プロローグ
「ハァ……ハァ…...ハァ...…くそっ。なんでスライムがこんなに強いんだ」
俺は剣を握りしめ、荒い息遣いをしていた。
体は一部酸による攻撃を受けてただれていたり、切り傷を受け、傷口から血が滴っている。 ジンジンと体全体に痛みが走っている。
アドレナリンが出ているから、強い痛みは感じていないが、そのアドレナリンがなくなったら、きっと叫ぶほどの激痛が襲ってくることだろう。
目の前の魔物がどんな動きをしてくるかわからないため、一瞬の気も抜かず、剣を構えている。
俺の目の前には、高さ30センチほどの流線型のぷよぷよした、RPGが好きな人たちなら誰もが知っている、あの魔物が存在している。
スライムだ。
異世界に転生してから10年の時が過ぎた。
今は魔物を討伐する冒険者をしている。
生前に様々なRPGゲームをやってきたおかげで、魔物に対する知識は豊富で、もちろんスライムのような魔物も出会った時に驚きはしなかった。
しかし、この世界にいるスライムは俺の知っているそれとは全く異なる。
ゲームによく出てくるスライムは、プレイヤーが操作方法を覚えるため、チュートリアルのバトルの相手として最初に登場する、一番弱いモンスターのイメージだ。
そのため、気にも止めたことがない存在。
むしろ、かわいいシルエットからマスコットのような扱いを受け、グッズとして人気がある始末だ。
なのになぜ今目の前にいるスライムは、こうも強いのだ。
「やあああああ!」
俺は剣を振りかざし、スライムに向かって、真上から真っ二つになるように切りつける。
すると、スライムの体は剣の動きに沿ってカーブを描き、ぐにゃんと変形した。
そして、剣による上から下へかかる圧力の反動で、剣が上に押し上げられ、弾かれてしまう。
すると、スライムの体は元に楕円形に戻っていた。
真っ二つに割ることができないどころか、代表に傷すらつかない。
「なんで効かないんだ......」
他にもいろんな攻撃を試してみた。
蹴ったり、剣で突き刺したり、石を投げたり。
しかし、やつはすべての物理攻撃を無効化する。
「くそっ! じゃあ魔法だ!」
俺は手のひらを目の前に突き出し、氷の塊を発生させた。
それをスライムに向けて放ち、見事命中。
しかし、スライムはダメージを負っている様子がない。
「魔法も効かないのかよ! どうやって倒せばいいんだ!」
なすすべがないと絶望していると、スライムは口を開け、俺を飲み込むほどの大きさに膨れ上がり、覆い被さろうとしてきた。