なのだが、周りにいるのは初等部の1年である。


 後に《柱女(はしらおんな)》と不名誉な渾名が、ついたとかつかなかったとか。この時のクリスはまだ知らない……


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