新しい人生
……眩しい。
ぼんやりと目を開けると、二人の男女がこちらを覗き込んでいた。
「おぎゃあ!」
自分の口から聞こえたのは、赤ん坊の泣き声だった。
(……え?)
体を動かそうとしても、思うように動かない。
手も足も小さく、力が入らない。
(まさか……俺、赤ちゃんになってるのか?)
状況を理解するまでに、そう時間はかからなかった。
どうやら俺は、死んだあと、この世界で新しく生まれたらしい。
目の前で優しく微笑む男は、金色の髪をした端正な顔立ちだった。
まるでゲームや物語に出てくる騎士のような、いかにも異世界人という雰囲気だ。
その隣には、黒髪の女性が優しく俺を抱き上げていた。
二人とも嬉しそうな顔で俺を見つめている。
きっと、この人たちが俺の父さんと母さんなんだろう。
鏡を見る機会があったのは、それから少し経ってからだった。
映っていたのは、黒い髪に青い瞳を持つ赤ん坊。
どうやら俺は、この姿で新しい人生を歩んでいくらしい。
前世の記憶は、はっきり残っていた。
高校一年生。
小学生の頃にいじめを受け、不登校になり、そのまま家に引きこもるようになった。
毎日ゲームとアニメばかりの生活。
決して楽しい人生だったとは言えない。
だからこそ、俺は心の中で静かに決めた。
(今度の人生は、思い切り楽しもう。)
それから月日が流れた。
この世界は、俺がゲームやアニメで見てきたファンタジー世界によく似ていた。
石造りの家。
広い草原。
深い森。
馬車が道を走り、人々は剣を腰に下げて生活している。
「ここはゲームと同じだな。」
そう思うこともあれば、
「いや、ここは全然違う。」
と思うこともある。
そんな違いを見つけることすら、毎日が楽しかった。
父さんは優しく、母さんもいつも笑顔だった。
数年後には三歳年下の妹も生まれた。
小さな手で俺の服をつかみ、「お兄ちゃん」と呼んでくれる姿が可愛くて仕方なかった。
俺たちが暮らしているのは、山奥にある小さな村。
村人はみんな顔見知りで、親戚のように接してくれる。
誰かが困っていれば助け合い、収穫の季節になればみんなで祝い合う。
前世では知らなかった、温かい日常。
友達と笑い、家族と食卓を囲み、毎日を当たり前のように過ごす。
そんな普通の幸せが、俺には何よりも大切だった。
(この生活が、ずっと続けばいい。)
心からそう願っていた。
このときの俺は、まだ知らない。
この平和な日常が、ある日突然終わりを迎えることを。
そして、その運命の先に、俺が"スライムスレイヤー"と呼ばれる未来が待っていることを。




