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面倒くさがり屋の異世界転生  作者: 自由人
第2章 王立フェブリア学院 ~ 1年生編 ~
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第22話 公開処刑?

 母さんと今日あったことを話していたら、来訪者が来たことをマイケルさんが知らせに来た。


(コンコン)


「奥様、お客様がお見えです。如何いたしましょう?」


「応接室に通しておいて」


「かしこまりました」


 それを聞いた俺は、母さんの膝上から降りる。


「今日はお客様が来る約束があったの?」


「違うわ。大方、学院の関係者が謝罪に来たのでしょう。ケビンへした事に対しての報復を恐れて」


「母さんは学院に報復するの?」


「学院が謝罪に来なかったら、そうなってたかもしれないわね。ケビンを危険に晒したのだから当然でしょ?」


 特段、俺としては危険になったつもりはないんだけど、言わない方がいいかな。母さん怒ると怖いし。


「今から、対談しに行くの?」


「そうね、ケビンも当事者だから一緒にいらっしゃい。面白いものが見れるかもしれないわ」


 面白いものかぁ、何か嫌な予感しかしないんだけど。それから俺は、母さんについて行き応接室へと向かった。


 応接室へ向かうとドアの前にはマイケルが立っていた。


「中でお待ちになっておいでです」


「開けてちょうだい」


 すかさずマイケルがドアを開けると、中には試験官とブロンドの若々しい感じの見た目で、見たことのない人が立っていた。誰だろう?


 そのまま対面まで移動すると、母さんは慣れた感じで話しかける。


「こんな時刻にアポもなしにやって来たのは誰かしら?」


「約束のない訪問となり大変不躾とは思いますが、事の重大性につき急ぎ参らせて頂きました」


 ブロンドの人がそのように答えているが、試験官が黙っているという事は上司だろうか?


「私は『誰かしら?』と聞いたと思うのだけれど、貴女には通じないのかしら?」


 その瞬間、母さんお得意の威圧が放たれた。俺は慣れたもんだけど、お客さんはそうじゃないらしい。


 顔は俯き手は強く握りしめられ、膝がガタガタと震えているのが見て取れた。まるで産まれたての子鹿のようだ。これを見るといつも相手に同情してしまう。


「た、大変失礼しました! 私は、フェブリア学院の学院長をやらせて頂いております、アナスタシア・フェガロットです」


 学院長かよ! なんでそんなお偉いさんがうちに来てるんだよ。てっきり主任試験官みたいな人かと思ってた。


「そちらの方は?」


 そう言って母さんは、もう一人の方へと視線を移した。


「わ、わ、私は本日の試験を担当しました、ジュ、ジュディでしゅ!」


 あっ、噛んだ……恐怖なのか恥ずかしさなのか分からないが、プルプル震えている……


 試験官はジュディさんっていうのか。初めて知ったな。


「取り敢えず、あなた方が誰なのか分かったわ。座ってちょうだい」


 威圧を解いて母さんがソファに座ったので、俺も隣に座った。それにつられビクビクしながら二人も座る。


(コンコン)


「失礼します」


 見計らったかのようにマイケルさんがお茶を持ってきた。相変わらず出来る人だ。


 お茶を優雅に注いだマイケルが退室するのを確認して、お茶を1口飲んだ母さんが再度喋りかける。


「今日はどういった用件で学院の方が態々いらしたのかしら?」


 母さんわかってて言ってるよね。さっき話もしたし試験の事しかないじゃん。


「本日、学院の不手際で試験中に事故がありまして、そのご報告とお詫びに参らさせて頂きました」


「あら? 世間はいつから故意にやる事を、“事故”と表現するようになったのかしら?」


 またもや母さんの威圧が少しだけ炸裂する。母さん、なんか楽しんでない?


「ひっ!」


 ほら、ジュディさんガクブル状態じゃん。せっかくさっき落ち着いたのに。それに比べ学院長は大したもんだな。ギリギリで耐えてる。僅かに震えてはいるけど。


「も、申し訳ありません! 故意にやったのは実技試験を担当した者でして、学院としては故意のつもりは全くございません」


「そうやって言い逃れするのね。悪いのは担当官で学院は無関係だと。こういうの何て言うのかしら? トカゲの尻尾切りかしら?」


 うわぁ……追い詰めるねぇ、まもなく袋小路じゃん。これ、何て返すんだろ?


「そういうつもりは毛頭ございません。その担当官を雇ったのは学院であり、私の責任であります」


「そう、あなたが責任を取るのね。どう取るのかしら?」


 返しづらい言い方するなぁ。妥協点を提示してくれた方が、まだ助かるのに。


「そ、それは……」


 やっぱり返答に困るよねぇ……


「あらあら、責任を取るというのはどうやら()()()みたいね。口だけで責任を取るなら、私はその口を2度と使えない様にすればいいわけね」


 二重の意味で詰ってるね。『上手い、座布団一枚!』って、思ってる場合じゃないよな。


 そう言った母さんが殺気を放った。うん、ちょっとやり過ぎかな。そろそろ止めようかな。


 そんな感じで思っていると、少し何かが臭った。


『ん? 尿臭?』


 二人ともガクガクしながら、視線を向けると股間のあたりが濡れてるような気がした。遅かったか……


 大人の女性が失禁するなんて初めて見たな。いや、失禁する女性自体、見るのが初めてなんだが。


「粗相しちゃったみたいね。これじゃ話を続けられないわ」


 二人とも放心している様で、声に反応できていない。母さんの殺気に当てられたんだから仕方ないんだけど。このままにしておけないしな。


「マイケルさん、居る?」


「ここに」


 忍者かよ! いつの間に背後に控えていたんだ!? 何となく来るかなぁって呼んでみたんだけど凄すぎる!


「お客さんが粗相をしたみたいだから、浴室に連れて行って湯殿を使わせて。あと、着替えを用意してあげて」


「畏まりました。カレン、お客様を浴室へ連れていきますよ」


「わかりました。さぁ、こちらへ」


 待って!? カレンさん何処から来たの? ドアまだ開いてないよね? カレンさんはくノ一なの!? そのまま何事もなかったように、普通にドアから出ていくし。


 そんな感じで驚いていると、母さんが喋りかけてきた。


「ケビン、面白かったでしょ? プルプルしてて、子鹿のようだったわ」


「母さんも人が悪いよ。本気じゃなかったのでしょう?」


「そうね。謝罪に来ているのだしその時点で許してるわ。それにしても、粗相したのは予想外だったわ。大人だから大丈夫だと思ったんだけど」


「悪いと思ったなら、ちゃんと後で謝っといてね」


「ケビンがそう言うならそうするわ」


「是非、そうしてね。学院には、兄さんたちや姉さんが通ってるから。寮住まいしているせいで、まだ1度も王都に来て会ってないけど」


「そうね。そういえばあの子たちはまだ学生だったわね」


 忘れてたんかい! まぁ、久しく会ってないから仕方ないんだろうけど。


「それじゃ、リビングに戻りましょうか?」


「そうだね。ここに居ても仕方ないしね」


 二人で応接室を後にし、リビングへ向かうのだった。


 それからリビングで寛いでいると、お客さんたちがお風呂から上がったとの報告があった。


 応接室はとある理由により使えなくなっていたので、仕方なくリビングへ連れて来るように母さんが指示する。


(コンコン)


「お客様をお連れしました」


「入っていいわよ」


 どこかよそよそしい感じで、二人がリビングへと入ってくる。


「お風呂はいい湯加減だったかしら?」


「はい、湯殿をお貸し頂きありがとうございます」


「別に構わないわ。さっきの事はケビンに咎められてしまいましたもの。ごめんなさいね。あんな事になるなんて思わなかったの」


「いえ、滅相もございません。悪いのは学院長である私の監督不行届ですから」


「それに関してはもういいわ。ケビンが自分でケリをつけているのですし。担当官の方はどうなったのかしら?」


「それについては、こちらのジュディが救護室に運んだため、重症ではありますが、一命を取り留めております」


「そう……生きてるのね……」


 その言葉に二人はビクッと反応して、冷や汗を流した。


「大丈夫よ。さっきも言った通り、もういいの。生きてようが死んでようが」


「その、少しご子息様にご確認したい事があるのですが、宜しいでしょうか?」


 その問いに、母さんが俺の方へ顔を向ける。


「ケビン、どうするの?」


「別に構いませんよ。事実確認をしたいだけでしょうし」


「あなたがそう言うならいいわ。まずは、座ってちょうだい」


 その言葉に二人はソファへと腰を下ろす。


「で、何を聞きたいのかしら?」


 サラの言葉に、学院長は意を決した様に話し始めた。


「試験の最中に不測の事態が起きないように、今回はAランク冒険者を雇っていました。ジュディが発見した時には凄惨な現場であり、なおかつその冒険者は瀕死の状態でした。試験中にその場に居合わせた生徒の証言によると、一方的な闘いだったと」


 あぁ、誰か喋っちゃたんだね。口止めしてなかったし別にいいけど。


「その事がとても信じられなく、この機会に是非、事実確認をしておこうと思った次第です」


「それは、事実ですよ。有り体に言えば、その担当官にムカついたから、懲らしめただけです。最後は、背後から襲われたので、利き腕を斬り落としました」


 その言葉に学院長が返す。


「その、怪我とかはしなかったのですか? 相手は仮にもAランク冒険者だったのに」


「全くですね。服にあんな奴の血がつくのも嫌だったので、それすら避けてましたから」


「俄には信じ難いですが、事実なのでしょう。それと、もう1つ。その斬った切り口に火の魔法が使われたのでは? という証言もありまして、いきなり火の手が上がったと。これについての説明は頂けるでしょうか?」


 そういえば、【無詠唱】で使っちゃったな。失敗したなぁ。まともに魔法訓練したわけじゃないから、詠唱とか知らないんだよなぁ。どうやって誤魔化そうかな?


 そんな事をケビンが考えていると、サラがケビンに尋ねた。


「ケビン、魔法使ったの?」


「帰ってきてから話したように、死んだら母さんに迷惑がかかると思って、つい使っちゃったんだよ。俺としては、殺してもよかったんだけど」


 Aランク冒険者に対して、軽く殺してもよかったなどと言う6歳児に対して、学院長と試験官は戦慄を覚えるのであった。


「そういえばそうね。母さんとしてもケビンに手を出したんだから、死んでもよかったんだけど、ケビンは母さんを護ろうとしたんだものね」


「それでは、その魔法はご子息様が放たれたものなのですか?」


「そうね。()()護る為に使ったみたいだから」


 その発言は言外に追求しないよう示唆していた。これが分からない二人ではないので、自分たちの命と天秤にかけてすぐさま追求をやめるのであった。


「今日はいきなりの訪問であったにもかからず、対応して頂きありがとうございました。今回の試験は、トラブルもあったので武術試験をやり直す形になるのですが、ご子息様は再試験を受けられるでしょうか?」


「どうするの?ケビン」


「俺としては不合格でも構わないのですけど。大して学院に興味があるわけでもないし、社会勉強のつもりで受験しただけですから。そちらのジュディさんには、来年また頑張るようには言われましたが、来年は受けるつもりないですしね」


 いきなり引き合いに出されて、ビクッと反応するジュディ。自分の浅はかさで有能な子供に、さも落ちているように言ったのだ。


 それを、夫人の前で暴露されては、気が気じゃない。心臓を鷲掴みにされている気分だった。


「今回の一件を踏まえて再試験を受けることなく、無条件に合格とすることも出来ます。Aランク冒険者を倒してしまったのですから、試験結果としては充分すぎる程です。その上、筆記試験では、満点という結果が既に報告されていますので、私としましては是非とも入学していただきたいと思っています」


「だ、そうよ?」


「まぁ、筆記試験の方は簡単だったので、落ちているとは思ってませんでしたが、魔法試験の方はどうするんですか?」


「そちらも的を破壊したと報告が上がってますので、文句なしの合格となります。そもそも、武術か魔法か得意な方で点数を稼ぐという方式なので、どちらかの評価が良ければ必然と合格できるのです。人には得手不得手がありますから」


 こりゃあ、逃げ道ないなぁ。断ってもいいんだろうけど、合格してるって言われてるしなぁ。


「学院に通うのであれば寮生活になるのですか?兄や姉も寮生活をしていますし」


「原則、寮生活となります」


「じゃあ、不合格でいいです」


「特例で自宅通学を許可します」


 切り返しが早いな。そんなに入学させたいのかよ。


「母さん、学院に通うことになったら、こっちに引っ越す?」


「そうねぇ、領地の方が本宅なんだけど、こっちに住み続けたら本宅が空になってしまうから困りものよねぇ。別に母さんは構わないのだけれど、父さんの威厳とかにもかかってしまうから、どうしたものかしら?」


「そうだよねぇ。やっぱり面倒くさいし学院に行くのやめようか?」


「馬車での通学を許可します。なおかつ、始業に遅れても不問とします」


 社長出勤ありきかよ。入学させるのに必死だな。


「それなら、本宅から通えそうですね」


「そうね、本宅を空けたままにしないで済むのなら助かるわ」


「では、入学の際に首席入学となりますので、特別クラスへの配属となります」


「それなら、入学しません」


「何故!?」


 素が出たな……面白い顔して止まってるぞ。母さん、笑いこらえてるし。


「首席入学も特別クラスも嫌だからです。ちなみにクラス配分はどうなっていますか?」


 あっ、顔が元に戻った。帰ってきたようだ。


「その年の入学数によって変わるのですが。基本的には7クラスになります。毎年受験者数は千人を超えたりするのですが、実際に入学できるのは5分の1程度となっております。クラスは上からS、A、B、C、D、E、Fクラスとなっており、特別クラスはSとなります」


「では、入学はFクラスでお願いします。それ以外なら入学しません」


「どうして!?」


 この人いちいち反応が面白いな。この人の中じゃ俺はありえない事を言ってるんだろうな。


「まず、首席入学だと目立つし、貴族のしがらみが面倒くさい。入学してもいいけど、ダラダラと学生生活を楽しみたい。その為のFクラス入学なんですよ。喧嘩売ってくる相手を全員懲らしめていいなら、首席入学でいいですよ」


 まぁ、そんな事が許されるわけないから、こちらの条件を飲むしかないんだけどね。


「……分かりました。要望通りに致します」


 えっ!? その間は何? もしかして、そのくらいならいいやとか思っちゃったの? ダメだよ、学院長がそんな事考えちゃ。


「それでは、入学させていただきます」


 その後、学院長は空気と成り果てたジュディを連れて、学院に帰って行った。服については後日、学院に送ることを伝え、今着ている服は差し上げることになった。


「ケビンったら、策士ね。好条件を引き出すなんて」


「学院長の様子からして、何がなんでも入学して欲しそうだったから、上手く使えばこっちの条件を飲むしかないだろうと思って、色々と譲歩して貰ったんだよ」


「それにしても面白い顔だったわ。お母さん吹き出しそうになったわよ」


「そうだね。あんな顔するとは思わなかったよ」


「もう帰るには遅いから、明日の朝に帰りましょうか?」


「そうだね」


 それから別宅にて一晩過ごし、翌朝本宅へと帰った。来年からは、学院に通うことになったが、ダラダラと過ごして卒業しよう。極力目立たずにできればいいけど……


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